バハマでのボランティア経験から       社会倫理高揚が課題   

光と影の狭間---観光の国にエイズの不安
                              1998.6.15バハマより

 小生は今、バハマから書いている。三年前までは、そんな国があることも、頭に
無かった。バハマに住んで、今年で足掛け3年。「この国に何を与えることができ
るのか?」いまだ、模索の真っ最中である。バハマは、緯度から言えば、家内の
出身地、沖縄に近く、気候的にはハワイのように年中温暖で、絶えず花が咲き
乱れ、椰子の実、バナナ、マンゴ、びわ、グレープ、アーモンド、何でもなっている。

コロンブスが1492年10月12日、バハマ諸島のサン・サルバドル(救世主の意)島
を発見した。コロンブスが「これこそ、この世、最大の美」「この地こそは、世界の
誰でも喜ばせることが出きる場所」と称え、ジョージ・ワシントンが「永遠の六月」
と言って、穏やかな気候を愛したことは有名である。バハマはバハマ原語。
“浅瀬の海”、スペイン語“引き潮”に由来すると言われるように、エメラルド・
グリーンに輝く、サンゴの遠浅の海は今のところ、この国の最大の資産である。

人口28万人のこの国に、毎年、その12倍、340万人もの観光客が押し寄せて
いる。バハマの総収入の7割が観光収入で、客の8割が米国人であり、日本人も
昨年、空路だけでも8750人(毎日2、30人、大半が新婚カップル)が訪れている。
バハマの経済を支える、もう一つの柱が“タックス・ヘイブン”“オフショア・ビジネス”
といわれる、税制優遇措置による国際金融サービス事業である。一人当たりの
GNP(国民総生産)は1.2万ドル(95年)で、韓国を超えている。

バハマはキリスト教国家であり、バプテスト系を中心にプロテスタント、アング
リカン(英国・国教会)、カトリックと三つ巴で、数百メートルも行けば、必ず教会の
建物が目に付く。日曜には、国民全体の3分の2は着飾って礼拝に参加する。
国会や閣議は、牧師の祈祷を持って始まり、定期的に牧師の説教を聴く。

しかし、このパラダイスも、今、社会的には地獄の様相を呈している。この国で
は、エイズ患者(96年)が2101人、人口、1億2000万人の日本でさえ、エイズ
患者は、バハマの半分、1186人に過ぎない。エイズによる死亡率は、男・女と
も、それぞれ、2位、1位を占めている。85年から10年間の過去の統計は、30代
前後の若者を中心に、外国人からバハマ人へ、男性から女性へとエイズ患者の
急速な推移を物語っている。

男性死亡率の第1位は麻薬がらみの殺人(807件)、毎日、2.2件の殺人事件が
あったということであり、バハマは世界一の観光地として選ばれる一方、世界一の
犯罪発生地との汚名を着たこともある。驚くべきはこれからで、生まれてくる子供
の6割が“未婚の母”からで、このような“未婚の母親家庭”が全体の45パーセ
ントを占めている。この光と影の狭間をどう埋めることが出きるのだろうか?




  奴隷制の暗い影… 尊敬心や責任感が欠如
                            1998.7.1バハマより  大脇準一郎

この国で不思議に思うことがいくつかある。

 その一つが、午後三時になるとと政府の役人であろうが、銀行の従業員であろ
うが、だれでも子供を学校から連れて帰るために、職場を休むことである。この
ため、午後三時前後になると急に交通渋滞となり、大変である。

 国家的に見ても、大きな労働力の損失であり、時間の貴重な観光客にとっても、
いたって迷惑な話である。スクールバスを配置したり、公共バスを利用するとか、
方法はいくらでもあると思われるのに、なぜなのか?

 また、「明日来るから」と言われて待っていても、当人は来ない。約束の時間
を一、二時間遅れるのは当たり前(これをバハマ時間いう)で、明日は来ると約
束しても、一日待っても来ないばかりか、それに対して何の音さたもない。時間
にうるさい日本人にとってはショックである。 あるいは、海に囲まれたこの国
は、豊富な海洋資源があるのに、あまり魚を食べず、チキンを好む、なぜなのか?

 その答えが、すべて一つにつながっていることを後ほど、発見した。それは、
過去の奴隷制の暗い影である。主君のために忠誠を尽くすことが美徳であり、常
識である日本とは全く反対の極である。 約束を守らないのは一部の人だけでは
なく、上院議員、教師、牧師だれでも同じである。強制され、恐怖心から仕方な
く従っている奴隷にとって、せめてもの自由は、仕事をサホタージュすることで、
彼らの長年の自己蔑視が、他人への尊敬心・社命的関心をも失わせ、自己本位の
生活活動を促している。 「離婚率、未婚の母の多いのは、この国に男女間の尊
敬心、相手や子供、自分自身に対して責任感が欠如しているためである」と、あ
るカウンセラーは述べていた。このような観点から見れば、彼らが約束を守らな
くても、同情の余地も生まれる。

 日曜には,お互いに競うようにおしゃれをし、着飾って教会に参加する。 奴
隷にとって、「日曜日こそ苦しい労働のくびきから解放されて、自由に神を賛美
できる解放の一日」であったことを思い起こせは、声援の惰も生まれてこよう。
  更に又、「奴隷が魚の味を覚え、漁業に専念しだせば、国外逃亡の可能性が
ある」という不安から、彼らを漁業に携わらせなかったと聞けば、チキンを最大
の好物として喜ぶ彼らが、かわいそうにも思えてくるのである。




   バハマに必要なもの---愛し、尊敬すること…
                         1998.7.15バハマより    大脇準一郎

 先日カリブ海地域のクオリティー・フォーラムがあり、米国を含めたカリブ地
域のリーダーが一堂に会した。この席での参加者の最大のコンセンサスは、
「カリブ諸国にかけているのは“社会的資本の蓄積”である」ということであった。

 これと好対照なのが日本である。 日本に富の蓄積が出来た秘密も、この“社
会的資本”に恵まれていたことである。このことは経済新興で注目されるアジア
の諸国が、いずれも、儒教的背景があることと関係している。儒教は家庭的倫理
を基盤とし、社会的団結を強調する。 バハマはキリスト教国家である。国民の
大半が毎週、熱心に教会に通っている。彼らは表現力が豊で、音感に優れている。
礼拝が三時間以上も続くのは当たり前で、その三分の二がシンバル、太鼓、キー
ボードの音に合わせて全身を動かしての、ディスコ並の賛美歌の連続である。説
教はいたって簡単、「主(イエス)は偉大なり!」。このキリスト教信仰とバハ
マの暗い社会的現実とはどうかかわるのか?

 まず、隔絶された神と人間との関係を取り戻すべきである。神と関係のある人
間は、神が偉大であるように偉大である。神が絶対的であるように人間も絶対的
である。ここに人間の尊厳性復帰の原点がある。

 言い換えるならば、愛は関係的なものである。愛は相手が自分と同等、あるい
はそれ以上であることを喜び、相手の苦痛を自分の苦痛以上に感じる。この面か
ら言えば、神は、いくらたたえられても、たたえてくれる人間が、日ごろ、神と
関係のない殺人や無責任な出産をしていては、喜ぶはずがない。心から神を愛す
るなら、神との関係を保って、自己の自尊心(神性)を死守すべきである。

 駄目な自分を完全に自己否定し、新しく、神との関係における、尊厳なる自己
を再発見すること。イエスも第2の戒めとして「自分を愛するように、あなたの
隣人を愛せよ」と強調されたのである。この「自分」というのは、古い自分では
なく、神によって生まれ変わった「新しい自分」のことを言っている。難しく言
えば、アイデンティティーの確立、絶対的価値観を確立することである。

 繰り返すが、まず、この国に必要なのは、自尊心の回復、自己責任の自覚であ
る。自己の尊厳性に目覚めてこそ、それを貴び、愛することができ、また他人を
も愛し、尊敬することができるのである。この国の社会的現実はそれには、程遠
い。しかし、改革は始められなければならない。

 物質的協力は、呼び水でしかなく、永遠に涸れない井戸水は、彼ら自身の中か
ら、掘り出さなければならない。幸い、そのことに目覚め、この国の将来を憂え
ている義人はいる。彼らと手を携え、この国を自然だけでなく、社会的にも楽園
とするため、心血を注ぎたいと思う昨今である。





  社会倫理高揚が必要---信頼感醸成の活動を計画・・
                       1998.8.1バハマより     大脇準一郎

 バハマの人々に「なぜ日本から来たのか」と聞かれれば、小生はいつも次のよ
うに答えることにしている。すなわち、「私達は、地球家族の一員として,兄弟
を助けるために来ている。これは家族としての当然の義務である。バハマは国民
の生活水準が高いので、ODA(政府開発援助)の対象国とらないが、われわれは
民間団体なのでバハマに来ている。ありがたく思ってもらいたい」

 「いろいろな物資援助も可能な限りしたいと思うが、私達の本当の願いは、皆
さんが自信と誇りを取り戻し、物心ともに豊かになり、そして皆さんの故郷であ
るアフリカの危機を救うために、こぞって奉仕に出かけるようになってもらうこ
とである」 こう述べると、“アメリカ人や日本人に国を乗っ取られはしないか”
と恐れていたバハマ人も大概は納得する。

 この国に最も必要なものは、新しい家庭観・社会観・国家観の確立と、これを
支える社会倫理・モラルの高揚である。このことは先に述べた真なる価値観(真
の愛・神)を中心としてこそ、初めて可能となることは言うまでもない。「和を
以って貴しと為す」日本人、「衆和を集める」ことに得意な我々は、この点バハ
マに多くの文化的貢献をできることが期待されよう。

 この国のマイナスでしかなかった社会資本を蓄積し、“信頼と敬愛に満ちた麗
しい社会”を建設することは容易なことではない。しかし、まずは「隗(かい)
より始めよ!」で、今、牧師達と協力して、バハマの人々の家庭内で、お互いの
尊敬心を高め、職場や地域での互いの信頼感を高めるような、ボランティア活動
を展開する計画を練っているところである。

 バハマは、世界一の観光国を目指している。それには、観光局だけでなく移民
局の協力も必要である。これは、バハマの観光局の高官や市民の一般感情だけで
なく、世界に共通した現象でもあるが、視野の狭い、横柄な審査官によって、ど
れほど、この国を訪れる良心的な外国人の心を傷つけていることであろうか。ま
た、ホテルでの盗難を減らすには、従業員の協力が必要であり、不当な料金を吹っ
かけないよう、タクシーの運転手の協力も必要である。 バハマは今、追いつき、
追い越すことに熱心だ。小生が、バハマ観光局高官達に、

「本当に“世界一の観光国家”を目指すなら、世界的観光国家間のネットワーク
の形成、グローバルファミリーとして、貧困に喘ぐ国々に希望を与え、彼らの先
導者となるような気概・発想の転換が重要」また、「バハマは経済水準が高いの
で、政府の海外援助の対象とならないが、そのようなグローバルなプロジェクト
であれば、日本からの援助の可能性もある」と述べたら、彼らは“日本からの援
助”ということだけに、関心を寄せていたのが印象的であった。       

  
 

バハマ国移民局への推薦状

  ※ バハマはキリスト教国家、日曜はほとんどの国民が着飾って教界に通う。
     バハマへの長期滞在のため、移民局に小生の推薦文を書いてくださいました。
     皆様の有形・無形のご協力に衷心より感謝申し上げます。

 大脇準一郎氏は、私の20数年来の友人であります。氏は深い信仰心を持ち、高潔で
誠実な人格の人であり、この点では、私は氏を深く尊敬しております。
 若いときから、世界の平和を願って、私事を投げ打って働いてこられた、優れたボラン
ティアのリーダーの一人であります。
 私の理解しているところでは、氏はこの精神で貴国の国民教育の向上のために努力
されていると信じています。こうした氏の志と活動の趣旨が、貴国の人々に広く理解され
ることを願っております。  
              1998年3月31日 筑波大学名誉教授 鈴木博雄

 大脇準一郎氏は私の古い友人で且つ人生の師であります。
氏によって、私は優れた神観を教えられ、人生の意義を考えさせられました。また氏は
、その学識と人間性によって多くの優れた人脈を持ち、私も何人もの日本の誇る人材を
紹介していただき、世界平和の為に、何を為さなければならないかを教えられました。

氏は、日頃己を捨てて世界平和のための活動を続けておられ、その日常を知れば知る
ほど尊敬の念が深まるばかりであります。氏こそ、貴国の民心の高揚に資する人である
ことを信じて疑いません。     
                  1998年3月21日          某企業役員

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    E-mail; junowaki@able.ocn.ne.jp Tel&Fax: 0422-26-7980
   S:080-3350-0021  W:070-6476-0076  Skype:junowak
    大脇提言:http://www.owaki.info/