日本再建の国家戦略
 2002.7.25、2003.3.11、11.28,12.11、2004.1.7,2019.8.13編集。Word形式印刷用

 共同研究:NPO法人未来構想戦略フォーラム(編集)
         ビジョン21世紀の会
(基本情報提供)
         日本国家戦略研究所
(基本情報提供)

            ~~~ はじめに ~~~~

 小泉総理は、強い信念を持って数々のタブーに挑戦しておられ、その決断と
実行力は高く評価されてよいと思う。しかし、山積みする内政外交上の難題を
処理するには、まだ幾多の困難が予想される。
 この提言は、平成12年(2000年)5月27日に阿部正寿氏が“止むに止まれぬ”
憂国の情に駆られて、新任の森喜朗総理大臣宛、エルサレムからインターネッ
トを通して提言した内容を骨格として作成したものである。私が、阿部氏から
当時との原案を見せられた時、かつて80年代やった国家戦略の研究成果も参
考にして欲しいと思い、その旨提案したところ、快諾していだだいた。そこで
昭和58年(1983年)2月、当時の中曽根内閣に提言された『80年代ビジョン
の会』(注1)の提言を阿部氏の提言を軸に補足し、内容の充実を試みた。両
提言の内容の融合、編集に当たっては、現時点に合うように多少加筆した。そ
の際は、原文になるべく忠実に行ったつもりであるが、不足な点はご叱責を賜
りたい。
 編集しながら痛感したことであるが、ビジョンの会が提言した課題は、ほとん
ど現時点でも通じる課題である。しばし日本を離れていた小生は、ここ、10年
余、“日本丸は漂流し続けている”ことを改めて知り、愕然とした。
日本は今や「戦後の総決算」をすべき転機であり、同時に明治維新以来の近代
文明を超克すべき文明史的大転換期に直面している。21世紀世界とわが国が求
める、新しいビジョンの創造は容易なことではない。
 しかし、小泉内閣が、現在直面しているこの歴史的な難局を勇気を持って乗り
切れば、21世紀日本の軌道を正しく敷設しうるであろう。 選択すべき道に誤
りなきを期待し、総理はじめ政府・与党および関係者に、以下を提言したい。

 この提言が、最近、元気の無い日本に活力を与え、憂国の士と共に希望あふ
れる21世紀新生日本のビジョンを創造の契機となれば幸いである。なおこの提
言は、未来構想戦略フォーラムの参加者の合意の得たものではなく、メンバー
への問題提起の提言であり、今後のフォーラムで追加・改定されることが期待
される。
 日本再建は他界された諸氏の遺志でもあると思い、敢えて公表する次第である。
    各位の忌憚のないご意見を賜れば幸いである。

  2002年7月8日 大脇準一郎
 (NPO法人未来構想戦略フォーラム 代表・ビジョン21世紀の会・初代事務局長)

注1)代表、福田信之筑波大学長、80年代、わが国をめぐる国内外の重要課
題をテーマに取り上げ、広く各分野の学者・研究者を網羅して研究を積み重ね、
その成果を世に問うてきた政策研究グループ、後『ビジョン21世紀の会』と
改名)注2)付記;ビジョン21世の会の主な提言者・協力者(順不同)
天城勲、石井公一郎、斉藤進六、竹村健一、渡部昇一、林修三、奥野誠亮、森
山欽司、日下公人、草柳泰蔵、法眼晋作、中島正樹、末次一郎、小田晋、森清、
森房夫、小田晋、中川秀恭、川野重任、黒羽亮一、大河原良雄、佐々淳行、木
田宏、鈴木博雄、他80名
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
                      序 文

 日本の再生が叫ばれて久しい。書店に行けば、日本崩壊を予言する本や日本
再興を呼びかける書籍が店頭に山積されている。また、経済不況に関して多く
の専門家達が様々な意見を述べているが、どれも決定的なものが出ていない。
しかし一つだけはっきりしている事がある。それは、経済不況は経済自体が原
因ではないということである。
 日本には世界一と言われる豊富な資金があり、人材も技術もあり、世界から見
れば羨ましいかぎりであるのに、日本自体は不況で苦しんでいる。何かが間違っ
ているとしか思えない。私の見解では、日本が国家として行くべき方向がはっ
きり定まっていないということから来るものである。すなわち、国家目標やビ
ジョンがないということから生じる現象だということである。
 それはあたかも資産も能力もある人が、目標が無く、何をして良いか分からず
毎日悶々として悩んでいるのと似ている。彼に必要なのは明確な目標だけなの
である。目標さえはっきりしていれば、彼はひたすら歩めば良いのである。
 現在の日本に欠けているのは、国家目標であり、明確なビジョンなのである。
私が自分の無知と未熟を省みず、恥じを忍んで止むに止まれぬ気持ちでこの文
を表した理由は、今の時を逃しては総てが遅きに失するのを恐れたからである。
 2000年の新千年紀は人類歴史の大転換期であり、日本にとつても転換のチャ
ンスである。単なる官僚の作文は、この際、百害あって一利なきものと信ずる。
私が浅学のみを以って敢えてこの一文を呈するのは、いささかでも参考の一つ
としていただければ幸いと念ずるからである。自ら省みて、総合性と体系化に
欠けると感じるので、その点は専門家に委ねたいと思います。ご勘案の上、ご
一読下されば感謝です。
       2000年5月27日       
           日本国家戦略研究所代表   阿部正寿

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前編;総論
1.日本の国家目標 “世界の為の日本”...5
 1)新しい価値観の定立と新文明の創造 ...5
 2)恒久平和と理想世界実現 .........5
 3)全人類的課題への挑戦と克服 .........5
2.世界と日本の課題 .........6
 1)グローバルな課題 .........6
 2)日本の課題 .........8
3.国家戦略の構築 ..........11
 1)国家目標達成のための条件 ..........11
 2)日本の主な国家原則 ..........12
 3)国力の諸要素 ..........13
 4.日本の国家総合戦略の展開 ..........14

後編:個別戦略の展開
 1、政治力の構築:外交戦略 ..........17
 2、平和の戦略の確立と防衛 ..........26
 3、行・財政改革・構造改革 ...........20
 4、強固な経済力の確立 ...........24
 5、科学技術力の創出 ...........30
 6、 世界平和のための文教戦略..........30
 7、「国民意識の改善」と「情報戦略」...34
結語、「日本総合戦略研究機構」設立の提唱.35

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1.日本の国家目標 “世界の為の日本”

わが国は、今や、明治維新以来の国家目標、“日本のため”を“世界のための
日本”という国家目標に転換すべきである。この国際貢献国家日本を可能にす
る逞しい日本の創ることに努めるべきである。すなわち日本の国家目標は世界
平和への貢献、活力ある日本の創造の全体と個の二重目的といえる。各地域・
地方自治体・諸団体・家庭から個人に至るまで全体(社会性)と個(個別性)
の連体の連鎖の輪であり、この全体性を無視した個、個の存続を保証で出来な
い全体も永続することは不可能である。国家の存立要素は、国の存立意義、独
立主権・国土の三つである。日本の国家ビジョン・目標を構想するに当たり、
留意すべき点は次の三項目である。

1)新しい価値観の定立と新文明の創造
 国の存立意義とは、国の権威、国が寄って立つ価値観、文化・教育、を意味
する。日本人の元気の無さは、歴史的伝統との断絶に起因する。文明史の中に
日本文明の役割、位置づけをし、説得力ある形で、世界に自信を持って誇りう
る新しい価値観を提示すべきである。

2)恒久平和と理想世界の実現
国の独立主権とは、国家権力、政治力・軍事力・治安能力を意味する。しば
しば、見解の相違が暴力沙汰に発展するごとく、上記の価値観の相違は、武
力紛争にエスカレートしやすい。戦争の諸原因(価値観の相克、貧富の差・
・・)を探求し、核戦略時代の日本の選択、軍事と非軍事分野とのバランス
の取れた世界平和のための総合戦略を確立し、このための国内基盤造成図る
べきである。

3)全人類的課題への挑戦と克服
国土とは、広義の意味に最低生活の保障し、安逸で快適、豊かな生活を目指
すものである。経済・産業・医療分野を含んでいる。 最低生活の保障され
ていない世界の多数の人々をどう救済するのか?永続する地球環境を如何に
守ることができるか?等、グローバルな課題の解決に向け、ソルーションモ
デル(非軍事的平和の戦略)を描く。世界を援助できる逞しい経済・産業の
振興に努め、理想的な未来社会モデルの創造に挑戦する。

*今、日本に求められているのは、世界のために貢献できる元気な日本を国家
目標に、上記の三つの政策、文化・教育戦略・政治・防衛戦略、経済・産業
・技術戦略を総合した国家戦略の確立である。

2.世界と日本の課題

 上記の国家目標を具体的に実現する為に日本が取り組むべき課題は、現在人
類が直面している問題に日本が国家を挙げて挑戦することである。そのための
戦後日本の総決算、未来への整備が必須である。

1)グローバルな課題
A, 第1群;①文化・道徳の退廃、青少年問題②家庭・社会倫理の崩壊、③
教育の危機、④文化摩擦・宗教対立、

B,第2群;①、戦争、紛争・難民②、核問題 ③、国際テロ、麻薬 ④、不
況、貿易摩擦⑤、南北問題、発展途上国累積債務、⑥、東西問題 ⑦、マス
コミ、⑧、国際システムのあり方(国際システム・ブロック化)

C,第3群;①、地球環境破壊(大気汚染・温暖化・砂漠化)、 ②、資源・
エネルギー危機(石油・原発・新エネルギーの開発) ③、食料危機・飢餓
④、人口(途上国の人口増大と先進国の少子化、高齢化)⑤、保健・衛生
(感染症) ⑥、自然災害(地震・水害・火災) ⑦、科学技術の発達と価値
の問題

*全人類的緊急課題として10項目を挙げる。
1、家庭・社会の崩壊・モラルの低下(第1群―①)
 如何に国が強大で繁栄していても、家庭が崩壊し、モラルが低下すれば、国
家は内部から崩壊する。最近顕著な青少年の道徳心の低下の徴は未来への危険
信号である。

2、文化・教育の危機(第1群―③,④)
1)一神教と多神教、文明の対決と対話、現代の諸問題を克服する生きた思
想の構築
2)教育改革・教育理念の見直し
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3.戦争・地域紛争・内乱等の防止と難民保護(第2群―①)
現在、地球上の何処かで戦争や紛争がない時がないと言うほど、武力衝突の
絶え間がない。その度に何万、何十万という避難民が作り出されている。日
本も戦争や紛争の防止・治安維持、避難民の保護、生活安定に協力する必要
がある。国際貢献に障害となっている国内法は速やかに改正すべきである。

4、核兵器、その他の大量破壊兵器の廃絶に努める(第2群―②)
  今日では、超大国間の大量破壊兵器による世界大戦の危機は遠のいたとは
言え、核を含む大量破壊兵器の途上国への拡散は、大量破壊の危険性を増大
している。日本は唯一の被爆国として、核武装能力を有しながらも敢えて核
武装していない国家として、核兵器とその他の大量破壊兵器廃絶のイニシァ
ティブをとるべきである。このためには核に対する見解を国是として定める
必要がある。

5、犯罪・暴力・テロリズム等の防止、 麻薬等の根絶(第2群-③)
  世界各国とも犯罪、暴力、テロ等が繁殖して大きな社会不安を引き起こし
ている。またロシア等の旧ソ連圏においては経済マフィアの暗躍により国家経
済は破綻に瀕している。インターネット時代に突入し、サイバー・テロによっ
て引き起こされる被害が社会に及ぼすインパクトは計り知れない。サイバー・
テロの防止には高度の技術力を持たなければ対処できない。日本もその技術を
蓄積しておかなくてはならない。アヘン、ヘロイン、マリファナ等の麻薬が多
くの人々を心身ともに蝕んでおり、特に青少年への被害は甚大である。何とし
ても麻薬の根絶に努力すべきであり、特に日本は、最大限の努力をするべきで
あると考える。麻薬生産国における代替作物への転作援助、治安能力の向上、
麻薬常習者の更正への支援に積極的に努力すべきである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6、南北経済格差の解消と技術の平準化(第2群―⑤)
  現在の世界の最大の問題は、南北の経済格差が大きいだけでなく、それが
ますます拡大傾向にあるということである。その大きな原因の一つは、科学技
術の開発力の差にある。科学技術は国境を超えて移転可能であるが、いくらコ
ンピューターを持って行っても、それを根づかせるだけの資本・インフラやマー
ケットがなければ、結局、切り花的に終わってしまう。要は、その根本にある
教育を充実させる以外にない。

7、地球環境破壊問題(第3群―①)
  大気汚染による地球温暖化、世界的な気候の変調、熱帯雨林帯の急激な減
少、砂漠の拡大、環境ホルモン被害の拡大、ダイオキシンの拡散、産業廃棄物
の処理等問題は山積している。地球生態系と敵対する経済産業体系の行く過ぎ
を改めるため、永続する地球環境保護に日本はイニシャティブを執り、全世界
的な協力を促進すべきである。

8、飢餓・食糧の問題(第3群―①)
  エチオピア、ソマリア、スーダン、北朝鮮その他、現在全世界で飢餓に瀕
している人々の数は、毎日2万人以上が飢餓で死に、飢餓人口は8億人。飢
餓問題は焦眉の急である。この問題が解決しないかぎり、平和の実現もあり
得ない。

9、疾病問題の解決(第3群―⑥)
 今日人類は、なお多くの疾病に悩やまされている。エイズ、マラリヤ、結核、
ガン、その他の不治の病、風土病,その他いまだ原因不明の疾病等で多くの人
々が苦しんでいる。これらの解決のため、日本は人と資金を投入して人類に
貢献すべきだと考える。

10、自然災害の防止(第3群-⑤)
 洪水、干害、地震、火山噴火、地すべり、竜巻、津波等ありとあらゆる災害
が常に地球上の何処かで局地的に或いは大規模に起きており、人命と財産の
被害は莫大なものがある。これらの予防と防止さらには復旧のために世界的
規模の努力と援助が必要であり、日本は資金と技術を提供して、そのイニシャ
ティブをとるべきである。

勿論、これ以外にも課題はあるが、とりあえずは上記の10項目を今日の人類
が当面する重点課題であると見なし、これらの問題の解決に挑戦し克服する
ことを日本の国家戦略として掲げるべきである。
このような全人類的課題は日本一国で解決出来るものではなく、世界の主要
国家の支持と協力が不可欠である。日本が出来ることは、これを国是として
取り組み、世界平和のイニシャティブを取り、責任をもつことである。必ず
や世界各国からの支持を受け、日本は天運に乗って繁栄するようになるであ
ろう。後編で述べるように、大学(国連大学等)がその橋頭堡となりイニシャ
ティブを取りことを薦める。

2)日本の課題
 日本は、第2次大戦後、占領政策により国力の解体を余儀なくされ、新憲法
発布により、国軍の解体、大和魂の弱体化としての教育政策、軍閥・財閥解
体、農n地解放された。戦後の日本において、軍閥・財閥の解体、農地の解放
は、経済の自由化、活性化をもたらし、経済的には成功を収めたが、歴代の
政権は、政権の当面の政局の安定を優先し、国家の基本問題である独立(主
権)、存立の意義(国家理念・価値観)即ち、国防と教育に関する基本問題
の解決を先送りして来た。この基本姿勢が不明瞭であることが、日本衰退の
大きな要因として顕在化して来ている。経済基盤の再編成と共に、今こそ、
勇気を持って、日本人として世界に誇りうる国のかたちを憲法改正、教育基
本法改定等を通じ示すべきである。

*日本課題を列挙する。(検討中)
1、 外交・国際協力 2、 教育改革,文化・思想問題、3、家庭・社会のモ
ラルの復興(青少年、官僚・企業家・政治家モラルの低下) 4、憲法・防衛
問題 4、構造改革,財政再建、金融界改革 5、経済の活性化(工業界の更
なる飛躍と農業界・医療界の改革) 6、IT国家戦略 7、少子化・高齢化
問題 8、都市と地域問題 

3.国家戦略の構築
1)国家目標達成のための条件
 如何に国家目標を掲げても、それを達成するための条件が整わなければ、絵
に描いた餅に終わるしかない。では、そのための条件とは何か?下記にそれ
を述べる。
(1)この国家目標実現のための価値観が大多数の国民に受け入れられ、強力
な支持が得られること。
(2)国民の支持が国家社会を動かすことの出来る組織を形成し、行動力を有
するようになること。
(3)この価値観に基づいて国家目標を達成するために、憲法を始め、法体系
を改正できるようにする。新法体系に基づき政治全般の大改革を行うこと。
(4)政治改革の次には、行政組織の整理・改革を実施しければならない。現
在、行政改革が進行中であるが、これは国家目標が不明なままに行われて
いるので再整理が必要である。
(5)国民意識の変革がなければ、如何なる改革も成功しない。国民に対して
「これ以外に日本の行くべき道はない」ということを不断に啓蒙し、教育
に努めなければならない。
(6)日本の国内の改革であったとしても、今日では関連する諸国家の理解と
支持がなければ成功しない。そのためには、日本の国家目標が当該国の利
益に反するものではなく、むしろそれらの諸国と世界の利益のためである
ことを納得せしめるよう努めなければならない。地球村的視野から日本の
役割を見極め、国際社会に貢献していく日本の姿勢を積極的にPRすること
が肝要である。
以上の条件を満たすことは、理論を説くより、何倍も難しいことである
が、これが満たされない限り何事も成就しない。特に国民の理解を得るこ
とが何より重要不可欠と考える次第である。ここにおいてマスコミ、政治
家、オピニオン・リーダー、NPO/NGOの役割が大きい。

2)日本の主な国家原則
 国家戦略とは、国家目標を実現するために国際間の諸問題をどのように解決
していくかという政策(政略)であり、しかもそれは政治・外交、軍事、経済、
思想・文化など、国家の全機能を発揮する総合的方策と考えられている。国家
目標が定まっても、戦略がなければ理想は実現に向かって進まない。戦略とは
二階に登るための梯子のようなものである。 『世界の為の日本』が日本の目
標であるが、日本はこの他に、この目標を達成するために日本は世界に先駆け
てこの使命を果たす『先導国家』としての側面、日本は世界の諸国家を助ける
という母親のような『母性国家』としての役割を果たして行く道を選ぶべきで
あり、わが国はこのような歴史的使命を歴史的に担っているものと考える。
日本の戦略としては次の諸点が挙げられる。
(1)自由民主主義と立憲君主制という枠組みを維持する。
(2)『世界の為の日本』という価値観を基本として価値体系を形成する。
(3)国際協力によって全人類的課題の克服に努める
(4)人類的課題を克服する過程において、日本は先導的役割を担う国家を
目指す。
(5)国益と世界益は対立するものと見なされてきたが、世界益を国益と見
なすことにより、この矛盾を解決することが出来る。
(6)日本は『母性国家』としての世界的役割を担い、特に途上国への物心両
面の援助に努力する。
(7)日本の国家的使命を達成するためには、それを可能にする国力と国際社
会の中でしかるべき位置を確立しなければならない。
(8)日本は軍事大国を目指さないが、日米協力を軸に、自国の経済力や科学
技術力を活用して世界の平和と繁栄に貢献するよう努める。

3)国力の諸要素

国家戦略を遂行するに当たっては、それを可能ならしめる政策がなければなら
ないが、その国家的使命を果たすためには、それに相応しい戦略遂行能力・国
力がなければならない。病人を助ける医者は健康でなければならないのと同様
である。国力を構成する要素は人口、国土、天然資源、人的資源(教育力)等
も含め、いろいろ考えられるが、ここでは次の5つの要素を取り上げる。

①政治力、②経済力、③軍事力、④科学力、⑤文化力
健全な国家は、この五つの力がバランスしていなくてはならない。日本は経済
力と科学力においては、世界でも有数の位置を占めているが、政治力と軍事力
において世界的に見て極めて貧弱であることが指摘されている。政治力と軍事
力における劣勢は、日本が敗戦国家であるという特殊な事情の故に、敢えて努
力しなかった結果である。文化も重要な国力の要素である。日本これからこの
分野にもっと努力しなくてはならない。この五つの力がバランスしていなけれ
ば、国家としての力を発揮できないし、世界からも相手にされなくなる。日本
はこれから政治力と軍事力の発展に努力するとともに、文化力の強化にも努め
なければならない。
次に参考として世界主要国の比較を示すが、これはあくまで主観的な評価に基
づくもので、科学的根拠はない。(韓・台等を含めた学術的試表は別記)

 力の要素 日 米 独 仏 英 露 中
①政治力 3 10 3 6 5 5 5
② 経済力 10 10 5 4 3 1 2
③ 軍事力 2 10 3 4 4 5 3
④ 科学力 10 10 5 4 4 3 2
⑤ 文化力 6 8 5 7 6 4 4
合 計 31 48 21 25 22 18 16

4、日本の国家総合戦略の展開

≪基本認識≫■戦後を総決算する「第三の選択」
 現在は、「講和条約の締結」「日米安保条約の締結」に次ぐ、戦後の「第三
の選択」の時である。わが国は、戦後から今日まで、敗戦後遺症から脱け出す
ことができず、「防衛問題」「憲法問題」「教育問題」などを長くタブー視し
てきた。暦代の内閣は、日本の戦後史に一つの決着をつけるべき重大な課題を
背負っていたにも関わらず、決断を先送りにして来た。そのため、国家の存亡
に関わる重要な問題が、十分討議されないまま放置されている。政府と国民は、
国内外の現実を直視し、勇気を持ってタブーに挑戦し、国家のあり方を根本的
に問い直すべきときである。
また、同時に、大きくは明治維新、第2次大戦の戦後処理に次ぐ、日本近代史、
「第三の選択」、文明史的大転換期の時でもある。今日、世界各国の相互依存
が極めて高く、しかも日本に対する国際社会から期待が大きいため、わが国が
どう選択するかは、自国の存亡を決するだけでなく、世界全体の運命にも大き
く影響する。そこで「第三の選択」として、選択すべき五つの観点について以
下に述べる。

1)戦後のタブーへの挑戦と国家ビジョンを創造 
 第一は、敗戦後遺症からの脱却し、世界文明史に名誉ある位置を占めるべく、
“新しい日本の国のかたち”を創造することである。 独立した一つの「主権
国家」として、「世界の中の日本」として、国家および国民のあり方を、如何
なるタブーにもとらわれることなく、また野党やマスコミの批判を恐れること
なく、自由に討論を展開し、既存の体制を抜本的に見直すべきである。2000年
代を「21世紀の創世期」として位置づけ、国際視野と将来展望に基づいて、
数百年を見越した長期,30年前後の中期、5~10年の短期総合計画を立案するこ
とである。そうすれば、与野党や官僚や業界間にコンセンサスがつくりやすく、
その目標のもとに結集する道が開かれる。官・民を超えて、大胆な構想や雄大
なロマンなるビジョンを期待したい。
*既にビジョンの会は、1983年、2月、80年代を「21世紀への準備期、戦後
の総清算期」としてこの提言をなした。

2)西側陣営の一員、アジアの一員としての自覚を強め、応分の責任を果たすこと
 第二は、冷戦の終焉後の世界情勢において、超大国米国の相対的地位の向上、
ロシアの低迷、中国の台頭、北鮮の軍事拡張、およびイスラム急進派の台頭に
注目すべきであろう。 日本は西側陣営の一員として、米・韓・欧と歩調を共
にし、経済・防衛等の分野において、応分の国際的責任を果たすことが願われ
ている。その責任を履行できなければ、わが国は国際的に孤立し、今日の平和
と繁栄は崩壊するであろう。また、EUが誕生に見られるように、世界は一国
主義から地域共同体制化(ブロック化)の傾向にある。日本もアジアの一員と
して自らの足場を強化すべきである。

3)長期的展望に立ち、世界平和の環境づくりに積極的に貢献すること
 第三は、文明史的に見て、日本の役割が増大している。
 今日まで歴史を主導してきた欧米諸国は、失業や先進国病に悩み、脆弱性を
あらわにしている。また軍事力の均衡の下、世界各地での紛争やテロは、依
然留まるところを知らず、緊張が激化している。
 国の独立、主権維持のための基本的防衛力は必要であるが、わが国の特徴を
生かして、持てるマンパワー(経済力、技術力・文化力等)をバーゲニング
パワーとし、世界平和の環境づくりに積極的に貢献し、世界平和のリーダー
シップを発揮するよう努力すべきである。
 すなわち、先進国に対しては、産業協力をもって経済・社会の活性化に協力
し、途上国に対しては、「人づくり」による「国づくり」に協力・貢献する
ことである。またこのことは、わが国の安全保障にとっても不可欠である。
このため特に、海外協力省の設置、世界の徴兵制に代わるボランティア制度
の国策導入・教育の大改革を提言する。
テロと大量殺戮兵器の結びつきが懸念される昨今、父親的、欧米の軍事力中
心主義に対し、母親的非軍事的・平和へのアプローチの重要性が増している。
 わが国は、単なる過去への復古や対欧米追従や社会主義圏追従に終わるこ
となく、未来世界へ向かって、日本人が万民と共に目指すべきグローバルな
ビジョンと諸目標を確立に努めるべきである。その中から、日本の歴史的伝
統と連続した、日本人が世界に誇りうる新しい価値観も生れてくるであろう。

4)活力ある社会の創造に向け、構造改革・行財政改革を断行すること
第四は、わが国の構造改革・行財政改革、および社会基盤強化の問題である。
低価格の石油に支えられた高度成長時代が終わり、肥大化した財政支出の歪
みが、今日の財政破綻をもたらしている。赤字公債依存度を低め、健全な財
政の再建が緊急課題となっている。 また構造・行政改革に関しては、行政
の守備範囲を見直すことによって、民間に移譲できる分野は移譲し、民間の
活力を引き出す方向に行政事務の効率化を図るべきである。
 わが国は、欧米に比較してはるかに速いスピードで少子化・高齢化社会に向
かっており、社会のあり方、福祉のあり方を根本的に見直す必要に迫られて
いる。活力あるわが国独自の福祉社会の創造が望まれる。 今日、内政と外
政とが密接に錯綜しているため、両者を分離して考えることはできない。構
造改革・行財政改革は、国際的見地に立って断行する必要がある。また、各
省庁や官僚の延命策や保身の術中にはまらぬよう、大所・高所から決断を図
るべきである。

5)総理のリーダーシップと国内外の理解が肝要である 
 まず何よりも総理のリーダーシップが要求される。歴代の総理はコンセンサ
スを重視してきたが、戦後史の大変革という課題を担う現内閣においては、
総理の強力なリーダーシップなくして、その実行は不可能である。何よりも
政治的決断と実行の内閣を望む。その為の構造改革はなされるべきである。
 次に、大切なことは、国民の理解と支持をいかにとりつけるかである。構
造改革・防衛など、重要施策の実現のために、総理を初め主要閣僚・政策ブ
レーンが、テレビを通じて率直に訴えることである。またわが国とって何が
重要なのか、その選択肢を国民にわかりやすく説明することを公僕たる政治
家・公器たるメディアの良識ある対応を期待したい。
ここで留意すべきは、貿易摩擦や靖国問題・防衛問題など、誤解を招くこと
のないよう、欧米やアジアの近隣諸国に対する海外広報を重視すること。特
に日本が自由圏と共通の価値観、認識に立っていることを明確にする必要が
ある。
要するに、従来の「日本のための日本」から「世界の中の日本」さらには、
「世界の為の日本」へと認識を改め、それに相応しい平和の戦略を展開し
いくことである。
以上の総論を踏まえ、次に個別政策について、基本的かつ具体的な提言を展
開する。
☆     ☆     ☆

後編:個別戦略の展開

1、政治力の構築:外交戦略
 国家目標を達成する上において、全人類的課題に挑戦するにしても日本一国
で果たすことは不可能であり、世界の主要国家と協力することは絶対的要件で
ある。日本としてやるべきことは、そのためのイニシャティブを取ることであ
り、そのために必要な応分の資金を提供し、必要な人材を出すことである。従っ
て外交方針も「国連中心主義」などという漠然としたものでなく、国家目標遂
行のための独自の外交方針を打ち出すべきである。そのために、全世界を12
の国ないしブロックに分けて、優先順位をつけ外交を行うべきだと考える。順
位は下記の通りである。
 ①アメリカ合衆国、カナダ
 ②ヨーロッパ連合、東欧諸国
 ③韓国、北朝鮮
 ④中華人民共和国、中華民国
 ⑤ロシア連邦、モンゴル共和国
 ⑥アセアン諸国
 ⑦中近東諸国
 ⑧インド亜大陸(インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、ネパー
  ル、ブータン、モルディブ)
 ⑨オセアニア(太平洋の島嶼国家群を含む)
 ⑩中央アジア諸国
 ⑪中南米諸国
 ⑫アフリカ諸国(サハラ以北のイスラム教諸国を除く)
  
1)米国との協調外交を基本路線とする
 日本は基本的には独自の外交路線を保持するが、現在、世界唯一の超大国で
あるアメリカと対立すれば如何なる外交も成就し得ないという現実に鑑み、
対米協調を優先しなければならない。自由由世界は互いに連動しており、
「運命共同体」である。日本は、「自由」を擁護するという西側の共通の価
値観の上に立っていることを明確にし、自由圏の一員として、防衛・経済・
技術・教育・文化等で応分の役割を果たす。

2)近隣外交によるリージョナル・パワーとしての位置確立
 日米基軸と共に、アジアを離れて日本の進むべき道はない。アジア近隣諸国、
とりわけ日韓は「運命共同体」であるから、相互の近密化をより一層図るべ
きである。(韓国やアセアン諸国は、日本は米国にばかり向いていて、自分た
ちを第二義的に扱っていると考えている。)日本が世界的使命を遂行してゆ
くには、近隣諸国 との信頼と支持がなければ多くの支障が生じる。しかし、
現実的にはこれらの諸国との関係が一番難しいのである。すなわち韓国、北
朝鮮、中国・台湾との関係である。これら諸国との過去の清算を早急に終え、
近隣諸国との友好・親善に努め国家使命達成の基盤を造る必要がある。

3)日本の外交政策、アジアでは日韓を基軸にする。
①、韓半島の安全は、日本を含む東アジアの安全にとって最重要である。それ
故、日本は自由世界を守るという世界戦略の一環として、韓国の安全保障の
為に、経済協力すべきである。西側の共通課題は、共産圏やイスラム急進派
などの脅威をなくし、自由と平和と安全を確保することにある。西側が足並
みを乱せば、戦略的敵国の思うツボである。日本は日米協調を基軸に自由圏
の結束に努力し、アジア諸国に対しては日韓を基軸に協力・貢献すべきであ
る。
②、日本は韓国、アセアンと「自由と民主主義」という共通の理念を確認し、
相互に緊密な協力関係を維持発展させること。アジア諸国の中には、わが国
の防衛力増強の動きやシーレーン防衛論議に対し、それを日本民族主義への
回帰と捉え、増強された軍事力の矛先が再び自国に向けられるのではないか
と危惧する動きがある。相互に理解を深めれば、誤解は解消される.
③、日韓両国間の相互理解を深めるため、教育・文化交流を進める。
 今日の韓国の指導者層は、「反日教育」を手段にして国家意識が形成され
ており、またアメリカで教育を受けた人が多いため、日韓の実情に詳しくな
い。また日本人にも依然として韓国人に対する歴史的偏見がある。政府や学
者による日韓交流を進め、相互理解を深めること。
・日韓両国の歴史や民族を紹介した映画を共同で製作し、公開する。
・英語は思考のフレームが西欧的であり、アジア人の情緒を伝達出来ない。
・日韓両国は日本語と韓国語で通じることができるよう、日本においては韓国
語の教育を重視する。  
④、アジアとの共生を!
・価値観を共有する韓国・台湾との共生基盤(東アジア経済共同体・経済開発
機構・国家連合)を確立し、両国との協調の下で北鮮・中国と協調する。卑
屈なチャイナロビー・北鮮外交を清算し、道義に基づく外交を展開すべきで
ある。日華条約に留意し、台湾外交を重視する。
・西洋的価値観とアジア的価値観の融合、世界が目指す新しい価値観をアジア
の歴史的伝統の中から、近隣諸国と共に創造していくこと。

5)親日諸国との重視
 世界には伝統的に親日国家が存在する。日本が世界での有力な位置を占める
ためには、これらの親日諸国との友好と連携を深めることが重要である。OD
Aの特別取分等の配慮が必要であろう。そのため何らかの機構を構築する必要
がある。
〔例〕友好諸国連合
   台湾、モンゴル、タイ、ビルマ、インドネシア、マレーシア、バングラデシュ、
   スリランカ、ネパール、トルコ、イスラエル、フィンランド、ハンガリー、
   ポーランド、ドイツ、オーストリア

6)対ロ・中・北鮮関係
①、たとえば、「ロシアはいかなる国か」についての基本認識を明確にすること。
・9.11以降、ロシアの西側への接近をさらに強めている。 この変化と共にロ
シア人は極めて長期的展望に立ち、忍耐心が強く、執拗に目的達成に向けて
努力する。国内の経済不振と軍備拡張のジレンマから方向転換しつつある。
③、わが国が米・欧・韓と歩調を揃え、毅然とした態度で中国・北鮮・ロシア
に臨み、国民の意思を固めることは、それらの国の道義的立場を弱め、対日
工作の変更を迫ることになる。中国への外交戦略の一環として中華民国(台
湾)の存在を再検討する。
④、日ロ間の懸案の一つは、北方領土問題である。北方領土は日本固有の領土
であり、日ロ間の未解決の外交案件であることをわが国も、執拗にロシアに
繰り返し訴えることが重要である。当面の目標としては、北方領土からのロ
シアの撤退、1976年以来拒否されている墓参復活、田中・ブレジネフ会談の
再認識である。

5)日本の国連外交のあり方
 国連中心主義の見直、国連改革を通して日本の影響力を高めるように努める。

6)国連常任理事国入りの達成と新しい国際機構の創設
日本の国連分担金は、2000年には20.573%になり、最高の米国の25%に
次ぐ分担金である。それに対して中国は拒否権を持つ常任理事国であるにも
係わらず、僅か2.5%で日本の10分の1しか負担していない。世界的使命を完
遂するためにも国連常任理事国入りは果たすべきである。 戦後第2次大戦後
の連合国側に有利で敗戦国に不利な敵国条項を改める。第2国連創設をも睨
んだ大胆な国連改革に取り組むべきである。

7)海外協力省の設置・世界平和戦略の展開
たて割行政の弊害を補うため国際協力担当局を一本化し、統合調整すること。
外交・防衛を含めた総合的な国際協力のあり方を、長期的展望に立って計画
・調整・決定するシステムが望ましい。
*1980年代ビジョンの会は海外協力省(国際協力省)の提言をした。
日本は日本の経済力・技術力・マンパワー(人材)、文化交流を他国の人づ
くり、国づくりに投入し、貢献する。このことは同時に、わが国にとっての
安全保障環境の造成につながる。
日本人は、伝統的に外交が下手である。今まで多くの失敗を重ねてきた。国
際社会に生きて行く以上、外交は必須の要件である。しかし、現在のような
国益よりは省益・私益を優先する外務官僚を増やすのは、税金のムダ使いで
あるので、もっと民間からの外交官登用を推進し、ODAの見直し、NGO、N
PO、民間の知恵を活用すべきである。

8)国連及び国際機関に日本人幹部の登用を推進
日本は分担金の大きさに比べて国連や国際機関(IMF、WTO等)での日本
人登用が極めて少ない。重要な部署は欧米諸国が独占している。日本は、アジ
ア地域の代表として、もっと日本人を幹部または職員として登用するよう働き
かけなければならない。 日本人が難しい場合には、中国人や韓国人を推薦す
べきであろう。

2、世界平和の戦略の確立と防衛
将来は軍事力の必要ない世界の実現をしなければならないが、しかし現実に
は、力のバランスのうえに存在している以上、当面、軍事力は国家目標の遂
行上、必要不可欠な要素である。日本は軍事国家になる必要はないが、軍事
力が弱い場合、国家使命遂行上支障をきたすことが多い。軍事国家と言う場
合、国民の生活や福祉を犠牲にして国家の目的を軍事力で遂行しょうとする
国家をいう。北朝鮮、中国、イラク等がこれに当たる。 米国は世界最強の
軍事力を保有しているが、国民は自由と人権を保障され、高い生活水準と福
祉を享受しているので、誰も米国を軍事大国と非難する者はいない。故に日
本が国力に相応しい軍事力を保有することは軍事国家になることを意味しな
い。現行憲法は軍事力の保有を否定しているために、国力にふさわしい軍事
力の保持とその行使に、著しい障害となっている。わが国の国家戦略の確立
には、国家存立のバックボーンたる防衛政策の確立のために、先ず国民的合
意を得て、速やかに憲法を改正する必要がある。

1)国家戦略を確立する。
日本は、米・韓等と共通の認識に立ち、自由圏全体の生き残りという観点か
ら、わが国独自の国家平和戦略を構築すること。
 ①、集団安全保障体制の強化
  核戦略下、ゲリラ戦、テロの増加に対して集団完全保障・国際協力は重要
である。諸外国との軍事協力を推進する。平時から軍事協力を行うことによっ
て、戦争の抑止に資することができる。アメリカとの軍事協力は当然のことと
して、その他の主要国や友好諸国とは必要に応じて軍人の派遣、軍事訓練、武
器供給、兵器の共同開発等を積極的に行う必要がある。これらの行為は現在の
法のもとでは出来ないが、本当に平和を望むのであればそこまでしなければ平
和実現など絵に描いた餅である。

②、核攻撃を防禦できるミサイル網を構築する必要がある。
米国か日本に参加を呼びかけているTMD(戦域弾道ミサイル防衛) に積
極的に協力すべきである。しかし、資金だけ提供して技術はブラックボック
スで製品だけを買わされるのは御免蒙りたい。参加するなら初期段階の設計
から加わり、製造も日本で分担しなければならない。効果を疑問視する者も
多いが、技術を習得・開発できるメリットは大きい。 
*日本は『専守防衛』をもって方針としており、他国から侵略された時は、自
衛隊が初期防戦し、後は米国の支援を待つという戦略をとっている。これを
通常戦では、自力で侵略軍を撃退できる戦力を保持する方針に転換すべきで
ある。

④、日米防衛協力は基本問題
 a) 自由圏の安全保障のために経済援助をもって貢献することにより、日米
間の防衛における「非相互主義(片務性)」を漸次是正する。
パキスタン、アフガン・トルコ、中東、アフリカへの戦略的視点での経済
協力が効果的である。
 b)、日米安保条約を堅持する。隣国の核恫喝に対しては、非核三原則を修
正して、米国の核搭載艦の寄港を認める。
c)、日米共同技術開発(ソフト、ハードの両面)を積極的に推進する。こ
れは費用も安く、日米双方の防衛力強化に大きく貢献する。文科省と防衛
庁の協力のタブーの壁を打破する。特に大学における軍事研究、
d)、日米防衛協力指針に基づく共同作戦計画のあり方を、事務レベルでキ
メ細かく詰めておくこと。日米合同演習に対する米国側の評価は高い。積
極的に回を重ねることは、隊員の士気の高揚、練度の向上につながり、ま
た日米両軍の連携を容易にする。これと並行して、日米間の幹部の人事交
流を活発にすること。

2)法的整備を図り、有事即応性を高める。
自衛隊法を改正し、自衛隊の有事即応性の強化を図るとともに、電波法、道
路交通法等関連法規との調整、機密保護法等必要法規の制定等、各種有事法
制の整備を急ぐ。
① 法律を整備して自衛隊の海外派遣を自由化するべきである。
現在、地球上の何処かで常に局地的紛争が起こっている。その紛争地に自衛
隊をPKF(平和維持軍) として派遣できるよう、法の整備を急ぐべきで
ある。日本が真剣に世界の平和を希求するなら、これくらいのコミットメン
トは必要である。軍事力は両刀の剣である。正しく使うことによって平和を
確立に寄与できる。“良く切れる包丁は、人を殺すことも出来るので、なく
せ”と言う者は愚か者であるが、悲しいことに日本にはこの手の良心家が多
い。
海外に派兵して戦争の抑止に努めるのは世界平和実現のための重要な貢献で
ある。現在の国連のPKFの場合は、国連が経費を負担しており、多くの途
上国からの派兵は資金稼ぎの感が強い。日本が自費で派兵すれば世界から歓
迎されよう。また自衛隊としても実地教育になる。 勿論生命を危険にさら
すことになるがそれを恐れるようであるなら、始めから自衛隊に入るべきで
はないのである。
②、シーレーン防衛は、また海洋国家であるわが国にとって死活問題である。
マラッカ海峡等、海洋集団安保体制を敷くこと。
③、有事即応性の強化
脅威の発生源に対する探知能力と打撃力を高めるため、防空能力と対潜能
力の向上に努める。また継戦能力の向上に努める。正面装備の他に、弾薬
類の備蓄、輸送能力、燃料補給などの後方支援の取り組みを強化する。

3)防衛計画の見直しに着手する。
①、日本の安全と平和を確保するためには、防衛費のGNP1パーセントの
枠にこだわることはない。
②、 武器輸出三原則を廃止するべき
これほど愚かしい原則は見たことがない。三木内閣の時の閣議決定であっ
て、正式に国会の議決を経たものでもないので、閣議で廃止できる。これ
ほどの自己満足的な原則はない。日本が供給しなくても、兵器を輸出した
い国はごまんとあるので、それらの国を喜ばせているだけである。“兵器
を輸出したから戦争が起こる”などという幼稚な理論に呪縛されるほど愚
かしいことはない。戦争をするためではなく抑止するための目的の方が大
きい。日本は兵器輸出を自由化することによって兵器の量産化が可能にな
り、高い国産兵器の単価を引き下げることができる。それは税金の節約に
なり、国民の税負担を減らすことができる。日本の優秀なハイテク兵器を
買いたいという外国も多いのに真にバカげたことである。我々は深く議論
もされていない無知な過去の呪縛から解放されなければならない。

4)日本独自の情勢判断能力を高める。
現在は情報戦の時代である。日本は強大な軍事力を保有できない以上、情報
戦能力を高度化しなければならない。そのためには、国家の統合情報機関の
創設、自衛隊の陸・海・空総合情報機関の設置、および情報活動専門家の育
成、各省庁の情報機能を強化すること。さらに偵察衛星の打上げや通信網の
整備により、軍事情報・科学情報収集・処理能力・情報戦力の飛躍的向上に
努める。

5)シビリアン・コントロールの意味の誤用を糺し、制服組の士気の高揚を図る。
①、防衛庁長官には、実力者を抜擢し、一つの責務が完了するまで、人事を
頻繁に変えるべきでない。(日米間の相互理解にマイナス)
②、首相は統幕議長と三幕僚長から防衛に関する説明や意見を不断に受ける
システムにする。また優秀な制服組から首相秘書官を登用する。
③、自衛隊に軍としての法的裏付けを与え、平時より三自衛隊の任務表を明
確にし、権限を与える。統幕議長には陸・海・空を指揮する権限を与える。
④、シビリアン・コントロールとは、市民から選ばれた人が主管する意味で、
内局の制服組管理を意味するのでは無い。誤用を撤廃すべきである。

6)国防研究開発を強化すべきである。
小兵力で大軍に打ち勝つためには敵より優れたハイテク兵器を保有しなけ
ればならない。日本はハイテク兵器の開発のためにもっと研究開発予算を
増加しなければならない。予算の飛躍的増大と共に重要なのは優秀な研究
者の確保である。自衛隊の中だけで確保できない場合、国立研究機関や大
学等と協力して開発する体制を築く必要がある。

7)日米協力を強化する。
①、日米関係は最重要課題でありながら、ホワイトハウスや議会とわが国を
結ぶパイプが非常に弱い。日米間に信頼できる太いパイプが必要。そのた
めには、ワシントンと日本に民間の「日米共同総合戦略研究機構」を創設す
ることである。
②、議員外交を活発にする他に、学者・文化人の民間外交を促進すること。
何故なら、米国では大学や研究機関の社会的評価が高く、学者の政治に与
える力が大きいからである。
③、日米両国首脳、あるいは政権政党の幹事長と上院院内総務のテレビ討論(
NHKと米国側TV局との宇宙中継)を開催し、米国一般国民にも理解を求
める。                          
8)総理・政府は日本の安全保障に対するリーダーシップを発揮し、国民の
防衛意識高揚に努めること。
①、総理は勇気を持つこと。
②、あらゆる機会(特にテレビ)を通して、防衛に関する現実的認識を国民
に啓蒙すること。
③、公正なマスコミの報道、教育の正常化。

(9)≪憲法問題≫
①憲法改正実現のためには国家の指導者である内閣総理大臣と政権与党であ
る自民党は常にこれを主張・啓蒙し、世論形成に努力するべきである。
②事態が緊迫してからこれを議論するのでは、十分バランスの取れた議論が
成り立ち難く、反って危険である。現在から自由な議論を展開しておく事
が重要である。
③国家戦略の観点から、総理の下に、各省庁を超えた内閣機能の強化、海外
協力省の設置、防衛庁を国防省の昇格等の国家戦略、総合安全保障政策の
効率的推進を可能にする環境を作る必要がある。
④憲法改正実現迄の間における我が国防衛及び国際貢献のための活動に際し
て自衛隊の行動を適切に行うために、「集団的自衛権」及び「武力の行使」
についての現行の憲法解釈を変更し、同盟国及び関係諸外国と協調した行
動を可能にする必要がある。

3、国家目標完遂のための行・財政改革・構造改革
現在、政府の行政改革・構造改革が進行中であるが、数合わせのための行
政改革では意味がない。何のための行革・構造改革なのか、その目的が不
明確である。これまでの行革を国家目標遂行に適合するように再編成しな
ければならない。行政官庁は国家的使命の完遂と国民の安寧福祉のため存
在するのであって省庁や官僚自体の安寧のために在るのではない。国家の
公僕という本然の立場に帰らなければならない。行革・構造改革に当たっ
てはたとえば、次ぎの諸点が考慮されるべきである。
①内閣総理大臣の職務権限を強化する。各省大臣に当該官庁の人事権を付与
する。
②国家公安委員会のような曖昧な組織を廃止して、担当大臣に指揮権を付与
する。
③官僚による国会答弁を廃止する。官吏登用制度の抜本的改革を行う。省庁
間の人事の流動性を高める。
④防衛庁の内局における文官支配をやめて、武官の登用を自由化する。シビ
リアン・コントロールとは文官による武官の支配ではなく、選挙で選ばれ
た政治家による軍事力の支配のことである。

≪行政改革≫
1)行政改革には、(イ)新時代に適応する行政システムの構築と、(ロ)
不当に膨張した部門削減の二通りある。後者は直接、財政再建に結びつく。
   今日の時代に適合しない組織や制度に対しては、中期的な具体案を国民
に明示し、その事業費を大幅に削減する。人件費はそのままにして、不必
要な事業費を大幅に削減すれば、有能な人材はその間に転職することがで
きるし、退職金や労働争議なしに、古い組織や制度の体質改善を図ること
ができる。許認可などの事務は減らす。補助金を思い切って整理し、合理
化する。
2)行革は長期的展望、国際的視野に立って固い決意で実行すること。年次
計画を明確にし、監視機関を設ける。行政改革と財政再建は10年ぐらい
の長期的政策であるのに対し、景気対策は短期の1、2年の問題である。
このままでは、ますます景気沈帯、歳入欠陥の悪循環に陥り、失業率も一
層悪化する。また低成長下では行革も実行不可能となるばかりでなく、国
際経済に大きな影響を与える。行革・財政再建と並行して不況対策を行う
べきである。
3)行政改革と景気対策は矛盾するものではなく、むしろ相互補完の関係に
ある。行革は財政支出の質的改善である。それに対して不況対策は、与件
の中で適正な景気を維持する政策であり、財政収入の量的適正化を図るこ
とである。財政の健全化は、財政支出の質的改善と、財政収入の量的適正
化の、質量両面の改善によって、初めて可能となる。
4)郵政・道路公団等の分割民営化を実現する。
何もかも一挙に根本的な改革を実施しようとしてもむずかしい。一つ一つ
着実に実行に移すこと。競争原理を導入し、分割民営化を進める。
5)地方出先機関の統廃合を実行に移す。
これは地道であるが、人員の削除効果が大きいし、国民に与える心理的効
果も少なくない。
6)国民は、自分のことは自分で責任を持つという意識の変革が望まれる。
すなわち、社会に自己責任体制を明確に導入すること。
日本では事故が起きると、まず政府の責任にしてしまう。それで役人側も
穴をつくらないように法律を増やさざるを得ない。そのため行政事務が増
え、公務員の数が増えた。役に立たない法律はないが、それを必要とする
か否かは価値観の問題である。国民の意識変革が望まれる。
7)地方自治体制の改革
現行の都道府県制と3000自治体は明らかに限界にきている。これを打破
して地方自治体の財政自立と自由裁量権をも付与して、発展を企てる。
そのため8道州制と300自治体の体制を構築する。
  8道州とは次の通りである。
①.北海道  ②.東北州 ③.関東州 ④.中部州 ⑤.近畿州 
⑥.中四国州 ⑦.九州  ⑧.西南諸国州(沖縄諸島)
 8)日本への移民政策の推進
   少子化に伴い、労働力の補填は必須の課題となる。このため、日本は複
   合民族への対応が課題となり、複合文化国家を目指す必要がある。

 ≪財政再建≫
(1)中長期的には、財政構造を改造すること。
  低価格石油時代・高度成長期に膨張した財政支出規模を徹底的に圧縮する
  とともに、効率的な行政府の実現をめざし、財政構造の改造によって財政
  危機を乗りきる。
(2)防衛費と経済協力費は、日本が今日の国際化時代において、自由世界の
  中で孤立的存在にならないための総合安全保障費である。別枠化を図る。
(3)高齢化・小子化社会に備え、過剰福祉を改める。給付と負担の調整に関
  する具体的措置が望まれる。日本は、欧米の四倍近いスピードで高齢化・
  小子化社会に突入しており、高福祉・高負担では民間の活力が失われ、先
  義務教育の国庫負担率を下げる。教科書無償制は廃止する。労働省、厚生
  省の公的年金の一元化を図る。
(4)間接税の重視、土地税制の根本的改革を図る。
  直間比率を改め、間接税による増徴を図る。だだし、全体的には国民の租
  税負担率を軽減すること。サラリーマンの重税感や不公平感を緩和するこ
  と。相続税の引き下げ、寄付行為の規制緩和

≪景気対策≫
1)大幅の所得税減税を実施する。
 不況の最大原因は、消費の長期低迷にある。消費が増大しない限り、企業の
 在庫投資も設備投資も増加する可能性はない。
 内需振興を図るため、大幅の所得税減税(約2兆円)を即刻実施すること。
2)即効性のある公共事業投資を行なう。
 既存工事の早期繰り上げ、学校・病院等の建設、情報通信関係施設の増強、
 住宅投資、科学技術博覧会関係の社会資本(道路、鉄道、新交通システム等)
 への投資がよい。新規の用地取得を伴うものは時間がかかりすぎる。
3)中小企業に対する設備投資減税を行なう。
 中小企業の不況感は極めて深刻であり、合理化・近代化のための設備投資を
 必要としている。投資減税措置を構ずること。
4)世界をリードする産業育成に投資する。
 エレクトロニクス、生命工学的産業、海洋産業、宇宙産業、および農業技術等。
5)世界景気のサイクルを盛り上げる(長期的発想のもとで景気対策を行なう。
 「世界の中の日本、世界の為の日本」という意識をもって、世界経済の再活
  性化に貢献する。経済協力や人づくり協力を通じて、途上国の成長率を 
  引き上げ、市場の拡大を図る。特に、東アジアやアセアンは非常に大きな
  潜在的成長力を持っている。6)積極政策のための財源について
①、財源の捻出については、行革による徹底的な財政支出削減の実行を中心
にし、なお不足する分に関して、当面は、所得税減税に対しては赤字国債
で、公共事業追加に対しては建設国債の発行によってまかなう。
②、現在発行されている赤字国債は、財政収支不均衡に対する後始末国債
(尻ぬぐい国債)であって、国民経済に対して何ら積極的な効果を発揮し
ない。発行不可避の後始末国債の一部を、積極的効果をもつ景気対策国債
に切り換えることが必要である。
③、積極国債は、次の二つの効果をもつ。一つは景気の改善にともなって租
税の自然増収をもたらす。第二は、景気改善による所得増の一部は貯蓄増
を促し、赤字国債の市中消化資金増となって、赤字国債によるインフレを
抑制する。
④、現在の状況から判断して、積極政策が直接の原因となって、直ちにイン
フレが生じたり、国際収支が悪化することはない。

4、強固な経済力の確立
1)強力な産業経済力の確立に努める
 現時点では日本は世界第二の経済大国であることに変わりはないが、今の状
態が継続すれば、やがては中国に追い越され、その位置は低下してゆくことは
避けられない。国際競争力比較においても、かつてはアメリカと並んで1、2
位を争っていたのに現在は30位に落ちている。今、手を打たないと後悔の臍
を噛むことになろう。いま余力があるうちに抜本的改革に着手すべきである。
そうしなければ世界貢献どころか、世界から救済されるようになろう。いや、
日本救済など誰もしてくれないだろう。

2)経済活動のグローバル・スタンダード化を徹底させる
 経済産業活動の総ての分野にグローバル・スタンダードを導入して世界をリー
ドする積極果敢な政策をとる。欧米諸国によって定められたグローバル・ス
タンダ-ドを受け入れるのではなく、日本がこれを作るようにならなければ
ならない。多くの商品分野においてデファクト・スタンダード(事実上の標
準規格)を確立するように努める。
 日本が劇的に市場を開放しても、日米間の貿易不均衡が是正されないことを
米国側は熟知している。だだ、その努力の証詞として、今一日も早く、可能
な限り の品目に関する市場開放を一般米国民に印象的に行なうことである。
立場が強いときこそ一歩先んじて自由化することが、自由貿易を維持する秘
訣である。市場開放に伴って損害を被る国内産業に関しては、中・長期的政
策として政府がこれを保証する旨を宣言するとともに、国際競争力を強める
よう行政指導を行なうこと。

3)世界一の情報大国を目指す
現在はアメリカが世界一の情報大国であることに異論はないが、これから携
帯電話でインターネットとつなぐ時代になると日本が優位にあるので、これ
が逆転するチャンスが来る。日本はこれを機に経済のソフト化とIT大国を
目指すべきである。

4)世界最大の資産の活用を計る
現在、日本には14,00兆円の個人資産と、30,000~50,000兆円といわれてい
る公共資産があり、在外資産も68兆円、外貨も30兆円等、膨大な資産が
あるが、これが活用されていない。かなりの部分がアメリカを助けるために
使われている。この資産は世界人類の救済のために使わなければならない。
そのために、これを活用できる人材の養成と機関の設立を図るべきである。

5)日本独自の経済政策の確立
経済はボーダーレスであるとは言え、各国は国家意志に基づいた経済政策を
遂行することは当然のことである。日本はこれまで対米追従の政策をとり、
アメリカ経済に多大な貢献をしてきたが、その割には、米国民は何も知らさ
れていない。日本は世界人類の発展に貢献する国家目標を遂行するための独
自の経済政策を確立すべきである。たとえば、資本、技術の提携を促進し、
現地生産を行なうことによって、欧米諸国の失業対策に貢献するとか、韓国
・台湾・中国・アセアンとの思い切った共存共栄のグランドデザインを描く
べきである。

6)円を世界の基軸通貨の一つにする、個人投資家の増大を図る。
  円をドル、ユーロと並ぶ世界の三大通貨の一つにする必要がある。そのた
めには強い円の維持に努力し、円による貿易決済を拡大し、各国が円で外貨
を保有し易いようにしなければならない。財政政策も日本だけを考えるので
はなく、常に世界を念頭において行わなければならない。「庶民を株式市場
に如何に参加させるか」が問われている。
起業、設備投資の資金は証券市場を通じて調達する、という資本主義本来の
姿に変わるべき時はとっくに来ており、ナスダツク等、ベンチヤ―の為の市
場も整備され、商業銀行の多くは、その社会的使命を終えようとしている。
特にIT時代に入り、ATMの整備により、支店の多くは無用となり、顧客
の為に支店が必要と言うなら午後3時には営業をやめてしまうような事業が
生き残れるわけがない。株式市場を活性化する為には14,000兆円と言われる
個人の金融資産の参加が不可欠である。我が国の株式取引の1日当たりの出
来高は、1兆円に満たない。1割の140兆円が参入するだけでも如何に大
きな影響がある。
個人投資家を食い物にした証券会社、個人株主を冷遇して来た株主、個人的
な株式投資の経験者が少なく、税制を始めとする有効な政策を立案・実行し
得えなった政府財務担当者の猛省を促したい。
未だ証券会社自身の改革に期待は出来ないが、幸いにしてIT時代、ネット
取引、とりわけてi―モ―ドの携帯により、証券マンの悪影響を排除した、
しかも格段に安全かつ効果的な投資が可能になっている。企業については、
取引単位を百株にするなどかなりの改革が認められる。税制調査会や諮問会
議も個人投資家優遇策として分離課税廃止を提案しているが、個人や証券会
社にとっても不可能、結果的に脱税するか株式市場から脱出するかの選択を
迫られている。個人投資家セミナ―の講師も殆どが個人としての経験は持た
ぬ機関投資家のアナリストかフアンドマネジヤ―の空論で終わっている。

(7)新千年紀に相応しい社会基盤の構築
  少子・高齢化社会に相応しい国土の再整備と再配置が必要と思われる。そ
のために次の五項目を指針とする。
①、自然と調和した美しく豊かな国土の建設
②、高度に組織化された陸・海・空の交通組織体系の確立
③、革新的な情報通信網の整備(情報ハイウエイの構築)
④、国土・海洋の高度利用と都市の再開発の推進
⑤、自然災害の防止と国土の科学的な管理の施行

5、科学技術力の創出
科学技術政策の推進が重要となる。日本の科学技術力とマンパワー(人材)
をバーゲニングパワーとして用い、先進国の再活性化と途上国の国づくりの
ために貢献する。これは日本の平和戦略展開に決定的な役割を果たすことに
なるであろう。
日本を除くどの先進工業国も、採算の合わない軍事技術の開発を行なってい
るが、結果的にはそれが民間技術発展の源泉となっている。日本としては、
人類の未来のため、平和利用としての科学技術開発に多額の先行投資を行な
うべきである。

1)巨大技術、先端技術の開発に力を入れる。
欧米各国との技術開発の協調体制を強化し、世界に活力を与える。そのため
には、エネルギー、原子力開発、生命工学、ヒトゲノム解読、光通信、宇宙
開発、航空技術、新材料、人工知能、等々に関する技術開発に力を注ぐ。民
間ではやれない研究は、国家プロジェクトして推進する。現実的には既に多
くプロジェクトが進行している。しかし問題はチャレンジ精神に欠けた官僚
的体質である。最近、宇宙開発事業団がH-2型ロケットの打ち上げに失敗
して、尾羽うち枯らしているが、如何なる開発も100%成功を保証されては
いない。失敗はつきものである。原因をよく見極めて次の失敗をしないよう
にすれば良いのである。
2)途上国のための科学技術政策を積極的に展開する。
中間技術の大規模な研究開発を行ない、かつその有効な移転についての協力
体制を整備する。科学技術における「持てる国」と「持たざる国」との格差
は拡大する一方である。これが貧困の格差を産む原因である。科学と技術の
平準化に努めることが不可欠であり、これは先進国としての日本の重要な使
命である。そのために途上国からの留学生や研究者の受け入れ枠を更に拡大
すべきである。
3)兵器開発競争の抑止力に貢献する技術を開発する。
米ソの軍拡競争には際限がない。これに歯止めをかける技術を生み出せるの
は日本である。
4)研究開発予算を大幅に増額し、効率的に使う。
①、経済産業省、文部科学省、防衛庁の各々で研究開発費を持っている。こ
れらのたて割の弊害をなくし、相互に協力調整をし、効率的使用を可能に
する方策を確立すること。
②、国の金を少しでも入れると、成果(工業所有権等)が国に帰するのでは、
民間は金を出さない。成果を開発者に帰属させること。
③、債務負担行為など、政府の民間研究投資への制度的支援をもっと強化す
ること。
 ④、研究開発投資の飛躍的な増加を図ることが必要である。鉄道や道路に投
資するより、インターネットを普及させて低料金にするとか、情報ハイウ
エイを建設、大学の実験設備を最先端のものにする、国家的な研究プロジェ
クトを組む等、工夫すべき。将来的にはGNPの3%位は開発投資にまわ
す。

5)産学官の協力体制を進める。
大学に関して言えば、マンパワーをもっているが、講座制のためにガンジガ
ラメの状態である。現状ではライフサイエンスやマイクロエレクトロニクス
などの先端分野は、大学では対応できない。大学の体質改善を図ること。

6)防衛と大学の連携
皮肉なことであるが、レーダー開発を始め、現代文明に貢献している画期的
技術の多くが、戦争の中から生れ急速な発展を遂げものである。米国の大学
の発展はとペンタゴンとの関係抜きでは語れない。強大な防衛費を大学の研
究に委託してきたからである。わが国は、防衛に対するタブーを打ち破り、
世界平和の推進のためにも軍学共同のパイプを持つべきである。また大学を
知的創造の中心として世界レベルに引き上げる。日本の大学のレベルは世界
的にみて高く評価されていない。研究者の質やレベル、研究施設、世界的権
威の不在等いろんな課題が多い。これらの改善には時間が必要だが、大胆な
抜本的改革が必要である。

7) 各分野に世界的権威者を育成する。
日本にはある分野における世界的権威者という人が少ない。欧米特に米国の
大学には特定分野の世界的権威者が多い。これが世界の研究者を米国に惹き
つける最大の理由である。日本もこの様な世界的権威者を多く育成しなけれ
ばならない。日本にノーベル賞受賞者が少ないのも同じ原因によるものであ

(8) 創造的研究に対する評価と知的所有権を確立する。
日本では創造的研究に対する評価制度が確立されていない。また知的所有権
に関する観念も成熟していない。このような環境のなかでは、優秀な研究者
は育ち難い。青色レーザーを世界で始めて開発した徳島の日亜工業の中村博
士は、日本を捨ててもっと自由なアメリカの大学に行ってしまった。一事が
万事である。これでは日本に一流の科学者は育たない。大学の改革は焦眉の
急である。
 9) 国際協力による研究開発を推進する。
これも何も新しいことではなく、始められてから既に久しい。最近の研究
プロジェクトは一国だけでは負担できないものが増えている。宇宙基地等
がその代表的なものである。技術開発は国益が絡むので競争的側面が多い
が、同じに、協力しなければ負担が大きくなる。日本も一面協力、一面競
争で積極的に国際協力に参加すべきだと思う。

6、世界平和のための文教戦略
 日本の最大の資源は、人的資源である。「世界の為の日本」
の国家目標達成に為に、この人的資源を最大限活用することが
肝要である。日本的伝統を再評価し、世界平和実現にこの文化
的伝統を生かし、世界への貢献を通じて日本人が世界に誇りう
る価値観を確立していくことである。

A,教育戦略
教育目標を明治以来の「日本国のため日本人」から「国際社会
に貢献する日本人の育成」に転換すべきである。

わが国の国策の重要な柱として、大規模な「人づくり」協力を
位置付ける。現在、世界的に高まっている日本熱のチャンスを
捉えて、留学生及び日本人海外留学生の量的拡大、質的向上を
図る。このことは、発展途上国の「国づくり」に対し、「人づ
くり」を通して寄与するとともに、先進国間との長期的な貿易
摩擦の解消につながり、わが国の国際社会への貢献、ひいては
自国の重要な安全保障にもつながる。

(1)ODAの一貫として留学生対策予算を位置づけ、日本の
貿易黒字の一部をそれに還元する。
たとえば、約一千億円(国家予算の約0.2パーセント)の追
加予算措置をとれば、OECD諸国から優秀な教師、および
発展途上国から留学生を年間計1万人以上日本に招いたり日
本から海外へ派遣することが可能となる。(日本は国連大学
に1億ドル出しているが、他国は相手にしない。効果の上が
る予算の使い方をすべきである。)
*国立大学の予算の一部(0.1パーセント)を国際交流費として
認知すること。
わが国は、学校教育の集大成ともいうべき大学の国際化が非
常に立ち遅れている。まず、国立大学予算の一部自由化を図
り、大学が自前で国際交流を推進できるようにすること。こ
れは、世界からの評価を高めるのみでなく、現在の大学の状
況に活力を与える。
*「国際学術賞」を設定する。
日本への期待は高いが、イメージは余り良くない。国際協力
費を効果的に使うためにも、現代の技術文明に転機をもたら
す新文明の創造に貢献する学者を対象にして「国際学術賞」
を設ける。一人当り10万ドル(約2500万円)とし、三人に
授与する。
*世界的に著名な学者が参加する国際的な学会には、年間100万
ドル、向こう十年間、助成措置をとる。

(2)留学生の量的拡大、待遇の質的改善を図る。
 留学生10万人の早期達成を図る。この中曽根内閣の決定は、
まだ達成されていない。2000年までに10万人が現在のと
ころ6万人にしかなっていない。今後、30万人ぐらいは招請
すべきである。日本は少子化で大学生が減少しつつあるので、
その分、外国人留学生を迎えることが可能になる。世界の若者
を日本に迎えて温かく教育するのが、母性国家日本の使命では
ないだろうか。同時に日本人の海外留学生を大幅に拡大。支援
体制を取る。波及効果として詰め込み主義の日本の学校教育の
是正が期待される。
*日本留学・海外留学に関する情報中枢センターとしての「留
学生センター」を創設する。日本に留学したり、海外に留学
したいと思っても、情報不足で選択できない。
*大学における留学生受入体制を改善する。海外に開かれたモ
デル大学をつくり、日本語修得、カリキュラム、学位取得、
宿舎等の設備など大学の閉鎖性を改める。海外の大学と単位
相互互換契約を結ぶ。また、工学部に力点をおいて留学生の
受入体制の拡充を図る。技術面の修得は日本語のギャップも
それほど問題にならず、帰国しても実力があれば、指導者と
しての道が開かれる。
*産学協同の留学生制度を設ける。
ハイレベルの人材確保のために、現地の合弁会社や学者を窓
口として活用する。また、母国に役立つ実学を重視し、日本
的経営や価値観、日本文化を知らせ、さらに工場施設、公共
施設など、日本社会に接触する機会を多く持てるよう便宜を
図る。そのためには、産学が協同して大量の留学生を受け入
れる必要がある。また、日本人留学生が海外に留学した経験
を持つことは、祖国を考え、愛国心を培う良い機会である。
*世界の人々が住みたい国にする。世界中の人達に「どの国に
住みたいか?」 と尋ねてみるとき、「日本に住みたい」と答
える人がどれくらいいるだろうか。人が集まって来ない所は
発展しない。アメリカが発展を続ける原因は、世界の人を惹
きつける魅力があるということである。日本にはこれが欠け
ているのである。如何すべきか、我々の宿題である。
(3)国際協力に関わる人材の養成と確保は急務の課題である。
そのためには、大学の国際化を図ることが焦眉の急であり、
各学部に一名ずつ外国人客員教授を入れるなどの処置をとる。
省庁の中でも最も国際化の遅れているのが文科省である。思
い切って諸規制を緩和し、世界に開かれた文科行政を展開す
べきである。具体的には国内外大学間の単位互換制度、科研
費取得の簡素化等。国民の理解を得るための積極的な広報を
行なう必要がある。
*日本の幾つかの大学を選んでセンター・オブ・エクセレンス
として育成し、総ての面で世界的レベルに引き上げる。世界
の優秀な人材を日本に集めなければ、 これからの発展は見込
みがない。国際人養成の本格的国際大学の創設、国連大学の
活用を考える。 *世界の重要国家に大学を建設する。日本
に留学生を招くとともに、海外の重要拠点に日本の大学を建
設する。アメリカは中近東のレバノンとエジプトにそれぞれ
アメリカン大学を100年前に設立しており、中近東全体か
ら優秀な学生達が入学している。卒業生は皆アメリカに好意
をもつようになる。こうしてアメリカは、中近東に着々と基
盤を築いてきたのである。
(4)世界各国の徴兵制に代わるものとして、ボランティア義
務制度を設ける。
このことは、平和国家として歩むことを世界に宣言したわが
国の憲法の精神、国是として大事なことなので、断固として
実現すること。
 海外青年協力隊の拡大。基本的には給与はなく、生活費と渡
航費は政府が支給する。派遣前には教育期間を設けて厳しく
訓錬する必要がある。年間10万人を世界185ヶ国に派遣
すれば、かなりの影響を世界に与えることになろう。森内閣
時代、教育改革で初等・中等教育にボランティア制度を導入
することになったが、高等教育は放置されている。高等教育
にこそ、ボランティア実習期間を1~2年間導入すべきてあ
る。この過程を経たものは、文科省・外務省等の高官採用の
認定条件とする。
(5)シルバー人材の海外派遣を拡充する。 
これから日本では定年退職したシルバー世代の人が急増する
が、彼等の多くは未だ健康で働く意欲もあり、技術を身につ
けている人が多い。彼等の中で希望する人達を彼等の技術や
経験を必要としている途上国に派遣する制度をもっと拡充す
べきだと思う。基本的にはボランティアであるが(彼等の大
半は年金生活者であると思うので)日本で生活するより購買
力が大きくなると思う。医療面の配慮があれば、かなり実現
性がある。海外派遣も青年だけでなく高齢者とペアーで組め
ば相乗効果が期待される。
(6)教育の荒廃・偏向問題に関して
 家庭倫理、青少年のモラルの確立に努める。如何に国家が強
大で繁栄していても、家庭倫理が崩壊し、青少年のモラルが低
下すれば、間違いなく国家も崩壊に赴くことは必定である。欧
米諸国の場合、キリスト教という一つの歯止めがあるが、日本
は宗教があっても実生活にほとんど影響はなく、際限なく崩壊
に傾いている。これを解決するためには、家庭、学校、社会に
おいて国民道徳の復興が必要であり、個人に偏った教育基本法
の行き過ぎが是正されるべきであり、日本的伝統、諸民族国家
の伝統と調和した新しい価値体系の確立が焦眉の課題である。
①、「教科書検定委員会」を設置する。
文部省の諮問機関である現在の「教科書検定審議会」を廃止
し、新たに独立の行政機関として、文部大臣を委員長とし、
学会の第一人者若干名からなる「教科書検定委員会」を設置
する。この委員会で教科書の合否を決定し(字句の訂正を求
めるのではない)、文部省の教科書検定課は事務的な業務の
みを行なう。
②、教科書検定に関する法律を定め、それに基づいて教科書の
合否を決める。
どこの国も、教科書に関する肝心なところは法律で押えている。
憲法や教育基本法、さらに国権の最高機関である国会の決議等
に反した記述のある教科書は不合格とする。(自由と民主主義
を擁護する立場を明確にすること。)


B)文化の振興による世界平和・精神の高揚
文化・芸術・スポーツは、民族・国境・宗教やイデオロギー
を超えて、全世界の人々の心を1つに結んでくれる和平の力
であり、国民を団結させる強力な国力の一つである。文化は
人間精神を豊かにし、潤いを与え次ぎなる創造を生み出す力
の源泉であり、文化・芸術を疎かににする国家は永続できな
い。歴史上の偉大な国家は素晴らしい文化や芸術を残してい
る。ギリシャ、ローマ、ルネッサンス期のイタリア、近世の
西欧等枚挙に暇がない。文化・スポーツ振興のために大幅な
予算装置を講ずる。理工系の助成とともに芸術・文化の振興
の為にバランスのとれた助成措置が執られることを期待する。

(1)日本文化の世界化を図る。文化は本来、民族に固有なも
のが多く、他の国に移転が難しい場合が多い。しかし、人間
精神の感情は世界共通であるので、言語を超えて感動を呼び
起こすことが可能である。音楽や絵画、小説、演劇が世界の
人々に国境を超えて影響を与えている。モーツアルト、ベー
トベン、シェクスピア、ミケランジェロ、ダビンチなど私が
語る必要もない。これに比べうる人間味豊かな芸術が日本か
らでていない。せいぜいカラオケ、ニンテンドー、アニメ等
である。サッカー、オリンピック等スポーツの振興策も重要
である。
(2)伝統的文化の保存と近代化を図る。
歌舞伎、浮世絵、茶道、華道、陶器等伝統的文化を世界的価
値に高めるのは現代に生きる日本人の課題であろう。日本の
伝統文化の中でも後継者がいなくて消えてゆく運命にあるも
のも多い。特に伝統的工芸品の国宝級の職人技が、後継者が
いなくて消えて行くことは耐えがたいことである。これらの
職人達が生存中にコンピューターを使ってその技術を後世に
残そうとする努力が続けられている。もし、日本人の後継者
が見つからない場合は外国人でも構わない。日本文化の普遍
化、人種、国籍を問わず、やる気のある人に相続させるべき
であると考える。伝統文化、クラシックバレエ等を大学の教
科とし、家元制度の弊害を打破すること。
(3)日本語の世界への普及に努力する。 
日本人は外国語の習得に努力する必要があるが、同時に日本
語の世界化にも努力する必要がある。そのため、ドイツのゲー
テ・インスティチュートや英国のブリティシュ・カウンシル
のような普及機関を全世界に配置する必要がある。言語のみ
ならず文化・芸術の学習の機会も与える必要がある。例えば、
日本語圏会議の開催:日本語の普及度の高い国の代表を招待
して毎年、定期的に日本語圏会議を開催して日本語の普及を
図ると共に親善友好を図る契機とすべきである。よく、日本
の援助は「顔の見えない援助」と言われてきたが、日本語を
通じての親善は効果が大きいと思う。
(4)英語を第二公用語にする。
『21世紀懇談会』が英語を第二公用語にするという提案をな
して以来、にわかに論議が高まってきた。インターネットと英
語はこれからの世界を語る上でキー ワードになる。残念なが
ら英語は実質的には世界語として機能していることは無視でき
ない。意地を張るより活用する方が得策というものである。世
界との距離はぐっと近くなるはずである。
(5)近隣諸国の言語の普及に努力する。
従来は日本近代化の必要上、英・独・仏語の学習が中心であ
らざるを得なかった。しかしこれからは、近隣友好のみなら
ず、通商・学術上も、韓国語、中国語、ロシア語を学ぶ必要
性が増加しる。中等教育からこれらの言語教育を始めたら如
何であろうか。大学入試にも組み入れることを提案したい。
(6)国立翻訳センターを設立。 
世界同次元性があらゆる面で進行中であるが、現実的には言
語の障壁は大きい。そのために国立翻訳センターを設立して、
国家レベルで翻訳の基準を立てるとともに、翻訳・通訳者の
養成と国家試験の施行等を推進することにより、日本の世界
化に貢献するのではないかと考える。特に科学技術文献の翻
訳の必要度は高いと思われる。同センターのもう一つの使命
は、コンピューターによる翻訳・音声認識のソフトの開発で
ある。もしこれが高度に利用できるようになれば、その利便
性は大きい。

7、「国民意識の改善」と「情報戦略」
1)情報謀略戦は、今後ますます活発化する。
今後予想される軍事力を背景とした恫喝外交・心理謀略戦、
テロ活動に対処する必要がある。

2)国民意識の改善が、諸政策実施の大前提である。
西側民主主義会社にとって、国民の理解と支持をとりつける
ことは極めて重要である。外交、防衛、貿易摩擦、行革を初
めとする内外の最重要政策課題に関しては、総理・政府の強
力なリーダーシップとともに、オピニオン・リーダーによる
国民意識改善と健全な世論形成が急がれる。
(1)総理(政府)はテレビを通じて、直接国民に諸政策の意
   義を訴えること。
①、総理は行政府の最高責任者として、国民に直接、諸政策
を説明する義務と権利がある。月一回、国民向けのテレビ
番組を持つことを特に進言したい。
②、そのためには、速やかにその障害となっている。「放送
法」の根本的改正を図ること。
(2)首相官邸に情報・宣伝担当のブレーンを集める。
記者クラブの弊害は大きい。政府の諸政策が正しく国民に伝
えられる方法について、専門家の助言が必要である。
(3)学者・言論人対策を急ぎ、これらの頭脳集団やオピニオ
ン・リーダーを積極的に活用、自由闊達な論議を喚起する。
  マスコミ偏向の是正は容易でない。タブーに挑戦する竹村健
一氏の「報道、2002」のようなテレビ番組が多く作られ、茶
の間から国民意識の改善が図られることが望ましい。
(4)情報対策委員会を設置する。
  わが国の情報収集と評価能力は極めて低い。政府内に「情
  報省」のようなものを設置することが望ましい。少なくて
  も自民党内に情報謀略戦に対応できる機関をつくることが
  急がれる。そして、欧米諸国の専門機関と情報交換を行な
  うべきである。
(5)機密保護法の制定を急ぐ。
  情報謀略戦に対応できるよう、軍事・外交・技術などに関
  する機密保護法を至急成立させること。

3)「日本総合戦略研究機構」設立の提唱(1982年提唱済)
(1)≪設立の必要性≫
  ①、今日の国際環境は、非常に複雑・総合的・不明瞭であ
   り、しかも各国間の相互依存度は極めて高い。
  ②、このような国際社会の中で、わが国が生きぬくために
   は、グローバルな視野に立って、総合的な外交・国家戦
   略を早急に確立すること、これは国家的な重要課題。
  ③、それは、従来のたて割型の各省庁では対応がむずかし
   く、民間の総合力を結集した総合的な戦略研究機構の創
   設が望まれる。
  ④、すでに欧米では、シンクタンクや大学研究所が政府の
    ブレーンとして重要な役割を果たしている。
  ⑤、わが国においても、総合戦略機構の設立は不可欠であ
   り、欧米の戦略シンクタンクのカウンター・パートとし
   ての役割を演ずることが重要である。
 (2)≪組織、特色、および活動内容≫
  ①、東京に「日本総合戦略研究機構」(財団法人、または
   社団法人)を設立し、ワシントンに「日米共同戦略研究
   所」、ソウルに「日韓共同戦略研究所」を設立する。
  ②、理事会、評議員会の構成は、学者、政治家、財界人、
    官僚OBを網羅する。
  ③、寄付、補助金、研究委託の受注によって運営する。

                  以 上

 連絡先:大脇研究所 E-mail:junowaki@able.ocn.ne.jp
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【Cel】080-3350-0021【カカオ,Line,Skype】junowaki
【HP】http://www.owaki.info
連絡版】http://www.owaki.info/etc/etc.html