大学の地球社会の貢献  

7月12日より神戸市国際会議場において、第10回世界大学総長会議(IAUP)が開催
された。今回は49カ国620人(うち海外400人)の参加者。3年に1回開催され
る同会議は本年で満30周年を迎え、日本で開催されるのは、初めてである。

 開会式には、地元兵庫県550万人を代表して貝原知事、地元大学を代表として鈴木
神戸大学長の歓迎の挨拶のほか、主催国である日本国を代表して数名の祝辞があった。
高円宮殿下は流暢な英語で21世紀へ向けての国際協力、国際教育の重要性を訴えら
れ、森山文部大臣もまた、日本国政府の文教政策、国連大学への協力の実情を驚くほど
流暢な英語でスピーチ、“国際国家日本”の面目躍如の感があった。
 

 政治家として最も大変な折、選挙を犠牲にしてこの会に駆けつけた海部前首相は「今
はただの人であるが、当選した暁には、皆さんの討議の成果を政治に生かしたい」と述
べ、さらに海部氏は先日のクリントン氏との会談に触れ、「今や1300億ドルもの貿
易黒字を抱える日本は、内需拡大と輸入を増やすことにおいて、途中経過でなく、結果
がほしい
!」とクリントン氏から強く要請されたことを披露。

 また、「日本の地球的貢献は黒字減らしのほか、今回のテーマである平和、軍縮、環
境問題があるが、今日は地球環境問題に絞って述べたい」と前置きし、「環境問題の解
決に、西洋の二元的発想に対する“東洋的共生の哲学”の導入の必要性」を訴えた。

  次いで基調講演に立った元文部事務次官の天城勲氏は、大学の本質的機能は「知識の
獲得(研究)」「知識の伝達(教育)」「知識の活用(奉仕)」の三つであるとして、
外の国際化(諸外国との連携)、内なる国際化(留学生から学ぶ)に努めるべきである
と強調した。また、国連大学のグルグリーノ・デソウザ学長が、グローバル・ネット
ワークづくりにおいて、
IAUP(世界大学総長協会)と国連大学の強調の必要性を強調、
ユネスコ傘下の国際大学協会を代表して森旦氏(元東大総長)が、同協会の活動
を報告した。

  会議は14日まで行われたが、20世紀の世紀末、東西の冷戦構造崩壊、進歩と発展
から環境破壊の進む中、地球的規模の危機の解決へ向けて大学人が、その頭脳を結集し
て、主体的に取り組む姿勢に感銘を覚えた。

  10年前、神戸は、ボートアイランド構想を進め、山を削って倉吉市規模の小都市を
現出した。そそり立つ近代的構想ビルを見ながら、人知の偉大さと、世界の碩学を集め
て謙虚に学び、さらに一大跳躍を図ろうとする神戸市の意気込みを感じた。

 情報化、国際化の進む世紀末にあって、取り残されないように鳥取の行政と教育界に
一大奮起を促したい。
(鳥取市片原町、国際企業文化研究所所長、大脇準一郎)

1993年(平成5年))8月、日本海新聞『視点』