ICUS準備会にて 
  
        1981年10月9日 ホテル・ニューオオタニ

松下正寿(ICUS日本委員会代表)
 私は第10回ICUSに皆様と御一緒出来ることを大変感謝しております。私は第8回を除いて全てのICUSに参加しております。
 第10回ICUSにおいて一番重要な意義は東洋で開催されることです。日本に一番近い韓国で開かれることです。
 ICUSは世界で第一級の学者が集まっているので、非常に内容が豊富で、格調が高いのが特徴です。

 科学は西洋から生まれたのでユニティとか統一の発想が西洋的に行なわれるのは当然のことです。しかし、現在西洋文明が最盛期を過ぎ傾きかけているのも事実です。従って、我々東洋人としては単に西洋の文明を継承するだけではなく、行き詰っている西洋文明に対して何か貢献をしなければなりません。「光は東方より」とか、「西洋文明は没落した」ので今度は東洋が主役だという排他的二者択一的な考えから来るのではありません。私は、「西洋文明の没落」は困ったことであり、没落させてはならないと思っています。その為には、新しい血を導入して、西洋文明を新しく生まれ変わらせる必要があります。日・韓・中の三ヶ国はその意味で非常に大きな責任を負っていると思います。

 残念なことに、今までの会議では東洋三国の意見はあまり反映されておりません。依然として西洋的発想法のままです。私は今まで会議が西洋で開催されてきた以上、仕方のないことだと思います。しかし、今回は、東洋の韓国で開催されるわけですから、両国の学者が良く話し合い、出来るだけ東洋の新しい考え方で、今までの西洋的発想方法のひずみを打開し、東洋と西洋一体となって新しい文明を創造するように我々自身が情熱を傾ける責任があると考えています。 私も御一緒させていただいて、いくらかでも東洋としての特徴な貢献をさせていただければ、誠に幸せであります。皆様よろしく御願い申し上げます。

福田信之(筑波大学学長)
私は専門は理論物理学で、朝名永振一郎先生の最初の弟子でございました。その後、筑波大学新設にかかわってから、色々な事に興味を持ちはじめました。私は、ICUSには過去6回出席しております。
専門の物理学の会議ではほとんど面識のある型としか合うことが出来ませんが、ICUSでは文字通り“Encounter and Conversation”で多様な専門分野の方々と色々な巡り会いの出来ることが直接のメリットと考えております。

現代社会は科学技術文明が一方的に発達しております。医学、生物学を含めて理工系の学問が急激に進歩して来ました。科学技術文明は私たちの生活に密接な関係をもっている故に、もう離れられなくなりました。一方、“人間”として同変化しているのかという問に対して、ギリシャ時代からそれ程変わっていないとも答えられます。ギリシャ彫刻、ルネッサンス文化、ベートーベンらの音楽に対して感動する“人間”としては変化していません。ところが科学技術の発達は単にその分野にとどまらず自然、人文、社会科学全体と深い係わりあいの中にあります。最近の夕張炭鉱のガス突出事故に例をとれば、原因は原子力エネルギーの開発が進んでいないからです。何も知らない人々が反対を叫んだ。故に仕方なく通産省が代替エネルギーとして石炭の開発を推進した結果、あのような惨事になったのです。新聞も誰一人犠牲者の出ない原子力には猛反対をして、石炭への依存度を高めよ、経済の犠牲、人命の犠牲もやむを得ないということでこうなりました。善悪の判別は別として、このように問題が色々な分野に複雑にからみあっているところに現代の特徴があります。

私は理論物理学が専門で機械に最も縁のない人間です。理論物理学の世界から飛び出してみると、科学技術の進歩が色々な問題を引き起こしているのを理解しました。特に科学技術と価値の問題は不可避的な問題です。全ての問題が学際的に、即ち伝統的な言葉を使えば、人文、社会、自然科学全てに関係しあっているということです。
松下先生は議論百出でなかなか解決しないと述べられましたが、解決しないのが当り前で、20世紀内に解決をしたら大変な問題であり、100年後でも困難だと思います。
人文、社会、自然科学の分野を価値の問題を含めながら学問をしないと諸々の複雑な問題を解決出来ないと思います。南北サミット、先進国会談等色々やっていますがなかなかうまくいっておいません。

私はアポロ計画に大変感銘を受けましたが、ICUSも一種のアポロ計画です。アポロ計画は、“月へ人を”という目標にたいして、あらゆる科学技術を通して、全ての可能性を探求して、10年後、終(つい)に実現をした。それがどの位価値があるかは別として、この様に科学技術が、人間の問題、社会の問題、宇宙の問題にかかわりあって大きなシステムに挑戦しようとしているとき、その根底にある価値の問題を無関係にすることは出来ません。アポロ計画は「月へ人を」を目標に実行されましたが、ICUSは価値を根底におきながら全ての学問を総合して新しい文明を創造しようとする意欲があることを感じます。すぐ実現するとは夢にも思いません。しかし1970年代から始まったICUSの大きな夢を求めて、世界一流の専門家たちが一堂にかいするのを見るとき、アポロ計画によせた私達の夢をもっともっと大きな形でよせているのではないかと感じます。

世界の人口、エネルギー、資源の問題を見ても、解決すべきは単に技術だけではなく、もっと広い問題があります。大きな成果があるわけではありませんが、期待を寄せています。“Encounter and Conversation”、「巡り会いと対話」この言葉が身近なことばではありますが意味のある第一歩だとしみじみ感じております。

今村和男(防衛大学校教授)
 私は過去2回参加させていただきました。私はこれ程よく組織された会議を他に出席したことはありません。私はオペレーション・リサーチが専門で国際会議の理事をしていた関係で二度程国際学会の会議をいたしましたがICUSにはとてもかないません。
 また事務局の準備がよく出来ていますので、会議に出席するにあたって不便や不満は全く感じませんでした。
 私は「生活の質」問題に日頃関心をもち、その部会に参加しました。自分としてはかなり勉強していたつもりですが、全く予想出来ない異なった角度から切り込んできた論文があったことに驚きを感じました。同じ専門分野同志ですと、あまり変わった見方は出てきません。かえって異なった立場の異なった教授から出される同じ「生活の質」に対しての論文の方がはるかに面白い側面がありました。
 ボストン会議の時は「現代社会における若者のバイオレンス」という話があり、イスラム社会の様子が紹介されました。私はこれまでイスラム社会に対して全く意識がありませんでしたので、よい勉強になりました。
 対等にコメントやディスカッションをするのは難しいときもありますが客室やロビーで友人になることが出来ます。私はICUSに出席して、友人になった人達でその後文通している教授が相当おりますので大変うれしく思っています。
 東南アジア、開発途上国の人々は活発に討論をしますがなかには発言のみで言いっ放しの方のいるのは困ります。

中村信夫(システム・デザイン研究所長)
 私は第7回に参加し、非常に感動しました。グループディスカッションで“学際研究の方法論”でスピーチをしました。私達一人一人がどのような貢献が出来るかという観点から、ぜひ英語でも日本語でも論文を出していただきたいと思います。韓国の先生方は日本語を理解される方もおりますので、off session でも free talking でもその場を活用していただきたいと思います。
 私の興味あるのは基礎論としての「価値論、認識論、方法論」です。
 そうぞ積極的に参加をお願いいたします。

安斉伸(上智大学教授)
 私はマイアミの第9回ICUSに参加させていただきました。ICUSの取り上げるテーマは、現代社会が直面している深刻な問題であります。また集まった教授が世界的に著名な方々であり、しかも宗教信仰の宗派を超えておられたので大変印象深く感じました。
 一歩一歩充実をしてきたICUSが更に一歩前進して韓国において結実することを期待いたします。

橋本雅一(女子栄養大学教授)
 私はサンフランシスコでの第6回ICUSに参加させていただきました。医学を専攻しています。この10年は医学倫理で、東洋医学と西洋医学の接点を探求しています。会議その場で得られた知識はすぐには役立ちませんでしたが、帰国後、いくつかの論文を熟読し、翻訳した時点で、大変勉強になり感謝して★ております。先日韓国での会議に出席し、現状をつぶさに見てまいりましたが、帰国後、「朝鮮出兵史」という本を読み、韓国を中心とした色々な問題を学びました。今後の参加を楽しみにしています。
 別な話で申し訳ありませんが、会議も大変勉強になりましたが会議の後、チャイナタウンで会議に参加された方々と色々な歌を一緒に歌ったことを楽しかった思い出としてもっております。ありがとうございました。

福田信之(筑波大学学長)

私は、最近7月に韓国に行ってきました。ソウル大学等を訪問し、その後、陸軍士官学校、国防大学院、在郷軍人会等、韓国を現実的に支える人達に講演をしてきました。
 私は韓国に対する偏見をもっておりません。色々な関心をもって韓国人そのもの、韓国文化に直接ふれていただきたいと思います。日本には韓国に対する蔑視感情がありますが、日本にとっても、韓国にとってもお互いに大切な国であることを認識していただきたいと思います。
 オリンピックの誘致問題に端的に示されるように日本の韓国に対する評価と世界の韓国に対する評価は全く異なります。日本の全てのマスコミ、そして外務省までオリンピックは名古屋に決定すると予想しておりました。しかし韓国が圧倒的に勝利しました。私は、日本のマスコミがいかに信用出来ないいいかげんなものであるかということと、韓国に対する国際評価が高く、日本人といかにちがうかということをものあたりに見ることが出来ました。
私は、物理学者ですから宗教のことは全然わかりません。ただ会議の意義は自ら参加して価値があると肌に感じて思っている故参加しているのであり、誰にも強制したこともさせたこともありません。自分の判断だけで参加しております。
どうぞ皆様、自らの判断をなさって下さい。

斉藤美津子(国際基督教大学教授)

 私も過去4回参加させていただきました。
 私が参加をするのは次の三つの理由からであります。
 1)学際会議で世界でこれ以上の会議はない、唯一最高の会議であることを確信しています。
 2)ノーベル賞の受賞者が8人も参加することに見られるように世界一流の学者が専門分野を超えて一堂に集まる会議はICUSしかありません。
 3)事務局を運営しているのは若い人達ですが世界平和を祈願し、献身的に奉仕してくれていることにいつも感動させられます。
  私も夢をもって楽しみにICUSに参加させていただきたいと思います。


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アジア太平洋時代のビジョンはどうあるべきか?
(哲学、経綸、価値観、指導精神〈leadership〉等、包括的に)

日本の正体(主体性〈Identity〉)は何か?

         元韓国監査院長、元陸軍参謀総長 黄 永時

1、日本文化の可能性
 1).日本歴史の淵源と真相(倭、大和、日本)
  日本民族の発祥―人類文化史上
  日本国名と理想―日の本(太陽―自己燃焼を通じて光と熱を与える)
  日本の建国神話と建国精神

 2)、日本の哲学とビジョン
  日本の理想と実在―八紘一宇、大和魂(倭)、日の本
  日本人の〈勘〉の本領は?
  日本武士道とleadership

 3)、日本文化と人類への寄与
  儒教・漢字文化圏の世界文化への寄与度と展望
  儒、佛、仙、基、回、神道の世界的貢献対策如何(統合昇華の可能性)
  佛、儒、仙文化の輸入と影響
  世紀アジア太平洋時代のビジョンと儒教文化圏の役割
  世界人類の家族化に伴う日本のビジョンと寄与展望

2、日本の教育に学ぶ
  1)日本の指導精神とは?
    日本の指導者精神と志士精神との関係
    (坂本竜馬、吉田松陰、西郷隆盛、勝海舟、福沢諭吉、頭山満、徳富蘇峰、夏目漱石)
    日本復興の秘訣とleadership(役割)

  2)、日本教育の真髄?
   日本の人材養成法、抜擢方法

3、日本政策創出機関(国是、国策、国民合意創出等)