【古森義久の緯度経度】サンケイニュース 2017.12.16 08:00
「中国の尖閣攻撃」に日本の備えは?
尖閣問題について同報告書はまず中国が現状を日本側による不当な支配とみなし、軍事力を使ってでも自国領にしようとしていることが日中緊迫の
最大要因だという見解を記していた。その当面の証拠として中国海警の大型武装艦艇が4隻の艦隊を組み、毎月平均2、3回、日本側の領海や接続
水域に一方的に侵入してくる事実をあげていた。
同報告書は中国側がすでに尖閣諸島の日本側の施政権を骨抜きにしたとみなしているようだ、と述べ、その根拠として中国人民解放軍の国防
大学戦略研究所の孟祥青所長による最近の「中国側は日本が長年、主張してきた尖閣諸島の統治の実権をすでに奪った」という見解を示していた。
同報告書はさらに尖閣への中国のこの軍事がらみの攻勢が米中全面衝突にまでエスカレートする潜在的な危険をも強調していた。だが同報告書は
中国が日本から尖閣を物理的、軍事的に奪う作戦を少なくとも3種類、実際に立案しているとして、その内容を米海軍第7艦隊の諜報情報部長を務め
たジェームズ・ファネル大佐らの証言として発表していた。その骨子は次のようだった。
▽第一は「海洋法規の執行作戦」と呼べる中国海警主体の尖閣上陸である。この方法は中国海警が尖閣を自国領とみなしての巡視や陸地接近を
拡大し続け、日本の海上保安庁巡視船を消耗戦で疲弊させ、隙を突き、軍事攻撃ではなく視察や監視という形で上陸する。
中国側は近くに海軍部隊を配備させておくが、あくまで戦闘は避ける姿勢をみせ、尖閣諸島に中国側としての公共施設などを建て始める。日本側は
その時点で中国のその行動を許して、尖閣を放棄するか、軍事的行動でその動きを阻止するか、という重大な選択を迫られる。
▽第二は「軍事演習の偽装作戦」である。第一の方法が成功しなかった場合の作戦で、中国軍は尖閣近くで中国海警を含めて大規模な陸海空の
合同演習を実施し、日米側にはあくまで演習と思わせ、その意表をついて一気に尖閣に奇襲をかけて占拠する。実態は「短期の鋭利な戦争」とする。
▽第三は「水陸両用の正面上陸作戦」である。台湾侵攻のような正面からの尖閣上陸作戦で、中国軍は尖閣規模の離島への上陸用舟艇も、
空挺作戦用の戦略的空輸能力も、ヘリでの急襲能力もみな十分に保持している。その総合戦力を正面から投入し、尖閣の完全占領を図る。
日米両国部隊との正面衝突も辞さない。
中国側には以上のような準備があるというのだ。では日本側にはどんな準備があるのだろうか。(ワシントン駐在客員特派員)