日本の教育の未来構想・提言2008/2/23
  

 創立7周年を迎えた未来構想戦略フォーラムの活動を通じて見えてきた日本
 の問題点、及び日本の教育の欠陥を確認し、教育に関する提言を行ないます。”

1、 日本の問題点

1)世界観の欠落

  日本の政・財界をはじめ、言論界の指導者層に世界観が欠落しているため、
国 内問題に終始し、グローバルな諸問題を“自分の問題”として考えるこ
とができない。

2)優先順位を確定する基準の未確立


 世界、国家、社会及び自分にとって何が大切であるかというプライオリティー
 ・アイデンティティーが確立されていないため、狭隘で部分的な見方に終
 始し、問題解決とための総合的見識に乏しく、戦略の構築ができない。

3)官尊民卑の思潮の残存


  後発啓蒙主義型民主主義の日本は、依然として官尊民卑の志向が強い。
 政府に任せっぱなしの官僚政治から脱却し、民間主導で行政がバック・アッ
 プする市民参加型の先進型民主主義政治に変貌すべきです。現今、最も肝
 要なことは、NGO/NPOが活躍できる社会基盤を整備することです。

2、日本の教育の欠陥

  この欠陥は、上記の問題点からも容易に抽出されます。

1)教育目標の時代錯誤


  日本の最高学府の頂点である東大を登頂したとしても、世界の頂点(ハー
  バード・ケンブリッジ等)は、はるか彼方です。今、日本に必要な人材は、
  百年以上も前の日本国家に有為の人材ではなく、世界的見識を持った国際
  社会に有為の人材です。東大第1主義、国益第1主義は、百害あって一利無
  しです。世界と付き合うためにはコミュニケーション能力の改善が国民的
  課題です。

2)技術・知識教育への偏重 

  豊かな経済活動を目標とする多量な技術・知識教育の重視だけではなく、
  文化・宗教・哲学・社会等を含めた文化的活動をより豊かにする調和の取
  れた教育が重要です。このことは、単なる知識の詰め込みにより空洞化、
  形骸化した“教養”を再生することであり、何のための国家、社会、学校、
  家庭や個人であるかの存在意義を真剣に問うことを意味します。

3)個性と自主性に対する価値観の低下

  個性や自主性を軽視する現状の日本の教育方針を改善する必要があります。
  上から下への「教」だけではなく、下からの自発的な「育」を重視し、勉
  学をする者や市民の個性や自主性を尊重し、“ニーズ”を引き出すことが
  肝要です。このような価値観は、西欧において科学技術文明の発展を促し、
  西欧が国際社会において主導的地位を確保してきた主要な要因であると云
  えます。

3、教育に関する提言

1)「国際指導者養成大学」の創設


  輝かしい日本の未来を展望するためには、世界的な視野を持った日本の
  若きリーダーの養成が必要です。このために、ハーバードやケンブリッジ
  に比肩する、アジアを代表するエリート教育機関として「国際指導者養成
  大学」の創設を提言します。創設に必要な原資としては、“貯蓄のための
  貯蓄”として眠っている、腐っている   日本国民の貯金を活かすこと
  などが考えられます。

)海外ボランテイア活動の実施

  国策として、20歳前後の若者に、2〜3年間の海外ボランテイア活動を
  実施させることを提言します。派遣方法としては、新しい意味での“国
  際貢献平和部隊”(Peace Corps)として日韓共同での派遣を提案します。 
  この方法の特徴としては、徴兵制がある韓国では、海外派遣ボランテイア
  と国内兵役の選択、日本では、3年間の海外ボランテイア経験者は、政府
  機関の管理職への優先資格の付与などの特典制度を設けることであり、優
  秀な青年がこぞって世界へ出かける機会を作ることにもつながります。   
  ODAは、物の援助から人の援助、さらには他国への教育支援へと支援内
  容の変換を図るべきです。 

  2008(平成20年)年 2月23日 東京都武蔵野市にて
      
第70回未来構想フォーラム参加者有志一同

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    教育の再生への提言 (平成18年9月17日)
  


 平成14年(2002年)に創設された本会の発足の動機は、「日本が抱える諸問
 題の根源は教育問題である」、「教育こそ日本再生の鍵である」との認識で
 した。その後、本会は教育をテーマに随時研究を重ねていますが(*注)、
 今回、5年間の研究の総決算的な意味を込めて、教育を焦点にフォーラムを
 開催し、新内閣発足に併せて、本会としての政策提言をいたします。


1、今日の教育改革の論議で、重要なポイント:

1)最大の盲点が国際的視野の欠落。


 政府レベルの教育政策議論においても、国内的問題としての議論に終始してい
 ます。「日本から世界へ」ではなく、「世界から日本へ」へと、視点のコペル
 ニクス的大転換が必須です。世界の中の日本の役割、日本の国家像を明確にし
 てこそ、あるべき教育の姿が語られるからです。

2)知情意のバランスの取れた均衡教育が必要。

 20世紀は“科学革命の世紀”と称されるほどの科学技術文明の驚異的な発展
 は、西欧文明のグローバリゼーションをもたらしました。それと共に、文明
 の基層に有るグレコ・ローマン,ジュディオ・クリスチャニティーの全面的
 な影響下におかれることとなりました。ただ、基督教と言っても、ヘレニズ
 ムの影響により歪曲化された基督教となり、米国を経ることにより、個人主
 義化されています。今日の教育危機の根底には、この西欧文明による歪曲化、
 特に米国における民主主義・個人主義の行き過ぎという文明的問題が横たわっ
 ているのです。

 宗教は、死を踏み越えた先にあるもの、死を超えた絶対的価値観の確立、安
 心立命の境地を求めるものですが、死の手前で立ち往生している形骸化した
 宗教に代わって、何がわれわれにアイデンティティーをもたらすよすがとな
 るのでしょうか? 武士道を始めとする日本の伝統的価値観は、どうでしょ
 うか?道徳の確立と共に人倫の確立を、家族レベルから国際的レベルにまで
 なすべきでしょう。自然環境との調和は如何に図れるのでしょうか? これ
 らの文明史的現代の課題を解決するには、その基底に潜む人間観を問わざる
 を得ません。

 人間は、理性的人間(ホモ・サピエンス)である以上に情操人間(ホモ・エ
 イムス)であります。感性教育の重要性、すなわち教育は時間ではなく、魂
 と魂のふれあいであり、情熱である、と言われるのも充分根拠のあることで
 す。「人々はマスコミによって宣伝されるほど利己的ではない。80%以上の
 人々は、何らか人の役に立ちたいと思っている」とのフィリップ殿下のイン
 タビュー記事が、70年代、タイム誌に掲載されたことがあります。資本主義
 経済学の基層にある個人主義、自由主義の人間観を疑ってみる必要があるで
 しょう。そして、人や自然とのつながり・共生を重視した東洋の伝統的価値
 観を、新しい視点から再評価すてみる必要があると思われます。

「教育」の文字通りに、教わることなくして、育は可能でしょうか?教育を
 education(引き出す)と訳すだけでは片手落ちで、teach(教える)の側面が、
 戦後民主主義教育を受け売りしたわが国においては軽視されてきました。米
 国においては学校教育だけが教育ではなく、宗教が社会生活の中で、今も強
 い影響力を持っていることを忘れてはなりません。経営面においても、わが
 国では、伝統的な日本的経営道が軽視されて、ゲーム感覚の西欧経営理論の
 導入が持てはやされていますが、ビジネスは生活の一部に過ぎないという、
 聖俗分離の西欧社会の特質を等閑に伏してはなりません。技術・知識を主体
 とした創造性には、個人の自主性を尊重する民主主義教育は向いています。
 しかし、道徳・規範教育には何らかの権威が必要です。この権威はどこから
 来るのでしょうか?金力、政治権力、軍事力もそれを正当化する何らかの文
 化的権威、人格力(徳、叡智、愛)を必要としています。人格力は何によっ
 て立つのか? 宇宙の根本は何なのか?尊厳なるものは尊厳なるものとの出
 会いによって保障されます。薄っぺらな生命第一主義では、洪水のごとき社
 会悪を防ぐことは出来ません。

 ここに既存の哲学、宗教、イデオロギー−超えた現代人の深刻な精神的、思
 想的課題が横たわっています。人格教育・社会人としての規範教育と技術・
 知識の専門教育との均衡(バランス)が問わる所以です。

3)行政参加社会への移行

 現代世界に圧倒的な影響力を及ぼしている科学技術力は、個性や独創性の尊
 重、自由と民主主義を生み出した西欧の合理主義、経験主義の文化的土壌で
 こそ驚異的な成長できたのである。事実や論理を無視した東洋の教条主義、
 上からの押し付けは近代化の障害物となり、西欧に遅れをとった。専門的技
 術・知識教育は「教」えることより、教えを受けるもののニードを感知し、
 その可能性を引き出す「育」の面が主体となっている。政治手法も従来の政
 府主導型から民間主導、行政参加型に変貌しつつある。人格教育、規範教育
 が「上から下へ」が主体であるに対して、専門的技術・知識教育は「下から
 上へ」対象が主体である。最も効果ある教育方法はこの双方向の補完性がキー
 ワードと言えよう。


2、教育改革のプロセス

1)新しい文明・平和の創造を教育目標に!

  伝統文化の継承、多様な固有文化と共生しながら、現代の文明的課題を
  克服する新文明の創造、グローバルな普遍的文化圏を形成。

2) 未来社会に相応しい人間像のを確立。
  愛情あふれる家庭人、善良な社会人、国際人、個性豊かな創造型人間、等。

3) 教育方法の改善


 
@、生涯教育の徹底
   「人間は、学習する動物」、学歴偏重社会から、再教育、再チャレンジがい
   つでも可能とな社会の創出。
  
 
A, 教育の場の重点移動。
    イデオロギー、知識偏重教育から、感性教育、現場実地教育(フィールド・
    エデュケーション)を重視。

 
B, 喜びと生きがいを与える教育。
   教える授業の精練化と学ぶ授業の活性化、双方向の授業、研究心を育てる
   教育へ移行(大学から大学院主体へ)優秀な学生の支援,留学生の受入れ
   体制を強化

  C, IT、教育機器の積極的導入;教育効果を高める
                                以上

      平成18年9月17日  
                    第54回未来構想フォーラム 有志
                     共同代表 大脇準一郎・新谷文夫

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   過去の教育関係フォーラム *注:

第3回「今、問われる日本革命―教育の視点からー」鈴木博雄氏 3/20/'02

第8回「人づくり,国づくり,自分づくりへ」田口定則氏,
    JICA海外青年協力隊進路相談室カウンセラー, 8/28/'02

第15回「私の教育改革論」石川佐智子女史,
    「日本再生のビジョンを語る」野田一夫(財)日本総研会長,4/16/'03

第16回「国立大学の法人化と活性化」 宮田清 東京農工大学学長 5/12/'03

第18回「市民教育から日本変革へ」森嶋伸夫 一新塾代表理事 7/18/'03

第22回「戦後民主主義教育の終焉;新しい教育の構想」鈴木博雄氏 11/15/'03

第6回「国際人材養成の課題」馬渕睦夫氏
         (財)国際開発高等教育機構 専務理事 2/9/’04

第24回「日本の技術と日本人」西澤潤一氏ほか 12/11/’03 

第29回「教育と憲法を考える」小田村四郎 前 拓殖大学総長 5/11/’04

第33回「家庭・学校教育崩壊から青少年を如何に救うか?」
           中西真彦氏 9/13/04

第34回「私の実践;青少年育成」大貫啓司 倫理法人会専任幹事
   「今求められる指導者論」鈴木博雄氏 11/09/’04

第37回「日本の未来・教育の未来」 西澤潤一氏 2/3/05

第43回「なぜ社会貢献は必要か?─人間本性の謎に迫る!」
           中西真彦氏 8/11/’05

第52回”「世界の中の日本の役割―あるべき国家像と教育改革―」
           小松昭夫氏ほか 8/30/06

第53回「教育こそ、日本再生のキーワード」山田 宏 杉並 区長,
           鈴木博雄 筑波大学名誉教授 9/17/’06

第55回「恒久平和の実現と北東アジアの役割」金 容雲,伊勢桃代,
          西原春夫氏ほか