「日本の政治・外交の次のステップ “世界の共感を呼ぶ外交理念を!」

 先日岸田外務大臣の講演を傍聴する機会を得た。日本外交方針を再認識するこ
とができ大変参考になった。ます、講演に対する小生の所感を述べます。

  日本外交の核心が「国益を守り、増進すること、次の外交ステップとしてグ
ローバルな課題に挑戦し、国際貢献を図り、国際社会に日本の存在感を増す。」
と言うのが良くわかりました。ただこれだけでは日本丸も前途多難であると思い
ます。次のステップ、国益、地球益から歴史的人類益へと進むことで必要に思わ
れます。(「日本人には時間軸が無い」山本七平氏)

  具体的には、早稲田の校歌2番にも唄うごとく、空前の物質的富をもたらし
 た西欧近代文明が行き詰まりに至った今日、東洋に受け継がれてきた精神文明
 の伝統と融合し、新しい21世紀地球文明を創造することである。それに対し
 て文明史的貢献をすることが日本の役割あり、使命である。その歴史的偉業
 こそ、日本の誇りであり、そこにこそ若者を奮い立たせるロマンがある。人類
 普遍の理念に訴えてこそ、国を越え、人種を超えて共感を呼び起すことが可能
 となる。

  憲法問題もこのような文明史的視点から取り組むべきである。
 現在の憲法は体裁としては日本国民が制定したようになっているが、占領軍が
 押し付けた憲法であることは免れない。マッカーサーは当初米国のような共和
 制を念頭に置いたよう。辛くも天皇制が残った。その文明史的意味は大きい。
 「自由・民主主義・人権」をモットーとした近代文明は、効率の良いグローバ
 ルなゲゼルシャフト社会を目指す。他方、伝統社会は、忠孝烈の集団的価値観
 を尊び、家族主義(ゲマインシャフト・生命共同体)の存続を人権より優先し
 てきた。今や個と全体がどこで調和されるのかがイスラム文明を含めて、文明的
 課題 となっている。

  岸田外務大臣は、講演の最後に外務省当局の依頼もあって、外務省外郭団体
 発行の最新号『外交』を1500人の参加者に配布した。
 その巻頭言に梅原猛氏は「自然との共生」を強調し「文明の危機に直面してい
 るとするならば、日本はその危機を克服するための原理を探求して、西欧文明
 に恩返しすべきではないか私は考えている」と結んでいる。紙面の感銘もあっ
 てか、氏は自然との共生「和」しか触れていないが、社会における「和」、人
 の心の世界における「和」についても語れば、 さらに日本文明の文明史的貢
 献の内容が説得力をもって現れるであろう。自然と言い、社会と言い心の世界
 と言い日本文明の尊ぶ「大和」(Great Haromony)に共通するのは全体の和の
 ためには所長するだけではなく、譲ることもする、自分とともに相手の立場を
 より尊重、主主体とし、すれに合せようする対象的精神である。

  既に今日のあるを知って日本文明の根底の【和の実学』の解明に取り組んで
 きた大和信春氏(“現代の吉田松陰”)の出現の時が来たように思われる。
 (和の哲学・実学研究会

  EUの成立の過程において、「ヨーロッパは一つである」との理念を唱えた文
 化人・思想家(ビクトル・ユーゴー、ロマン・ローラン、グテンホッフ・カレ
 ルギー等)の役割は大きい。また長年の怨讐を超えて独・仏の首脳が勇気ある
 決断を成したことが大きい。ヴァイゼッカー大統領の「荒れ野の40年」の演説
 にみられるように人間普遍の理念、良心に訴えるべきであろう。

  隣諸国との国際関係を改善するには、単なる小手先の対症療法に終始するの
 ではなく、未来志向の新しい発想が求められている。

(1)国家レベルでの互いの言い合いから、国家を超えて、互いに歩み寄り、共
   に生きる道。ビジョンを探ることである。

(2)互いに非難し合って、過去を穿り出しても何の進展も無い。日韓関係だけ
  とっても長い歴史を振り返れば、互いに尽くし合った時代の方が長い。
  『日韓共鳴二千年史』特にその第5章、6章には朝鮮・韓国のために尽くした
  日本人、日本のために尽くした朝鮮・韓国人の涙を禁じ得ない感動的な実話
  が多数掲載されている。

(3)隣国との関係を良くするには、EUのような共同体、AU(アジア連合)
   が必要であろう。スケールのでかい文化人の出現、勇気ある政治家の出現
   を待ち望むものである。
   そのためには、先日、ヨーロッパ評議会も元事務総長がのべていたように
   何よりも「隣国に対する信頼と尊敬」が大切で、まず塊より始めるべき
   でろう。

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岸田外務大臣の講演骨子

1)承前:
 内外情勢調査会発足60周年記念の今年、お話をさせていただくことは光栄で
 ある。2012年12月26日第143代目外務大臣に就任してから早や1年4か月、この
 間、34ヶ国訪問(安倍首相は37ヶ国)、地球を11周、この間、各国要人との個
 別会談、国際会議は280回、日本の代表として頑張ってきた。1993年、衆議院
 に初当選した頃は、バブルが弾け大変な時であった。当時は大西洋時代。20年
 後の今日はアジア太平洋時代となった。この間インドや中国、新興国の発展あっ
 た。今やサイバー空間が拡がり、海洋の自由、海洋の安定が求められる時代で
 あり、相互依存が深まっている。

2)20年後の顕著な傾向:
 (1)アラブの春 (2)ウクライナ情勢 ⇒民衆の声 インターネット力

3)外交を方針:国益を守り、増進する:
  (1)日米同盟は基軸
  (2)近隣諸国との関係 
     昨年は日本アジアン40周年、安倍首相は全加盟国を歴訪。日本で日本
アジアン会議開催。2国間外交:日露、日中、日韓難問を抱えている
(3)経済外交9つの経済レベル 経済ダイナミズムを期待
   日豪経済連携協定(EPA)締結交渉第11回会合は、4月19日から22日の
   間,キャンベラ(外務貿易省)で開催、7年ぶりに合意。EPA:

4)外交を方針:グローバルな課題に貢献し、日本の存在感を増す。
  (1)軍縮・非核散 今年4月11ー12日、広島で軍縮・不拡散イニシアティ
     ブ(NPDI)外相会議
開催。被爆国として軍縮・不拡散をアピール。 
     

  (2)防災:WCDR(国連防災世界会議)2005年1月神戸で第1回WCDR 、2015
年3月仙台で第3回WCDR開催予定。

  (3)環境問題:2015年パリでCOP21(気候変動)、2020年から発効
     
  (4)女性が輝く社会:国際社会、経済面、安倍首相が国連で表明
     日本が中心となって努力。各国の女性リーダーが集まって本年国際会
     議を準備。国際外交政策局に女性を採用決定。“積極的平和主義” 
     国家安全保障会議(NSC) 集団安全保障体制の確立 

5)近況
  (1)オバマ大統領来日 4月24日・25日
    
  (2)ウクライナ情勢:力による現状の変更が進行中。他人事では無く、
     東シナ海、アジアでも進行中。難しい問題。

  (3)外交専門誌 『外交』NO24号2014年3月号の紹介
     http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/gaikou/gaikou.html

  ※外務大臣演説:
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                       以 上
  2014年4月21日
          大脇 準一郎 拝

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