改訂版まえがき
 『国際化時代と日本-十年後の国家目標』の改訂版を、この度出版する運びとなった。。誠に残念なことにへ
われわれがこの研究に取り組んだ当初予測した通り、カタストロフィーを無視して未来を語ることが出来ないこ
とを歴史は実証している。
 ソ連のアフガニスタン侵略はまぎれもない事実であるし、イランの事態は、当初一般に考えられたよりは、は
るかに深刻の度を深めている。
 これに対して、アメリカをはじめ自由圏の足並みが揃わず、韓国やわが国における政変等、自由諸国内部にお
けるカタストロフィーも続出している。
 このような中で、国際化時代に対する一般的認識が深まり、わが国の国策の基本である国防問題、エネルギー・
資源・食糧問題等の生き残りに関する国民的関心が高まってきたことは、誠に喜ばしい限りである。
 この研究プロジェクトの特徴は、従来の西欧主導型の分析主義、科学的論理実証主義の手法に偏することなく、
哲学・宗教・文化・教育との融合を考え、文明論的視点を踏まえて政策研究を行ったことである。P・D (ポリ
シー・デザイン)法は、この新しい政策研究のあり方を学際的に論ずる試みである。

これらの意味において、本研究プロジェクトは、益々多くの人々の関心を呼ぶであろうし、エポックメイキン
グの記念碑として歴史に記憶されるであろう。
 本年、われわれは初版の課題「わが国の総合国力の増強」、「大学改革への取り組み」を相続して、「八〇年代、
われわれは何を為すべきか」の共同研究プロジェクトを進行中であり、特に、「わが国の総合安全保障政策への提
言」ヽ「初等・中等教育における教科書問題」の研究を行っている。
 これらの成果は、常時行われている『学際研究シンポジウム』や、毎年開催する『学際研究会議』 TRC)
で発表されている。大きくは、来年開かれる「東西文明の出合い」をメインーテーマとする第十一回『世界平和
に関する国際会議』(ICWP)の成果を踏まえて、本書の全面的な書き直しをする予定である。
 今回は、とりあえず従来の統計資料に関する部分だけ全面的に改訂するに留めた。

   昭和五十五年十月三日(1980.10.3)
   世界平和教授アカデミー会長  松下 正寿
                
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第三版にあたって
 本書の第一版(6月15日出版)、第二版(8月1日出版)は、それぞれ1ヵ月余りで売り切れ、早くも第三版を
出版することになった。
 この間、学界、政界、官界、財界などの指導者層の方々から本書に対する感想が寄せられ、「難間中の難問ー
八〇年代生き残りの道ーに挑戦した勇気と努力にまず敬意を表したい」 (笠井章弘・政策科学研究所理事長)、
「日本の国情や日本人の特質を十二分に分析したうえに、今後十年間の進むべき道を示唆している」(松下幸之助・
松下電器産業相談役)というように本書の内容を高く評価していただいた。また、ある国会議員は、本書が展開してい
る「日本の総合安全保障政策」や「世界平和のための科学技術開発」に共鳴し、もっと詳しい講義を受けたいと
申し込んでこられた。これらの動きは、われわれの予想以上に、日本が困難な事態に直面しており、心ある各界
のリーダー達が真剣にそれに対処しようとしていることを示している。本会が今後ナショナルーゴール研究の見
直し作業を進めるなかで、これらの方々の意見を反映し、より実際的な日本のフロー・チャートに仕上げて行く
ことができれば、きわめて心強いことといえる。
 本書をご購読いただいた読者諸氏に心から感謝申し上げるとともに、今後とも積極的なご意見、ご批判をお願
いする次第である。
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まえがき

われ世界平和教授アカデミーが三年間をかけて「十年後のナショナルーゴールの設定」という大きな目標
に挑戦し、とうにかここにその研究成果を世に問うことになった。
 未来という研究対象は固定されない研究対象であり、未来を展望する際にはいろいろな要素が錯綜するために、
眺めるアングルによって一見矛盾するように見える見解も出てくることは当然であろう。われわれはできうる限
り各見解の整合に努めたが、調整の困難なものはそのまま並記することにした。
 われわれがこのナショナルーゴール研究に取り組んだ契機はいくつか挙げられるが、まず七〇年代の激動する
国際情勢の中で、日本は海図なき航海に乗り出したということであり、そこには何らかの指針が必要だという
認識である。
 国内的には防衛、教育など国家の根幹にかかわる大問題について、必ずといってよいほど国論が分裂し、その
ため多くの国民はどのような選択をしてよいか分からない状態である。
 国際的には自由圏対共産圏という図式が大きく崩れて、自由圏内の摩擦、共産圏内の覇権闘争、さらに南北問題
や発展途上国内の混乱など、非常に複雑化している。その中で日本が誤りなき進路をどう探るかということは、
民族と国家の将来を左右する重大問題である。

 これらの問題に解答を与えるためには、日本と世界の歴史を現実に深く携っている多くの専門家集団の協力が
必要であろう。さらに、各専門研究をバックにした問題解決型の共同研究、つまり学際的研究によらずしては、
海図をつくるということは不可能であろう。勿論われわれがここに描いたナショナルーゴールは現段階で到達し
た一つのドラフトで、これはまだ完成したものではない。われわれはさらに研究と経験を重ねながら、より精密
な海図を作り上げて行くべきで、これにより日本丸の安全航海のための確実な指針の作成を期待している。
 この研究プロジェクトを一応終了するにあたって最大の収穫は、学者の社会的使命に対して、世界平和教授ア
カデミー内外の二千名にも及ぶ学者の協力を得たということである。これは、学問の社会的還元という認識をも
つ学者達がナショナルーゴール研究を社会的使命と考えて積極的に協力した結果である。この事実は日本では画
期的なことであり、われわれは今後も大きな問題を解決しようとする学者の協力に自信を得たといえよう。
 また本研究を通じて、国際化という問題がいかに切実な問題であるかという認識を深めたことが挙げられる。
「日本の歴史上、かつてないほど大規模な、しかも全国的な国際化に対応しなければ、日本は生きのびることが
できないのだ」という基本認識に立って本研究は展開されている。
 本研究プロジェクトですすめた各研究部会の中でも、教育、安全保障、文明と宗教などの研究部会はとくに組
織的、インテンシブな研究がすすめられた。本研究の期間中、国際情勢の急激な変化や国内の重要な事件が相次
いで発生したが、それらはむしろわれわれの研究方針の正しさを証明するものが多かった。
 われわれはここに、明日の日本の国民的コンセンサス形成のための討議材料として、研究の一部をまとめて出
版し、国民の要望にいくらかでも応えたいと思っている。
研究の成果には未熟な点も多いので、読者諸氏の忌憚のないご批判を仰ぐ次第である。

 昭和五十四年四月十五日(1979.4.15)

世界平和教授アカデミー会長 松下 正寿