第4香衣 世界大学総長会議(ボストン)
 説明夕食会  1975年7月28日 午後6時  学士会館


 全体的経過〉
 会は予定より十分程遅れて福田信之氏の司会で始まった。まず世話人を代表して茅誠司氏が挨拶、
「韓国が近くて遠い国であることを心配している一人」として慶煕大学校訪問の感想などをましえて
 挨拶があった。引き続いて四十五分間、趙永植総長より世界大学総長会議の歴史的背景、趣旨説明が
 行なわれた。その後、黒沢清氏の音頭で乾杯した後夕食を取りながら懇談をし、次回の世界大学総長
 会議を日本で受けるかどうかについて検討を続けることにして八時二十分に散会した。

   〈趙永植大会議長の説明要旨〉
▽科学技術を謳歌してきた現代の文明は、せっぱ詰まったところまで追いつめられている。我が韓国
でも知識、技術の優等生が落第生である例をたびたびみる。塾や予備校で先生に対して「あの野郎、
こいつ、馬鹿野郎」と呼ぶような風潮があり、このまゝ知識偏重教育を続けておれば、大学でもそう
呼ばれるような時代がすぐ来ると思う。能率主義、知識開発は人間を追放し、人間不在の非人格的な
学園をつくっている。教育に従事している教育者は、今こそ極小世界よりも極大世界を目標にして協
力し、人類社会再建のため立ち上がらなければなら々い。

▽また大学は学問や技術を伝えるだけの所ではなく、人類の行方を方向づける社会的使命を持ってい

▽日本は単なるアジアの日本ではなく、未来世界における日本の役割は大きいと思う。西洋人は全体
というものを忘れて科学化、専門化に迷わされて、それが学問であり、科学化であり、人類の行方で
あると誤解している。
 それを東洋人が諭さなければならない。その意味において日本の方にアメリカやヨーロッパなりも
もう少し高い次元で、世界をリードする歴史的な役割をしていただきたいというのが心からの望みで
ある。        

      〈懇談会の要旨〉 趙永植総長の挨拶

▽最近、小学校や中学校はともかく大学で学生が挨拶しなくなった。こちら側か呼びかけることも必
 要であろうが困った風潮である。

▽今日の社会について、日本の青年などは85%が不満。だがインドなどは15%ぐらい。
 インドはひどいところだと思うが考えさせられる。

▽技術文明と青少年問題
 大人は技術文明を手段として利用しているが、子供は技術文明のアディクトになってしまっている。

▽よりよき社会、未来社会に何か基準となり得るかが問題である。既成の秩序に反対する若者には代
 案がない。イデオロギーや宗教でもだめである。善意の生活、協力、甲斐ある生涯というようなこと
 を考えてはどうか?

▽人間として何か一番大切なのか、「紙屑は外に捨てない」という小さな事でも一生涯やれば、何か死
 ぬまでに悟る糸口となるのではないか。わかり易く述べるという習慣をつけることが必要。

▽自分の持っている可能性を十分に発揮できる社会であること。

▽3年後日本で世界大学総長会議を受けるかどうか
趙総長、国によっては会議中の食事を全部みる。今回はアメリカ州立大学連盟及び参加者より二十五
ドルずつ会費を取る。会場、準備については自分(趙総長)の友人に頼んで準備した。

▽日本でやるかどうかは各大学で検討していただき、各界にもよく根回しをし、11月ボストンの会
 議に参加した方から報告していただく。その時点でもっと具体的な話を進めてはどうか。

▽茅先生を世話人代表で、今日(7月28日)参加された先生方を検討委員とし、具体的には福田
 先生が連絡する。                                    ~
            
参加者
〈ゲスト〉趙永植(慶煕大学総長) 尹世元(慶煕大学工科学長)
〈世話人代表〉茅誠司(元東京大学総長)
〈世話人〉黒沢清(独協大学学長) 三輪知雄(筑波大学学長)

〈司会〉福田信之(筑波大学副学長)
〈参加者〉赤坂一二男(日本大学総長代理)勝田子利(神奈川大学学長)金子泰蔵(国際商科大学学長)
  坂本是忠(東京外国語大学学長) 柴田梵天(国士館大学総長) 高松和男(創価大学学長)
  若江正三(創価大学)  豊田悌助(拓殖大学学長)  中川富弥(明治大学総長)
  平川紀一(工学院大学学長代理) 山田良治(学長代理・東京経済大学経営学部長)

〔参加予定者〕(都合により欠席) 相磯和嘉(千葉大学学長) 小原哲郎(玉川大学学長)
  嘉悦康人(日本女子経済短期大学学長) 古閑義之(聖マリアンナ医科大学学長) 
  内藤誉三郎(大妻女子大学学長)             (50音順)
        
後記:なお夕食会におけるスピーチ・懇談の要約は事務局によるものであり、文責は一切事務局にあることを
    申し添えておきます。
 来たる11月11日、ボストンで開催きれる第四回世界総長会議には日本からも3~40名の参加を予想さ
れています。その報告会を12月8日開催く予定です。後程文面をもって御出欠の有無をお伺い申し上げます。
その節はよろしくお願い申し上げます。

1975年9月1日

発行人  福田信之
発行所  第四回世界大学総長会議日本事務局
     〒160東京都新宿区新宿2-8-1