1974.9.28
元立教大学総長 前参議院議員 PWPA会長 松下正寿
希望と確信に輝いております世界平和教授アカデミーの初代会長という聖職をやることになりまして、
皆様のご推挙に対して心から感謝申し上げ、私として、微力ながら、全力を尽くしてまいる次第で
ございます。とともに、ひたすら各位各先生方の御助力、御協力、御鞭撻をお願いする次第でございます。
私、ごく簡単に私のアカデミーに対する考え方を述べまして、挨拶に代えたいと思います。
このアカデミーは読んで字の如く、学者の会でありまして、政治家やあるいは実業家とは書いていない
のであります。各自の客観性においてなのかわかりませんが、本質的には専ら学問をする会、これが
教授アカデミーの特徴であります。学者というものは、もちろんどこまでも真理を探究しなければならない。
真理の探究のみが我々の責任、任務でございます。ところでこのことはわかりきったことではありますが、
ただ真理探究には、いろいろな方法があるわけで、自分の研究室において万巻の書を読破することも、
又実験室において実験に没頭することももちろんですが、それのみが真理探究ではないのであります。
さらに真理の探究が、自分の義務である以上は、真理と対するところの虚偽と闘うということが我々に
課せられた非常に大きな義務であります。学問に従事する者は、真理探究という事は申しますが、
虚偽と闘うということについては、ややもすれば怠りがちなきらいがないともいえません。
世界平和教授アカデミーはまず第一に、真理探究をかかげます。同時に虚偽と闘うという堅い決意、
若干の危険をおかしてまでも闘うという決意をもってこの会が設立されたことは御存知だと思います。
今日のように、世界が一種危機的状態に直面いたしますと、偽予言者や偽学者が現れてくる。しかも
偽予言者、偽学者は単なる今までの我々の観念における迷信ではなくして、あたかも本当の学問で
あるかの如く、また本当の科学であるかの如き理想を提示して、我々にそれを信奉することを要求して
おります。これは実に恐ろしいことで、従来の迷信以上にこれを警戒し、また断固としてこれを粉砕する
勇気と覚悟が必要だと存じます。
第二に私どもは、同じく真理探究と大いに関係がございますが、今まで我々が強調してきました学問は、
専ら、東洋に関する学問でございますけれども、主として、西欧で発生した学問を学問と考えてまいりました。
近代文明というものは何といっても、西欧から発生したものでありまして、東洋はこれを学んだわけであります。
従って、我々の頭を支配するものは、我々が意識するとしないとにかかわらず、多少なりとも皆西欧的になって
おるわけで、これはさしつかえないし、当然であると思いますが、同時にまた、この際我々が深く反省しなければ
ならないことは、これのみが唯一の学問であるというような錯覚を伝授すれば、我々は誤りをおかすことになる。
私はそこに西欧文明の母体といいましょうか、この西洋的合理主義というものが、次第に行き詰っている時に、
あらたな目で東洋というものをもう一度よく反省し、振り返ってみる必要があるのでは。むろん西欧をすっかり
忘れ去って、なんら価値のないものとして葬り去って、復古的に東洋に帰るというような、そういう迷妄に陥って
いるわけではございません。我々には既に西欧文化という立派なものが入っているわけで、その上に更に
新しい立場から、我々自身を振り返ってみる。従来でも、東西文化の融合という言葉はよく使われておりました
けれど、それは言葉だけであって、実際は西欧が中心であり、東洋の我々は、いわばアシスタントとしておった
ような恰好であります。この際我々はそういう、いわばきれい事を捨てて、ハッキリと東洋にあるものは何であるか、
具体的には儒教なり仏教なり、あるいは神道なり、その他我々のもっておった深い文化というものはどういうものか
をよく振り返り、そのうちに、我々が見失っていたところの新しい価値というものを再発見してゆく、これが私どもの
これから主となる真理探究の方法であり、我々に課せられているところの大きな責務であります。
幸いにして、我々には既に、大韓民国におきまして、我々と同じような使命を持った団体が結集されております。
又、中華民国におきましても、同じような動きがございます。我々はここに大きな希望と確信をもって、大韓民国の
我々の同志、及び中華民国におけるところの既にある、もしくはこれから現れつつある同志と協力して、そしてこの
虚偽と闘うということと、新たなる文化、本当の意味における東西文化の融合ということについて邁進し、更に世界的
に広めてゆきたいと、かようなことを考えておる次第でございます。この貴重な開会の時におきまして、私が考えて
おりますことを若干申し述べまして、私の御挨拶といたし、今後何かと各位のご協力を賜りたいと思います。
筑波大学副学長 福田信之
アジアの問題を日本と結びつけるという意味で、実はこの前、台湾に行った時にも意見を出したのですが、
当面は日韓華の政府レベルで協力させてアジアの連帯をつくる、強化する、というだけの目的ではありませんが、
アジア文化センターをつくって、若い指導者を養成する。それでそれは、人間的にも連帯感を持ち、協同の仕事が
出来るような雰囲気をつくってゆくというようなものを創ったらどうかと思うわけです。
で、今の日本の国立大学でそういうことに協力できる大学はどこにもないでしょう。筑波大学はそういうつもりで、
日本のためにつくしたいと、筑波大学としてもいろいろな格好で協力できると思うんです。アジアの若い青年たちを
呼んできて、そして留学させる、そういうセンターをつくりたい。それから教授団も日本の学生も一緒に住まわせて、
共に学び共に研修を重ねる、そういうセンターをつくって、日・韓・華だけである必要はないでしょう。フィリピンも、
ベトナムも、タイも来ていいと、なんかそういうような交流をこの会議がpushする。そういういろいろなものがある
かも知れないが、どうもあまり役に立つものがなさそうで、本当に役に立つものをつくらなくちゃならん。日本の問題、
あるいは韓国の、中華民国の問題、その他アジア地区の問題のまさに真相を掘り下げてゆくと同時に、も少し具体的
な接触も重要じゃないかと思うわけです。
参与祝辞
世界経済調査会理事長 木内 信胤
この新しい趣旨文を読んで感激し、これならいいなあと思ってやって来ました。私は、今回の趣旨文と以前の趣旨文とは
大変な違いだと思うんです。実は、新しい方の趣旨文を拝見しなければ、私は、今日ここに来なかったかもしれないのです。
「世界平和」結構であります。「福祉のため」と書いてあります。しかし「平和、平和」「福祉、福祉」といっているのが、
現在の禍根であります。そういう点で、この改訂案ならば、思い切ったことができそうだと感じます。月並みな平和・福祉、
にならないでいただきたいのです。同時に平等という言葉にメスを入れていかなければいけない。悪平等ということが
あります。とともに、世の中によき不平等というものがあります。このよき不平等を目指すことができなければ、到底、
現在の問題を救えないと思うんです。そんなことも改訂案の中には、おのずから、脈々として裏にあるように感じます。
そんなことが私の諸見です。大変、かたいことを申しますが、お祝いするならば、こういうことも申さなければと思い
まして、思うままに申し上げました。
金山正英 元韓国大使
総合研究所中国研究部長 桑原 寿二
突然の御指命に何と言っていいかわかりませんが、先程、松下会長の新しい価値観の創造、ある一線を突破する
一つの契機とするという大変立派な良い言葉でございました。さような点を、今日の創立記念日の出発点といたし
まして、その方向に向かって進んでゆくことをお願いする次第でございます。このような会を通じて、日韓華、学者間
の有機的な連帯関係の輪を一年一年拡大してゆくという所に、今一つの意義がありますし、又、本会の重要な仕事で
はないかと思いますし、また、尾に附しまして、私の出来る限りの努力はしたいと考えております。以上、感想の一端
を述べまして、祝詞にかえたいと思います。