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国際企業文化研究所所長 尾脇準一郎
引っ込み思案の殿様商売
鳥取に大学誘致を計って十五年、何故実現しないのであろうか? 誘致に成功し
た市に比べて、資金の準備、市・県議が大学側へ日参するほどの熱意に欠けるこ
と、来る大学側の立場に立った、消費者オリエンテッドな発想に欠けることである。
この点、三年前、鳥取市調査レポートで国土庁長官賞を受賞した宮寺氏の指摘、
「鳥取市民気質を引っ込み思案の殿様商売と見た。これが地域活性化のガン
であり、この点を直さない限り、観光開発、企業誘致どれを行っても、うまく行
く保証はない」との指摘は、正鵠を得ている。この打開策は? 「なぜ今、大学
設置なのか?」
ニードの分析が重要
先ず、そのニードを分析することである。昨年、隣の島根県には、職業訓練大学
校準備中を含め、三つの大学が、新潟では、今年四つの大学がそれぞれ開校した
が、付和雷同、手前勝手な発想を厳しく分別して、使命感にまで昇華するような
ニードを探るべきであろう。小生は三年前、地元の諮問を受け、鳥取の弱点を長
所に変える“逆転の発想”とも言うべき、“国際社会のニード”に答える「国際
協力大学(国際職業訓練学院)構想」を発表した。当時、外務省筋、国際貢献の
必要性を痛感される全国の有識者から、ご賛同を頂いたことを申し沿えておきた
い。 まず、市・県政に願うことは、大学の位置付けである。鳥取市の予算配分
を見ても、老人福祉に偏っており、これでは若者で賑わう街づくりは、「夢のま
た夢」であろう。
大学の3つの使命
大学は、教育、研究、奉仕を使命とする。大学は未来社会への対備、生涯教育
のセンター、コンサートなどの市民のイベント、交流、憩いの場、国際交流の最
も有効な拠点でもある。米国では、大学生中心の学園都市がいくつもある。 大
都市からの借り物イベントも、受け皿がない限り、地元に文化、情報、知識は根
付かない。多くの優秀な人材も、その優秀な技能を地元に還元できない。大学は
この受け皿でもある。
キーパーソンの存在
東京で数十年、大学界に携わって、多くの大学の浮沈を見てきた。大学設立に
は、人とビジョンと資金がかみ合うことが必須である。その中でも、大学設立の
教育的使命感に燃えるキーパーソンの存在が最も重要である。 70年代初頭に
設立された筑波大学は、高度経済成長下の日本で、大学紛争、田中政権、東京教
育大の移転という社会情勢の中で、「国際A級の大学を!」という福田信之マス
タープラン委員長を中心とする教授たちの、憂国の情、教育熱から生まれたもの
であった。金も政治も、志あれば付いて来るといった“気概”が重要であること
を、筑波大や新潟の国際大学の例は教えている。先日亡くなられた宮崎正雄先生
(筑波大学参与)は、根っからの教育者であられた。最後にお伺いした折、政治
の話はかけらもなく、ただ教育者としての心構えを、時間を忘れて遺言の如く語っ
てくださった。先生のご冥福を心からお祈りしたい。 (鳥取市)
1994年4月22日、日本海新聞 『潮流』
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―大学・農村・パソコンそして“志”─
国際企業文化研究所所長 大脇 準一郎
Uターン者を中心に、『鳥取自由自在の会』が発足して2年近くになる。その
間、あらゆる角度から、鳥取の活性化策を探ってきた。その中で、大学設置、農
業、農村の活性化、パソコン教育の三つがキー・ポイントのように思われる。
最近、鳥取県東部の有志により10万人を超える署名が集められ、大学設立の動
きが盛り上がっていることは喜ばしい限りである。全国の過疎地域の研究データー
によっても、教育費に予算を投じないことが、過疎の主原因に挙げられている。
また、大学設置を起爆剤に地域の活性化を図った例は多い。
ただ、“何のための大学なのか?”その“志”を明確にすることが大切である。
明治以来、東大を頂点とした国家官僚養成の教育体制は未だ続いている。196
0年代末、大学紛争の嵐の中で問われたものは何であったのか? 東大の廃校案
もあったが、根源的反省もなく、“元の木阿弥”的状況が続いている。東大の世
界大学ランキングが160位以下であって、それ以上ではあり得ないことを国民
のどれだけの人々が、真剣に受けとめているのであろうか? 米国の一流大学へ
留学する大蔵官僚も半年は授業がまるで聞こえない。彼らに劣等感を抱かせる前
に、翻訳中心の語学教育の改革を考えるべきであろう。
今、大学に問われているものは、国際社会に役立つ人材養成と地方活性化の拠
点的役割であって、富国強兵策の先兵としての国家指導者の養成は、過飽和状態
にある。国際的人材養成の大学づくりの夢は、80年代、外務省、通産省等各省
庁が描いたが、構想や、形を変えた中途半端なものに終わっている。
他方、地方活性化の拠点としての大学構想は、“地方の時代”の波に乗って各
地に具現化している。その機能として、生涯教育、文化(憩い)の中心、産学共
同的機能が益々強化されるであろう。 農業、農村活性化策において、土地整備
や補助金制度のような、環境整備から、農村に住む一人一人の心の復興、家族の
ライフスタイルの転換、ソフトに重点がシフトし、“魅力ある、住み良い村づく
り”の方向に向かっていることは、新しい時代の波である。図書館設置、よそ者
にも開かれた交流の場づくりの動きはこの流れに沿うものであろう。阪神大震災
のボランティアたちが求めていたものは、お互いに価値観を共有できる土俵、コ
ミュニケーションであった。せっかく盛りあがった善意の灯を消さないためには、
教育、職場、一般社会が、ボランティアを受け入れる枠づくりを急ぐことである。
海外青年協力隊として何年か、貴重な海外体験をして帰った青年の受け皿が、あ
まりにも小さいのを見ても、日本はまだまだだと痛感させられる。
先日上京して印象深かったのは、大学を退官された名誉教授が、「アカデミッ
ク・ボランティア・ユニオン」なるビジョンを熱っぽく語られたことである。
「年金があるから生活には困らないが、何か世の中に役に立つことをしたい」。
“国際・学際・業際”の看板を掲げて「人材養成塾、全国移動大学をやりたい」
「鳥取をそのモデル県にしてはどうか」と話しかけられた。静岡にも、年金者を
中心に農業を守る“報徳文化村づくり”をなさっている方も居る。先日、大手商
社を退職された方が、自分の国際経験が多少でもお役に立てばと手弁当で勉強会
に来てくださった。「迫り来る高齢化社会にどのように対処すべきか?」新しい
生き方が模索されている。
何度か、全国の農業者と訪問したイスラエルのキブツ(生活共同体)は“生命
や財産よりも大切なものがある”というとを実感させる大胆な村づくりの実験で
ある。300近くあるキブツ村には、日本人を含め、世界のボランティア青年が
常住している。村おこしの元祖、大分県大山町は、イスラエルのキブツから刺激
を受けた。今も相互の交流が続いていると言う。
第三に、コンピュータ化する時代の流れにどう対処すべきか? 今や小学生に
もパソコンが導入される時代である。機械はわれわれに快適な生活を与える魔法
の杖であるが、私も含め、中々パソコンにはなじめない。そこで学校教育をはじ
め、パソコンを手軽に利用できるような事業を考えている。Uターン者がUターン
したくても受け皿がない。需要を喚起して事業を起こすこと(起業)が求められ
ている。有為な青年にどんどんUターンしてもらえる受け皿づくり、そして彼ら
に思う存分活躍していただくことによってこそ、活力ある鳥取の未来は拓かれる。
国際化、情報化、高齢化の時代の波にどのように対応すべきか、大学・農業・
パソコンの3点に絞って述べてきたが、最も大切なことは“志”。近代化120
年余の日本の歩みを反省し、“誇りある日本人”の原点をどこに見出すかであろ
う。明治維新の元勲、西郷のアジア主義(東洋的道義国家の道)や福沢の先進的
近代国家の道(国民のレベル・アップ)を捨てて、大久保、伊藤の後進国的近代
国家の道(富国強兵策)を驀進した日本、敗戦により鉄槌を食らわされたものの、
明治以来の中央集権的行政システムは残存し、東京一点集中、地方衰退の戦後5
0年であった。教育、産業、政治、いずれにしても日本近代史を再検討して、誇
りある日本、活力あるふるさとづくりの元年、平成8年(1996年)であるこ
とを祈念する。 旬刊『政経レポート』1996年(平成8年)1月5日
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www.owaki.info/teigenowaki/taiheyodaigaku.html
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1991年11月26日 ロゴス文化会館
テーマ 西中国地方の活性化の要
発題者 大脇 準一郎
Ⅰ 21世紀への新しい経営理念
社会的貢献、人間尊重、国際性
Ⅱ 情報化時代と鳥取
1.鳥取のデメリットをメリットに。引っ込み思案の殿様商売
2.1990年代のトレンド
‘60年代 |
‘70年代 |
‘80年代 |
‘90年代 |
効率化 重工業化 物 |
自由化 ハイテク化 (脱工業化) 物+金 |
多様化 情報化 国際化 物+金 人+情報化 |
個性化 文化 グローバル化 +企業文化 |
①国家・企業のグローバル化 →地域・個人のグローバル化
② 技術→情報化→ソフト化→文化(遊び)
③ 高齢化・・・・・人口の10%(生涯教育)
④ 技術革新、コンピューター、衛星放送
現代の課題
短期:ソ連東欧の危機、貿易摩擦、途上国の累積責務・・・
長期:地球環境破壊、資源エネルギー、人口問題、道徳的退廃、教育の危機
Ⅲ 21世紀と大学
1.大学界のトレンド
個性化、高度化、経営情報、英語、国際文化、看護
鳥取大学「人間文化コミュニケーション学部」創設
2.21世紀に向けた教育改革
①教育問題=人間を形成する生態系の問題 ②国際化 ③情報化 ④新しい価値観の樹立
⑤社会性 ⑥留学生の受け入れ体制の改善 ⑦民間の活力の導入
3.アメリカ大学日本校
障害{文化省の不認可、日米の教育システムの相異
4.国際協力大学の例
①国際開発高等教育機構(外務省)・・・{ODAを効果的に実施するための援助人
材。高等教育機関における開発援助の教育、研究の促進
②アジア経済開発大学(通産省)
③留学生のトレンド
Cf, 国連大学、国際平和大学、国際大学、筑波大学、JICA研究所、アジア学院
5.太平洋大学構想(1978)
21世紀の新しい文化の可能性を探り、環太平洋文化の開発・発展と太平洋共同体形成の為の人材養成
言語教育、地域研究、地域開発センターの3学部
付属機関{国際訓練センター、コミュニケーションセンター、データーセンター
6.国際企業文化大学/日米企業文化センター
新しい企業理念の構築、企業活動、ならびに経営者行動比較、研究調査、教育啓蒙
7.鳥取国際経営情報短期大学構想
①電気・電子・情報系 ②法・経・商 ③外国語系
人材の育成、地域の活性化、文化レベルの向上、町づくり、シンボル性、経済効果
8.その他の新構想大学
新見短大、広域事務組合方式
神奈川歯科大とTSD・・・経営情報と文化、産学共同
第二放送大学構想・・・筑波学園都市
衛星大学構想・・・中京大
専修学校レベルから→大学レベルへ.
1.趣旨
①グローバルでローカルな時代 先進国と後進国(南北問題)
都市と農村(過疎問題)
②精神と物質文明、東西の融合、真の幸福、Quality of Life
大西洋→太平洋文化→日本海→アジアの時代
③平和な時代の到来
④福祉、平準化、自立心、協力
⑤GIF構想、物から人へ、心の時代へ
国連大学 Global Education
基本理念{共存・共栄・共義、国際貢献(留学生)、社会性(高齢化、生涯教育}
2.目的
① 国際協力の人材育成 ②発展途上国の国づくりに貢献
② 地元産業、西中国地方の活性化に貢献
3.目標
1)初年度入学者数120人、3年度360人 修学年限3年
将来は1000人~2000人規模に拡大
2)語学、一般教養、基礎技術
3)専門技術教育
4)地元産業等で実習
5)卒業後の進路 自国、または外国へ帰国(40名)地元産業へ就職(40名)国内他府県へ就職(40名)
6) 奨学金制度
4.資金計画
①自己資金:県、市、町、村、地元企業
② 全国から公募:民間投資家( GIF)、政府(外務省,通産省,文部省,国土省,経済庁,建設省)
5.スケジュール
①基本構想研究所発足 1991~1992
マスタープラン委員会(調査研究構想、渉外、公報)、組織委員会、 財務委員会
②設立決定 1993
教官募集、学生募集、建設計画
③ 建築着工
④ 完成 1995.4 開校
6.組織
①コアメンバーの選定 :シンボル、学長、国際大学の例
②地元産業界の協力体制:産、官、学、政
③全国的協力体制: 東京(産・官・学・政)中国地方、西中国地方
④国際ネットワーク
7.潜在資産の点検
① 教育・研究機関、境水産高校、智頭農林、砂丘研究所、農業者大学
② 地元企業(鳥取三洋、日本セラミック)