日本のトリウム熔融塩炉の父、古川和男博士逝去

古川和男先生が12月14日にお亡くなりになっていた。最後にお会いしたのは10月
の講演会だった。今年の初め頃、重病を患ったとご本人より聞いたけれども癌だっ
たということは知らなかった。講演会の時にご挨拶に伺うと「体がキツくてね」
と悲しそうな顔をされていたのを思い出す。

大丈夫かな、と心配していたがこんなに早くお亡くなりになるとは正直思ってい
なかった。私は数回お会いしただけだったけれども、先生は非常に純粋で素朴な
感じの方だったように思う。歯に衣着せぬ直言で煙たがられたり、思いが強すぎ
てどんどん独りで先へ進んでしまったりしたけれども、立派な科学者だったと思
う。

先生は昨今の御用学者とは異なり「大人の事情」で真実を見ぬふりをしたりはし
なかった。残念に思うのが古川先生が日本に住んでいたことだ。もしかれがアメ
リカ人だったら、既にトリウム熔融塩炉の初号機は稼働を開始し、貴重なデータ
を蓄積していたことだろう。日本は彼のような「型破りの天才型」の人物を活か
すような社会のしくみを持っていない。残念な事だ。

しかし、古川先生の仕事がなかったらトリウム熔融塩技術は忘れ去られていたか
もしれない。古川先生がトリウムを推進していた時代、世界の他の地域では核兵
器開発ばかりで、トリウムは世界でもあまり取り上げる人は居なかったのだ。そ
ういう意味で日本のトリウム熔融塩技術の「父」であるばかりではなく、世界で
の功績も大きい。有名なご著書「原発安全革命」はトリウム技術の本だけれども、
「人と技術とエネルギー」を1000年単位の時間で俯瞰している部分があり、
単にトリウム技術だけにとどまらない古川先生の深い見識と壮大な構想を知るこ
とができる。

今年、手術を終わって自宅に戻られてからはこれまでの学究的な動きだけではな
く、自ら宣伝塔となって積極的に啓蒙活動をなさっていた。ご自分の死期が近い
ことをご存知だったのだろう。

古川先生のネットTVの公演。これが最終講義になったのだと思う。
我々は古川先生の後を引き継いでトリウム技術を見極めなくてはならない。古川
先生、安らかにお眠りください。(文:窪田敏之)
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古川 和男博士 (トリウム原子力研究の第一人者)

トリウム原子力の研究について古川和男博士を抜きにして語ることはできない。
というよりも古川先生こそが、他の人々があまり顧みないトリウムの有用性を見
出し、その応用を推進してきた人なのだ。先生は単に概念を提唱するだけではな
く、実際にいくつかの炉を設計している。つまりより実用に近い部分まで研究を
進められているのだ。

古川先生のご著書である「「原発」革命」(文春新書)は、平易な言葉遣いで初
心者にも判るように書かれているし、一方でかなり突っ込んだ内容も書かれてお
り、トリウム技術を俯瞰するには最適の名著だと思うので、ぜひご一読いただき
たいと思う。

古川先生はNPO法人「トリウム熔融塩国際フォーラム」を主催されており、年
に1~2回研究会を開いている。ここには国内のトリウム研究および推進者の主
だったメンバーが集まってくる。オブザーバも無料参加できるので、興味のある
人は覗いてみると良いと思う。

先生は非常に純粋かつ真摯な方で、そのエネルギッシュな行動と歯に衣着せぬ物
言いのために時々敬遠する人もいるという。しかし私が一度ご挨拶させていただ
いた折には全くそんなことはなく、物腰の上品な感じの科学者らしい紳士だった。

先生の論文は読んで面白いだけではなく有用なものが多いので、公開しても大丈
夫なものに関してはこちらのブログでもダウンロードできるように考えてゆこう
と思っている。(文:窪田 敏之)

From: junowaki <junowaki@able.ocn.ne.jp> To: ".e-mirai"
Date: Fri, 16 Dec 2011 09:28:37 +0900
Subject: 古川和男先生、逝く!

敬愛する諸先輩の皆様、

既にご存じの方も多いと思いますが、小生も昨夜、友人より古川和男先生の訃報
を知り、驚いています。

朝日新聞を始めネットに流れている情報を下記に添付します。

古川先生は、今年6月、大腸がんの手術をされ7月、ご自宅でご静養、8月に何
人かで大磯までお見舞いにお伺いしたときには、3時間、滔々と「自分の眼の黒
いうちにトリウム原発の実験炉を完成したい!」と情熱を込めて語ってください
ました。9月21日台風直下にもかかわらず満席の下、東京私学会館で「トリユ
ム安全原発」についてご講演されました


電車が止まり皆、3時間もかかて帰宅されました。古川先生は近くのホテルに泊
まり、翌朝やっと帰宅されました。10月25日、品川でチェコの技術者を迎え
トリウム国際シンポジュームを開催されました。ご高齢にもかかわらず細かい点
までメールやお電話をくださいました。先日も「病院から帰宅した」とお電話を
いただいたばかりで、余りのできごとにショックを隠すことができません。

すでにネットで書いていらっしゃる方もお出でにように先生は高潔な人格の紳士
でした。「古川先生にお会いすると、ユージン・ウィグナー、西堀栄三郎先生を
思い起こす」と小生も依然書いた通りです。これらの先生方に共通するのは、小
学生がそのまま大人になったように純粋無垢、高邁な夢(ロマン)を追っていらっ
しゃったこと、謙虚、正直で根っからの技術者でいらっしゃったことでした。

1984年ニュー・オオタニで西堀先生らとワインバーク博士(オークリッジ研究所所
長)をお招きし(財)国際科学振興財団(筑波大)主催のトリウム国際会議で初
めて古川先生にお目にかかりました。トリウム原発開発に生涯をかけられた先生
、何十年ぶりかでお会した先生の御健康は、トリウム原発の未来を予言するかの
ように風前の灯を予感していました。「巨星落つ!」放射能対策に明けくれ、未
来の夢を追う余裕のない日本、いつこの重い空気から脱出することができるので
しょうか。

皆様とともに先生のご冥福を心からお祈り申しあげますとともに、ぜひ先生の悲
願、トリウム安全原発を実現したいものです。

       エネルギー政策フォーラム事務局代表 大脇 準一郎 拝

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【古川和男】原発安全革命~トリウム原発への道  [桜TV2011.9.1]

通常の原発で使用されている固体燃料ではなく、液体燃料を用いることで、より
安全且つ-高い効率で運用が行える「トリウム原発」の可能性について、開発に
携わっておられた古-川和男氏に、お話を伺います。