桜と和歌・俳句

世の中に 絶えて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし

「願わくば 花の下にて 春死なん その望月の如月の頃」 西行
      旧暦2月15日頃。新暦4月初旬
 いにしへのならのみやこの八重桜  けふ九重ににほひぬるかな

 ほとけには 桜の花をたてまつれ 我が後の世を 人とぶらはば

 春霞 たなびく山の 桜花 見れどもあかぬ 君にもあるかな

 山桜 霞の間より ほのかにも 見てし人こそ 恋しかりけれ


 宿りして春の山辺に寝たる夜は 夢のうちにも花ぞ散りける

 匂へどもしる人もなき桜花 ただひとり見て哀れとぞ思ふ

 あしひきの山桜花日並べてかく咲きたらばいたく恋ひめやも

    清水へ 祇園をよぎる 桜月夜 今宵逢ふ人 みなうつくしき

 春風の 花を散らすと見る夢は 覚めても胸の さわぐなりけり

 散る桜 残る桜も 散る桜  良寛

 よし野にて 桜見せふぞ 檜の木笠    芭蕉

 花の色は移りにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに   小野小町

 夕桜 あの家この家に 琴鳴りて

 桜花(さくらばな)、今ぞ盛りと、人は言へど、我れは寂しも、君としあら桜

    去年(こぞ)の春、逢へりし君に、恋ひにてし、桜の花は、迎へけらしも

 花の香を 風のたよりに たぐへてぞ うぐひすさそふ しるべにはやる

    もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし

 我が恋にくらぶの山のさくら花 まなく散るとも数はまさらじ

 桜花 散り交(か)ひ曇れ 老いらくの 来(こ)むといふなる 道まがふがに

 花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり

 高砂の 尾の上の桜 咲きにけり 外山の霞 立たずもあらなむ

     敷島の大和心を人問はば、朝日に匂ふ山桜花。   本居宣長



2016年3月31日(木)皇居・千鳥ヶ淵