韓国の危機と新しい希望
                           統一思想研究院 院長  李 相憲

 現在の韓国の危機の要因を分析すれば、外的要因、内的要因及び地政学的要因の三つ
に大別される。

 外的要因は大韓民国を赤化統一しようとする共産主義の北方からの直接的軍事的脅威
と、日本を通じての迂回浸透であり、内的要因は世界的インフレの影響下の経済的不況、
道徳的廃退や反抗運動の濫行、社会的犯罪の増強等であり、地政学的要因はアメリカや
日本の海洋勢力とソ連や中共等の大陸勢力との接触地点であることである。

 これら五つの要因が複雑にからみあって表面化されたのが、韓国の現下の危機のすが
たである。言論自由の部分的制限やこれに対する一部の不満、一部学生や宗教人の反政
府行動、物価高による庶民生活の逼迫、不況による企業活動の停滞、青少年の風紀や性
道徳の廃退、一部官吏の不正腐敗等は皆上述の諸要因の複合作用の表われである。


 ところで外的及び内的原因は韓国だけの問題ではなく、自由諸国に共通する現象であ
る。従って韓国の危機は世界的な普遍的要因と地政学的特殊要因との複合物である。 
然し、現在の韓国の危機がたとえ世界的特にアジア的危機の一環ではあっても、決して
悲観すべきものでもなく克服不能のものでもない。勿論アメリカ、日本、ソ連、中共等
の四強の力学的相互作用が韓国の危機の解消如何を左右することは言うまでもないが、
それといって難局克服のキーがすべて四強に委かされているとは決して考えられない、
かえってほんとうの鍵は韓国自身に持たされているのである。すなわち韓国民自体によ
り必ずこの危機は克服できるのである。ではその鍵とは一体何であろうか?

 それは歴史を通じて外来の侵入勢力に強力に抵抗してきた民族の精神的底力の復活で
ある。韓民族は4千余年前からの敬天愛人の民族信仰の土壌の上に、古代には仏教と儒教
を、近代にはキリスト教をとり入れてこれらを土着化させたのみならず、更に深化させ
哲理的に体系化させた自主的文化民族であるのみならず一切の外部からの侵入勢力に強
力に抵抗した正義と不屈の民族である。この文化的底力と不屈の抵抗精神が今復活し始
めつつあるのである。

 6.25韓国動乱以後の数知られざる北方からのゲリラやスパイの侵入をことごとく粉砕
した官民共同の強力な反共運動や、反共精神と勝共理論による国民の思想的武装ならび
に社会の倫理的廃退現象に対する宗教人や知性人の覚醒と新価値観の創造の為の活発な
る胎動等は新しい未来の確実なる保障である。これは決して一時的な風潮ではなく正に
歴史的抵抗精神や文化的底力の復活とみなすべきである。 韓国を囲護する四強は実は
外見上の強者たるのみで、精神的にはすでに老衰に傾いている。日本とアメリカは精神
的理念的には空洞化されつつあり、北韓を含むソ連や中共は、精神的動脈硬化症にかかっ
ていると云って過言ではないであろう。然しこれら諸国の中に包囲されて孤立している
韓国は、永い歴史的試練をふまえて今や新生しようとしている。


 危機克服の真なるキーは韓国自身の手に握られている。ここに韓国の新しい未来があ
り希望がある。韓国が新しい希望に燃えるとき、同時にアジア全体にも新しい希望の火
が燃えあがるであろう。何故ならば、新しい希望とは古代のアジア文化の伝統の上に、
従って共産主義の徹底的克服の基台の上に築かれる新しい価値観による新文化のことで
あり、韓国、日本、中国は皆、伝統的アジア文化の遺産を温存しているために、一国に
おいて新文化の光が輝きだすとき、そして反アジア的思想がアジアから退潮し始めると
き、直ちに他国にも希望の光が点火するであろうからである。三国は文化的には共同運
命体であるからなおさらのことである。ここに三国の良心的知性人は、アジアの運命を
背負って固く結束して立ち上がるべきである。
 
            『国際文化フーラム』創刊号 世界平和教授アカデミー