技 術 経 歴 書

1.氏名:津坂康和(つさか やすかず)

2.住所:千葉県流山市東初石3-111-1 C-602   

3.電話:04―7152-3945
                    

4.専門分野: 特殊ロボットのシステム開発

. 発表論文:水中ロボット関連分野(IEEE、日本産業用ロボット工業会他)

海水管保守ロボット関連分野(東芝レビュー、火原協他)

6.学歴:昭和46年3月 名古屋大学大学院工学研究科修士課程修了(機械工学専攻)

. 職務経歴

 昭和46年4月     三井海洋開発(株)入社

昭和46年~昭和48年 有人潜水艇の開発 (財)日本舶用機器開発協会との共同研究 :機器設計、実験担当         

 昭和48年~昭和50年 GE社製閉式潜水器の実用化研究    :研究担当

 昭和50年       科学技術庁海底居住実験参加      :実験研究員

昭和51年~昭和52年 水中アイロボットの開発(財)日本舶用機器開発協会との共同研究:機器設計、実験担当           

 昭和52年~昭和55年 小型無人水中作業艇の開発(財)日本舶用機器開発協会と共同研究 :機器設計実験担当        

昭和55年~昭和60年 ダム点検システムの開発(東京電力(株)との共同研究)    :開発担当           

昭和58年       海洋科学技術センター無人探査機基本設計 :プロジェクトリーダー補

昭和58年~昭和62年 水中作業ロボット調査研究(社)日本作業船協会        :研究員

昭和59年       水力発電所用ロボットの調査研究(関西電力(株))    :調査担当           

 昭和61年~昭和62年 コバルトクラスト調査研究(社)深海底鉱物資源開発協会     :研究員                 

昭和62年~昭和63年 原発用水中点検ロボットの開発 (株)東芝との共同研究    :開発担当

 昭和63年       海中作業船システムの開発研究 (社)日本作業船協会     :研究員           

 昭和63年12月    三井海洋開発(株)解散の為退職

 昭和64年1月     (株)東芝入社

平成元年~平成5年  原子力タービン技術部にて東京電力との共同研究として軽水炉発電所用循環水管保守システムの開発(大口径海水管内の清掃・点検・補修)プロジェクトの本社技術部門における取りまとめに従事       

平成2年~平成6年 同部にて関西電力との共同研究として軽水炉発電所用海水管自動点検システムの開発・実用化プロジェクト(中口径海水管の清掃点検)の取りまとめ業務に従事    

平成7年~平成8年   浜岡原子力発電所におけるタービン系改良保全担当業務に従事

平成8年~平成13年  核融合開発部および原子力開発設計部にて国際熱核融合実験炉(ITER)用遠隔操作機器開発プロジェクトならびに大強度陽子加速器用遠隔操作機器開発プロジェクトの取りまとめに従事 

平成13年~平成14年 核燃料サイクル開発機構に出向し、FBR再処理施設遠隔機器計画業務他に従事

平成15年~        原子力開発設計部にて(ITER)用遠隔操作機器開発プロジェクト取りまとめ業務に従事 

平成19年11月   (株)東芝定年退職

平成19年12月  東芝テクニカルサービスインターナショナル入社 原子力タービン関連データベース構築

平成21年12月  同上 退社

平成22年4月   流山市初石公民館副館長就任

平成25年9月   (株)Teiryにて溶融塩炉開発プロジェクトに参加

平成26年8月   東電吉田所長顕彰会顧問に就任

平成27年9月   NPO流山国際交流協会広報担当に就任

平成27年12月    東電吉田所長顕彰会顧問退任

平成28年9月     海流発電計画に参加

平成29年6月    (株)日本海洋発電の顧問に就任

平成29年9月    (株)Teiry顧問退任

平成29年12月   (株)日本海洋発電顧問退任


資料 NO. 008          抄訳担当:津坂

PHYSICAL & CHEMICAL FEASIBILITY OF FUELING MOLTEN SALT REACTORS WITH TRU`S TRIFLUORIDES

著者:V Ignatiev,

概要:溶融塩炉(MSR)は将来の核エネルギーシステムの要素として考えられる重要なものである。特にMSRはU-Thサイクルで運転する先進無TRU(TRUフリー)システムばかりでなくTRU変換装置にも有望なものである。本論文では最近の技術状況と再び話題となった展望につき述べる。

 1.緒言

 溶融塩の使用はいろいろな異なった原子炉形式の応用として提案されてきた。特に米国、ロシア、フランス、日本ではMSRの概念は臨界または未臨界モードで運転される高速増殖とthermal炉心とブランケットに対して準備されてきた。現在のアプローチは核分裂性物質ばかりでなくUを生じる豊富な物質を含有することが可能な単一塩流を採用している。

溶融塩燃料の概念はORNLのMSRE実験炉で成功裡に運転されて証明されたが、まだ産業用としては行われていない。

 将来MSR技術はTRUとトリウムの利用において標準の原子炉と共存することが期待されている。TRUの燃焼装置としての溶融塩の有益性は非水生燃料クリーンアップ技術との連携の可能性ばかりでなく、連続運転中に炉心の変更をしなくてもいろいろな核種の混合物の燃料を利用できることである。

2.燃料サイクルの選択
 MSB(TRUバーナー)のフローシートは以前のMSRとは炉心構成、燃料塩混合物、ならびに核分裂性物質のクリーンアップにおいて異なっている。

 MSRの概念では炉心内の最大エネルギー密度はグラファイト減速材への損傷により制限される。単一流体の概念の主な欠点は熱交換器あるいは炉心以外の場所に核分裂性物質がたくさんあることである(substantial investments)。

最近の研究では燃料としてPuF3とマイナーアクチノイド トリフロライドを用いたMSBの運転の広範囲性が概念的にはフィージブルであることが示された。

この範囲の一端にはLi、Be/Fの混合溶融塩からなる溶媒中の十分熱中性子化されたグラファイト減速材炉心がある。このようなMSB炉心の構成における最大パワー密度は高速中性子によるグラファイト減速材への損傷により制限されることが特筆される。

他端にはグラファイト減速材の無いhardened スペクトルでのMSBの運転がある。

このMSBの概念はPuF3の濃度が前の概念より3倍以上になる。

MSBにおいては全ての核分裂物質は再処理プラントには行かない。すなわち、KrとXeは炉内にヘリウムを50秒間注入することにより除去される。

セミNMとNMはパージガスに急速に運ばれ、主に炉心外の燃料回路内の表面に堆積する。

MSBの燃料プロセスの概念をfig-1に示す。

 新規作成_1

MSBの概念を単純化するためには核分裂生成物の除去のために燃料塩の化学的プロセスを完全になくすことである。

この原子炉はTRU燃料の定期的な追加が必要であり、多分外部ソースによる中性子の維持が必要である。しかし、プラントの最終寿命時の他はプラント在庫の交換あるいは除去は必要ではないだろう。

シングルパス原子炉に化学施設を付加することは、ウランおよびTRUのリサイクルに基づく別の概念を与える。MSRに基づくフッ化物の優位性のひとつは集積化された燃料回収能力に対する可能性があることである。

フッ化物を有する塩を注入することにより、ウランがUF6として除去され、バッチ処理でUF4に変換されリサイクルされる。固体燃料を使用しないため燃料はいつでも直接原子炉に混合されるし、長期間の冷却や、中間貯蔵を必要としないので前処理工程やコストの削減となる。

多様なアクチノイドをリサイクルするために、プルトニウムとMAはイットリウムと希土類の核分裂生成物より前に燃料から取り除かれねばならないので、MSBはTRUの燃料塩からの除去と再投入のための設備を含まねばならない。

核分裂物質の無い材料のキャリアー塩の周期的な交換はTRUの中性子バランスと利用を改良するが、他の塩成分の消費が増加する。

除去されたキャリアー塩は中間的な処理をせずこのプラントでの再利用あるいは新しいプラントでの使用のために処理される。

MSBの性能を最適化するための主な変数は炉心中の少量の塩、溶媒の選択、供給材料の組成である。

溶融塩を更に評価するために必要とされる将来の研究は炉心外の燃料塩の量を最小化するための設計も含まれる。

3.燃料塩の選択

 液体燃料原子炉設計として燃料を選定する場合次のクライテリアが適用される。

(1)溶媒成分に対する低ニュートロン断面

(2)塩成分の熱安定

(3)低蒸気圧

(4)放射安定

(5)燃料と核分裂生成物のの適当な溶解性

(6)適当な熱伝導性と流体力学性

(7)容器ならびに減速材との化学的適合性

(8)燃料と再処理の低コスト

フッ化物塩のいくつかは熱安定性等の特性を満足する。U、Pu、Th以外の金属のフッ化物が希釈剤として実際の使用に際し、十分低い溶融点を保つために用いられる。

ORNLでの中性子の節約の理由により、以前のMSRの概念に対して選ばれた溶剤はLiFとBeF2であった。

 TRUフッ化物を供給されるMSBに対する最適な溶剤の選択はまだ明白でない。

PuF3溶解度は純粋なLiFあるいはNaF内で最大であり、BeF2とThF4の付加で減少する。

 フッ化物ベースの溶剤中ではPuF3の溶解度は温度と組成に依存する。

Na、Li、Be/Fの3元塩もまた主回路の代替溶剤として考えられる。また25-15mol%BeF2を有するLi、Be、Zr/Fも可能性のある溶剤である。66LiF-29BeF2-5ZrF4システム内の希土類とアクチノイドフッ化物の溶解度が米国および、ロシアの研究所で測定されたことは特筆すべきことである。

他のTRUはLiとBeを含む溶剤に溶けることは知られている。しかし溶解挙動の定量的な定義がまだ明確でない

フッ化物溶融塩中のアクチノイド ジオキサイドの溶解度は低く、Th02-UO2-PuO2の順に減少する。3価のプルトニウムはLi,Be/FとLi,Be、Th/Fの混合物から酸化物として沈殿する傾向はない。MSRの燃料は相対的に酸化許容度が低のため

原子炉システム内での偶然の沈殿をさけるためそれなりの注意が必要である。

 PuF3燃料がこれらの溶剤内で使用されるなら、FとLi,Be、Th/FとLi,Be/Fに対する溶融フッ化物の化学は十分確立されており、信頼をもって適用される。

MSBの化学的ニーズの観点からは次のもっとも重要な点はアクニノイドフッ化物の溶解度の考慮である。

4.グラファイト

 グラファイトはMSRの良い減速材である。その減速能力はフリーベの2倍程度である。

一方その有効なマクロ吸収断面積はアクチノイドと核分裂生成物を除いて塩の5分の一

である。グラファイトは放射線損傷を受ける。約3X1022 /cm2以上の高速中性子束に対しrate of expansionはかなり早くなる。このことはグラファイトの許容暴露に対し限度があることを示している。MSBRにおいて最大パワー密度は約70W/cm3で、利用可能なグラファイトの寿命はフルパワーで約3年である。8W/cm3の炉心パワーのDMSRの場合には利用可能なグラファイトの寿命は約24フルパワー年である。

加えて、核分裂ガス生成物、特に135Xeは中性子バランスに関するいくらかの影響をもってグラファイトに拡散する。とくに高フラックスの炉心にはXe汚染を最も低いレベルに保つことが必要である。このことはグラファイトに非常に低い透過性すなわち10-8cm2/secを要求する。ORNLでのパイロリィティク シーリング作業は部分的な成功であり、照射前に材料をシールするために注意がはらわれねばならないことが判った。

MSBRに関連して、MSRの新しい波においては増殖性能に対する要求がゆるやかになったので、グラファイトへの要求も減らされるだろう。

 米国とドイツのHTRの設計に沢山の詳細なクリープデータがあるが、これらのグラファイトは溶融塩の応用には不満足なものである。

 MSRの要求にもっとも近いのは日本のIG-100グラファイトと、ロシアのGSPタイプのグラファイトである。シーリング技術の開発が続けられるべきである。

5.輸送特性

 MSR炉心の設計は提案された燃料と溶融冷却フッ化物のヒート&マス 輸送特性に関する詳細な情報を必要とする。

 表―1に各温度条件での流体の組成と特性を示す。

新規作成_1

結論として、強制ならびに自然対流についてフッ化物塩の設計に対する熱伝達には通常の流体に対する相関を有する正確な物理性質の使用が適当である。

6.構造材

 MSRの成功は主ならびに2次回路に使用される溶融塩の容器の適合性につよく依存する。

 実用システムの設計にはLiF、NaF、BeF2,UF4、ThF4、PuF3等のような塩成分の選択を必要とする。

 300シリーズのステンレス鋼が閉回炉システムの条件下でウラニウム燃料塩に暴露された場合には、腐食割合は600-650℃で60-70μmの深さまで減少したCr量の表面ボイドによって示される。

 ORNLでの初期の材料研究はフッ化塩での使用対してニッケルベースの合金ハステロイNの開発に導いた。(表―2)

新規作成_2

この合金がMSREで用いられた唯一の構造材で実験の成功に十分貢献した。しかしながら2つの問題がある。1つは10Bから生じるヘリウムにより脆化することで、2つ目は

粒境界と脆性境界に沿って金属中にわずかに核分裂生成物テルルが拡散することである。

最近のORNLが選んだクラック問題に対する解答はハステロイNにいくらかの修正をして研究を続けることである。2%Nbを含んだ修正ハステロイNのテルル材料試験でクラックがまったく無くなったことが判った。
(表-2)

RRC-KIでもまたニッケル合金ハステロイNMがレファレンスとして選ばれた。

この合金の研究によりTiとAlを修正した合金がMSRの最適な材料として提案されHN80MTYと名づけられた(表-2)。

UF4―含有塩のデータはPuF3―含有塩に対する腐食特性を確立するためにロードマップを与える。 

7.核分裂生成物のクリーンアップ

 溶融塩燃料に対し、核分裂生成物は中性子poisonsの重要性の順序でいくつかのクラスにグループ(希ガス、希土類、NM、セミNM、揮発性フッ化物、安定フッ化物)される。

(表―3)

新規作成_3

MSRではHeを注入することにより希ガスを除去できる。前にも述べたようにここでの問題はポーラスなグラファイト減速材に希ガスが入るのを防ぐことである。BrとIの揮発性フッ化物は相対的に重要ではなく、フッ化段階で除去される。NMと他の重要でないいくらかのものは安定なフッ化物を形成せず、元素のままのようである。

 試験により塩からそれらは急速に消滅し、主回路、主に熱交換器の金属表面に沈殿することが判った。NM、セミNMに対してはさらに実験が必要である。

 希ガスが除去されたMSRでは最も重要な核分裂生成物poisonsは希土類である。Rb、Sr、Cs、Baの安定フッ化物はアクチノイド トリフッ化物の溶解度に対し重要ではない。希土類を除去する試みには還元抽出法等に基づくプロセスを含んでいる。ORNLでのLiF-BeF2溶剤システムにたいして開発されたBi―Li還元抽出法に基づく希土類除去装置ではほとんどTRUの紛失はなかった。

いくつかの代替案を有する選択されたプロセスの組み合わせが可能である。

.結論

 上で述べたようにエネルギー生産の原子炉システムと燃焼装置に対する燃料と冷却材として溶融フッ化物を使用することは多くの手ごわい問題に直面することは明らかである。

 これらのいくつかは解決され、いくつかは解決の途上にあると思われるが、まだ解決されていないものもある。溶融塩はこのような応用に多くの望まれる特性を有しており、努力と時間と、金が十分与えられればTRUフリーあるいは変換装置は成功裡に開発されるだろう。十分確立した2Li―BeF2溶剤システムに比べて他の代替の溶剤には基礎データに不確実性がある。プルトニウムとMAトリフロライドによって燃焼されるMSBの可能性を評価することが必要である。MSBの概念設計における一般的な不確実性はTRUF3の化学とredox制御の分野にある。