日韓関係の未来を拓く三つの視点
  ─ 未来志向の文明的視点、開かれた夢のある世界観、果敢な協働 ─
 
 日本と韓国は、地政学的に 一衣帯水の関係にある。ところが近年,両国の関係が複雑に
絡み合い、閉塞状態にある。そこで問題解決の糸口を探す意味で、新しい3つの視点から、
思いきった提言をし、玄界灘、日本海(東海)が平和の海となることを祈念したいと思う。

 第一の視点は、 歴史的に長い目で見ることである。名越二荒之助氏は『日韓共鳴二千年史』
(ヨゼフ・ロゲンドルフ賞受賞)を世に問うている。日本のために尽くした朝鮮(韓国人)、韓国
のために尽くした日本人の感動的な逸話が数多く紹介されている。
 今年は李 垠殿下と梨宮方子妃の御成婚百周年記念の年である。セウル号沈没事故慰霊祭が
善光寺で開催
された5月11日は、生後わずか8か月で亡くなられた李 晋殿下(長男)の命日で
あった。 方子妃は、李 晋殿下を弔うために地蔵像を奉納されている。
 長い過去を振り返り、広い視野から現状を見つめ、共に希望溢れる未来を拓くことが大切である。

 第二の視点は、日韓両国が互いにだだ見つめあうだけではなく、視野を世界に広げ、「世界平
和のために自国は何をなしうるか?」を問うことである。このことは国家観・世界観の180度、
コペルニカス的大転換
意味する。ショウビニスティック(偏狭な)国家主義、過去へのノスタル
ジアに終わりがちな最近の世論と一線を隔するものである。
 国連で長年勤務された経験のある先生方とご一緒に地球市民運動を展開して学んだことは、
日本から世界見るのではなく、世界から日本を見ることでした。 その世界観は、諸国民が共に
生き、栄え、互いを尊敬し合い、夢と希望を与えるビジョンでるべきだ。このような共存共栄を
希求する理念を双方が共有することにより、韓国(朝鮮)の南北問題も自ずと解決されるであ
ろう。

 第三番目は、未来に視点を向けて協働することである。
 1960年代初頭、J.F.ケネディーの平和部隊(Peace Corpus)は、新鮮なインパクトを世界へ与
え、多くの成果を上げた。これに刺激受けて日本でも1965年海外青年協力隊が発足した。 この
54年間に91ヶ国、43,864名を派遣している。しかし、2009年の17,08名を頂点に、年々減少
傾向にありついに昨年(2019年)にはついに、千人を切っている。近年では、若者の国内志向
が進み、学生時代から定年後の年金を計算して進路に迷う青年も多い。隣の韓国では徴兵制
がある。兵役を終えた韓国青年の話を聞く機会があった。「日本の青年は焦点が定まらず、
くらげのように漂って、時を無駄に過ごしているように見える。2年間の軍隊生活は無駄のよう
に思えたがその間、国のことを思い考え、人生如何に行くべきかを考えるチャンスが与えられ
た。いまでは人生の目標に向かって生きるのに忙しい。」と述懐していた。自分のことばかり考
えるのではなくて、公のために尽くす体験をすることは、大きな学びの場でもある。自分が地域
社会や、自国や他国のために、どれだけ役立つことが出来るのか、まずは実践してみることで
ある。それがたとい些細な貢献であっても、そのことに対して心から喜ぶ笑顔とで出会う時、人
間の幸福とは何かを感じ、自分の存在価値を実感し、新しい視野が拓け、より豊かな人生が
開けるであろう。
  外国へ行くことにより、その国の言葉や文化も学ぶことができ、国民の意識や感情、人情の
ひだまででわかるようになる。自分がもっと役立つためには何を習得すべきかという課題を持ち
帰り、大学で再び学べば、勉学が一層身に入ることであろう。
  ボランティア活動をするための資金は、ODAを当てれば良い。今までODA資金は主にイン
フラ投資、産業機械贈与等ハードに充てられてきたが、今後はソフト面の教育や人材育成の分
野に重点を移すべきであろう。
 この国際ボランティア制度を国策化するという提言を、2010年、日韓文化会議に来日された
金容雲韓国側座長に問うた。氏は、我々のインタビューに答えて「どうして日本だけでやろうと
するのですか?韓国の青年も誘って共同でやってはどうですか?将来は中国も含め、東アジア
3国でやればもっと良い。この提案は、日韓首脳会談で共同コミュニケとして出すに相応しい提
言だ!」とおっしゃった。また中曽根元総理も満面の笑みを浮かべながら賛同の意を表された。
当時自民党国家戦略事務総長であった保岡興治先生(元法務大臣)は、この提案を聞くなり、
机を手でたたきながら「その通り」と全面的に御賛同くださった。

 ソプラノ声楽家、遠藤喜美子先生(山田耕作直弟子、元聖学院大学、盛岡大学教授、93歳)は
御高齢にもかかわらず、毎年国立市で高齢者ためのコンサートを開催されている。特に近年に
は、戦前、日本の音楽学校に学んだ洪蘭坡の存在を知り、『鳳仙花:洪蘭坡評伝』を出版され
た。その韓国版を出版したいという18年来の熱情が、ついに張 忠植・檀国大学理事長に通じ、
2016年4月、韓国語版が出版された。それは洪蘭坡生誕120年祭の記念式典の日であった。
当日の千人を超す 式典に招かれた遠藤先生は「鳳仙花」をみごとな韓国語で 独唱され、 
評伝を書くにあたって取材したエピソード、特に洪蘭坡夫人とのインタビューの思い出の紹介
に聴衆は涙した。コロナの影響で本年の韓国からの来日は困難であるが、ネットを通じて第3
日韓親善友好音楽の調べ(第16回国立ふれあいコンサート)の開催の準備も進めれている。

  1981年、韓国での第10回ICUS(科学の統一に関する国際会議)おいて国際ハイウェイ・
日韓トンネル構想
が提唱された。世界からノーベル賞受賞学者数名を含む450人の有識者、
日本からも西堀栄三郎、大石泰彦、中島正樹氏、大林組の皆様等40人が参加した。帰国後、
日韓トンネル研究会が発足、玄界灘の海底調査、ルートの探索、日本側唐津から600mの
試策抗が掘られ、対馬のルートも準備が進んでいる。日韓トンネルの経済的波及 効果もさる
ことながら、島国日本が大陸とつながることによる心理的効果は、お金には変えられない貴重
な価値を生み出すことが期待される。
 
 未来志向の歴史的視点の確立、共存・共栄・共義の夢を共有する新しい世界観の確立、そし
てこの夢を実現するための果敢な協働の実行こそ、日韓の未来を拓く三つの要目であると
確信する。
 
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36回「日韓・アジアの未来構想金 容 雲
We are the World大脇準一郎さん 動画19分35秒