「国連のあるべき未来像」
    2008年5月20日 韓国名門大学国際指導者セミナー

  伊勢挑代 国連大学初代事務局長
  
略歴:国連大学初代事務局長、国連職員訓練センター所長、財)アジアの平和のための国民基金専務理事歴任、
京都出身、慶庶義塾大学卒業。
シラキュース大学で社会学修士、コロンビア大学で修士を取得。
ニューヨーク市勤務を経て、昭和45年国連社会経済開発局に入り、同50年国連大学の設立準備に参加。国連大学事務局長、
平成2年国連本部人事研修部長、人材管理局部長、専門官部長を歴任。平成9年からアジア女性基金事務局長。

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   「国連の未来像」(講演要旨)

 主なテーマ:
 ◇近年の世界の変化について:冷戦後の状態とグローバル化
 ◇国連の位置と地域社会
 ◇国連組織の問題点
 ◇国連と日本
 ◇国連とアジア

 主な主張
1、まず,日本から世界ではなく,、世界から日本の役割を問う発想の大転換
  が重要である。

2、“平和構築"は第一歩であって、本当に国民が安心して暮らせるかと
 いうことが究極的目的
。人々が欲しているのは精神性の問題 ,"この人
 だったら正義を護ってくれる" という精神性を前に出して信頼の回復を
 していくこと、個々の宗教にこだわるのではなくて、宗教とか文明を
 理解する場が大事。

3、日本人がリーダーシップを取れない理由の一つは,
  コミュニケーションの問題

  小学校から議論をさせていない。自分の意見も言わないから、自分の
 意見が間違っていることすら判らない。いろんな意見の中で生きるすべを
 持だないので,一人勝手。内向き,自分たちの間でもあまりものを言わな
 い,こういう考え方では国際社会に飛び立っていけるような人材は育だ
 ず,ましてやリーダーシップは取れない。国連ではいろんな意見がある、
 その上で自分はこれが正しいのだということが言えないと通用しない。
 日本の内向きな考え方を直さないと国際社会には通用しない。
 日本に議長をやってもらうケースは非常に少ない。議長になるということは
 いろんな人の意見を聴く必要がある。英語は習わなくて良いという。こ
 れはとんでもない。英語を知らないと通用しないというのが現実。

4、国連内部においては職員をどう管理するか。国連ということは一匹狼。
  日本のお役所のようにみんなが支えて上に行くというのは無く,個人。
  そこでは民主的な,時には強制的な内部管理をするかという能力を若い
  人につけていかなければならない。
国連は国際公務員であり,どちらか
  偏っては,和平交渉はできない。あくまでも中立でなければならない。

5、アジアの強みは、大陸とつながっていること。日本は島国。日本は城を
 明け渡して死ぬとか,妥協をしない文化。
ヨーロッパの中で生き抜いて
 きた人々の中には激烈なものがある。日本人は本当に和平交渉をできる
 のかということを自覚しなければならない。

6、国連で日本はリーダーシップを執っているのがという事務総長の次の
 レベルになるような上組織に対して、日本人の数が非常に減った。国連
 の上級織をもっと日本人が採るべき。それには最高の人材を持ってこな
 ければならない。
必ずしも外交官,国家公務員に限らないで,広く能力が
 ある人を入れるべき。国連の現状として残念ながら,政治化してしまっ
 た。「最高の人間を国連が獲得できる」という国連憲章に戻るべきでは
 ないか。

7、若い人が外に出られない。国家戦略を立ち上げる時に来ている。官民
 一緒に考えないと、日本はどんどん遅れる。

、国連大学について

 教授、学生がいなくて,学位がでない。冷戦構造の中で,ネット革命の前
 にできた。考え方を変え、新しい解釈を加える、そういうグループを作っ
 てはどうか?研究所ではなく、もっと実践的、実地的に力を入れ、コミュ
 ニティーが使えるものを作ってほしい。国連大学を日本に持ってきた理
 由は、日本の学界は学閥があって、縦割り,これを開放的な構のつながり
 にして、優秀な方たちがもっと外に出るようにということがあったが、
 実現されていない。21世紀に役に立つ大学,市民団体,NGOに役に立つ
 大学 であって欲しい。
国連大学は、夏期講座とか、学生たちを入れて
 セミナー をやっているが、もっと地方に出て行ってやることも大事ではない
 か?国連大学憲章というものをもう一度検証することが大事。

9、従軍慰安婦問題;これはあったことだ、だから謝罪するというのが、日
 本の国として大事。北朝鮮の問題で、アジアというのが目に入っていな
 い。すべて日本中心。だから日本を一歩出るとゆがんでいる。アジアの
 中で、平和裡に生き延びるというのが難しくなる。

IO。日本への期待:世界は日本に何を期待しているかというと,思いやりと
  か,よく働く
ということ。法律は人間が作ったもの,どこか抜け道がある。
  倫理観が大変な問題。信頼よりも法律に頼った社会というのが、いかに
  問題があるかというのを政治家はきちんと判って欲しい。責任を取れ
  る社会を創らなければならない。日本としての考え方が作られていない。
  21世紀日本の倫理観を作らないと、若い人が目的を無くなってしまう

11、お互いのことを考えなければならない社会。人権は基本、人権のない
 社会はできない。人権をどう子供達に教えるかというのは,文科省の責
  任。日本のリーダーは余りにも近代国家の形成に必要なことの勉強を
 していない。日本は日本独特のものを考えていない。これは知識階級の
 大変な問題。国際的にリーダーを作る前に国内的にしっかりしたリー
 ダーを作っていかなければならない。市民が立ち上がるとき。