トレンド研究会

                1991年11月26日  ロゴス文化会館

  テーマ    西中国地方の活性化の要

      「国際職業訓練学院」(IVTI)設立構想について

                          発題者 大脇 準一郎

Ⅰ 21世紀への新しい経営理念

            社会的貢献、人間尊重、国際性 

Ⅱ 情報化時代と鳥取

1.鳥取のデメリットをメリットに。引っ込み思案の殿様商売

2.1990年代のトレンド 

‘60年代

‘70年代

‘80年代

‘90年代

効率化

重工業化

自由化

ハイテク化

(脱工業化)

物+金

多様化

情報化

国際化

物+金

人+情報化

個性化

文化

グローバル化

+企業文化

国家・企業のグローバル化             →地域・個人のグローバル化

    技術→情報化→ソフト化→文化(遊び)

    高齢化・・・・・人口の10%(生涯教育)

    技術革新、コンピューター、衛星放送

 現代の課題

    短期:ソ連東欧の危機、貿易摩擦、途上国の累積責務・・・

    長期:地球環境破壊、資源エネルギー、人口問題、

       道徳的退廃、教育の危機     

Ⅲ 21世紀と大学

1.大学会のトレンド

個性化、高度化、経営情報、英語、国際文化、看護

鳥取大学「人間文化コミュニケーション学部」創設

2.21世紀に向けた教育改革

①教育問題=人間を形成する生態系の問題 ②国際化 ③情報化 ④新しい価値観の樹立
 ⑤社会性 ⑥留学生の受け入れ体制の改善 ⑦民間の活力の導入

 

3.アメリカ大学日本校

障害{文化省の不認可、日米の教育システムの相異

4.国際協力大学の例

    ①国際開発高等教育機構(外務省)・・・{ODAを効果的に実施するための援助人

     材。高等教育機関における開発援助の教育、研究の促進

    ②アジア経済開発大学(通産省)

    ③留学生のトレンド

     Cf, 国連大学、国際平和大学、国際大学、筑波大学、JICA研究所、

        アジア学院

  5.太平洋大学構想(1978)

    21世紀の新しい文化の可能性を探り、環太平洋文化の開発・発展と太平洋共同体形成の為の人材養成

    言語教育、地域研究、地域開発センターの3学部

付属機関{国際訓練センター、コミュニケーションセンター、データーセンター

6.国際企業文化大学/日米企業文化センター

  新しい企業理念の構築、企業活動、ならびに経営者行動比較、研究調査、

教育啓蒙

7.鳥取国際経営情報短期大学構想

  ①電気・電子・情報系 ②法・経・商 ③外国語系

  人材の育成、地域の活性化、文化レベルの向上、町づくり、シンボル性、

経済効果

  8.その他の新構想大学

    新見短大、広域事務組合方式

    神奈川歯科大とTSD・・・経営情報と文化、産学共同

    第二放送大学構想・・・筑波学園都市

    衛星大学構想・・・中京大

 

Ⅳ 国際職業訓練学院 International Vocational Technology Institute

        専修学校レベル→大学.

1.趣旨

①グローバルでローカルな時代 先進国と後進国(南北問題)

    都市と農村(過疎問題)

②精神と物質文明、東西の融合、真の幸福、Quality of Life

大西洋→太平洋文化→日本海→アジアの時代

③平和な時代の到来

④福祉、平準化、自立心、協力

GIF構想、物から人へ、心の時代へ

国連大学 Global Education

              基本理念{共存・共栄・共義、国際貢献(留学生)、社会性(高齢化、生涯教育}

2.目的

     国際協力の人材育成 ②発展途上国の国づくりに貢献

  地元産業、西中国地方の活性化に貢献

3.目標

①初年度入学者数120人、3年度360人

     修学年限3年

1)語学、一般教養、基礎技術

2)専門技術教育

3)地元産業等で実習

③卒業後の進路

自国、または外国へ帰国(40名)地元産業へ就職(40名)

国内他府県へ就職(40名)

(ア)  奨学金制度

④将来は1000人~2000人規模に拡大

4.資金計画

①自己資金

県、市、町、村、地元企業

             全国から公募

            GIF、政府、投資家,外務省、通産省、文部省、国土省、経済庁、建設省

5.スケジュール

①基本構想研究所発足 1991~1992

マスタープラン委員会(調査研究構想、渉外、公報)、
   組織委員会、
財務委員会

②設立決定 1993

教官募集、学生募集、建設計画

     建築着工

 完成 1995.4 開校

6.組織

①コアメンバーの選定 :シンボル、学長、国際大学の例

②地元産業界の協力体制:産、官、学、政

③全国的協力体制:  東京(産、官、学、政)中国地方、西中国地

④国際ネットワーク

7.潜在資産の点検

     教育・研究機関、境水産高校、智頭農林、砂丘研究所、農業者大学

地元企業(鳥取三洋、日本セラミック)

   
 鳥取の活性化と大学設置
                国際企業文化研究所 所長 尾脇 準一郎

引っ込み思案の殿様商売
 鳥取に大学誘致を計って十五年、何故実現しないのであろうか? 誘致に成功し
た市に比べて、資金の準備、市・県議が大学側へ日参するほどの熱意に欠けるこ
と、来る大学側の立場に立った、消費者オリエンテッドな発想に欠けることである。
この点、三年前、鳥取市調査レポートで国土庁長官賞を受賞した宮寺氏の指摘、
「鳥取市民気質を引っ込み思案の殿様商売と見た。これが地域活性化のガン
であり、この点を直さない限り、観光開発、企業誘致どれを行っても、うまく行
く保証はない」との指摘は、正鵠を得ている。この打開策は? 「なぜ今、大学
設置なのか?」

ニードの分析が重要
 先ず、そのニードを分析することである。昨年、隣の島根県には、職業訓練大学
校準備中を含め、三つの大学が、新潟では、今年四つの大学がそれぞれ開校した
が、付和雷同、手前勝手な発想を厳しく分別して、使命感にまで昇華するような
ニードを探るべきであろう。小生は三年前、地元の諮問を受け、鳥取の弱点を長
所に変える“逆転の発想”とも言うべき、“国際社会のニード”に答える「国際
協力大学(国際職業訓練学院)構想」を発表した。当時、外務省筋、国際貢献の
必要性を痛感される全国の有識者から、ご賛同を頂いたことを申し沿えておきた
い。 まず、市・県政に願うことは、大学の位置付けである。鳥取市の予算配分
を見ても、老人福祉に偏っており、これでは若者で賑わう街づくりは、「夢のま
た夢」であろう。

大学の3つの使命
 大学は、教育、研究、奉仕を使命とする。大学は未来社会への対備、生涯教育
のセンター、コンサートなどの市民のイベント、交流、憩いの場、国際交流の最
も有効な拠点でもある。米国では、大学生中心の学園都市がいくつもある。 大
都市からの借り物イベントも、受け皿がない限り、地元に文化、情報、知識は根
付かない。多くの優秀な人材も、その優秀な技能を地元に還元できない。大学は
この受け皿でもある。

キーパーソンの存在

 東京で数十年、大学界に携わって、多くの大学の浮沈を見てきた。大学設立に
は、人とビジョンと資金がかみ合うことが必須である。その中でも、大学設立の
教育的使命感に燃えるキーパーソンの存在が最も重要である。 70年代初頭に
設立された筑波大学は、高度経済成長下の日本で、大学紛争、田中政権、東京教
育大の移転という社会情勢の中で、「国際A級の大学を!」という福田信之マス
タープラン委員長を中心とする教授たちの、憂国の情、教育熱から生まれたもの
であった。金も政治も、志あれば付いて来るといった“気概”が重要であること
を、筑波大や新潟の国際大学の例は教えている。先日亡くなられた宮崎正雄先生
(筑波大学参与)は、根っからの教育者であられた。最後にお伺いした折、政治
の話はかけらもなく、ただ教育者としての心構えを、時間を忘れて遺言の如く語っ
てくださった。先生のご冥福を心からお祈りしたい。 (鳥取市)
                   1994年4月22日、日本海新聞 『潮流』

大学の地球社会の貢献

 7月12日より神戸市国際会議場において、第10回世界大学総長会議(IAUP)が
開催された。今回は49カ国620人(うち海外400人)の参加者。3年に1
回開催される同会議は本年で満30周年を迎え、日本で開催されるのは、初めて
である。 開会式には、地元兵庫県550万人を代表して貝原知事、地元大学を
代表として鈴木神戸大学長の歓迎の挨拶のほか、主催国である日本国を代表して
数名の祝辞があった。高円宮殿下は流暢な英語で21世紀へ向けての国際協力、
国際教育の重要性を訴えられ、森山文部大臣もまた、日本国政府の文教政策、国
連大学への協力の実情を驚くほど流暢な英語でスピーチ、“国際国家日本”の面
目躍如の感があった。

 政治家として最も大変な折、選挙を犠牲にしてこの会に駆けつけた海部前首相
は「今はただの人であるが、当選した暁には、皆さんの討議の成果を政治に生か
したい」と述べ、さらに海部氏は先日のクリントン氏との会談に触れ、「今や1
300億ドルもの貿易黒字を抱える日本は、内需拡大と輸入を増やすことにおい
て、途中経過でなく、結果がほしい!」とクリントン氏から強く要請されたこと
を披露。

 また、「日本の地球的貢献は黒字減らしのほか、今回のテーマである平和、軍
縮、環境問題があるが、今日は地球環境問題に絞って述べたい」と前置きし、
「環境問題の解決に、西洋の二元的発想に対する“東洋的共生の哲学”の導入の
必要性」を訴えた。

 次いで基調講演に立った元文部事務次官の天城勲氏は、大学の本質的機能は
「知識の獲得(研究)」「知識の伝達(教育)」「知識の活用(奉仕)」の三つ
であるとして、外の国際化(諸外国との連携)、内なる国際化(留学生から学ぶ)
に努めるべきであると強調した。また、国連大学のグルグリーノ・デソウザ学長
が、グローバル・ネットワークづくりにおいて、IAUP(世界大学総長協会)と国
連大学の強調の必要性を強調、ユネスコ傘下の国際大学協会を代表して森旦氏
(元東大総長)が、同協会の活動を報告した。

 会議は14日まで行われたが、20世紀の世紀末、東西の冷戦構造崩壊、進歩
と発展から環境破壊の進む中、地球的規模の危機の解決へ向けて大学人が、その
頭脳を結集して、主体的に取り組む姿勢に感銘を覚えた。

 10年前、神戸は、ボートアイランド構想を進め、山を削って倉吉市規模の小
都市を現出した。そそり立つ近代的構想ビルを見ながら、人知の偉大さと、世界
の碩学を集めて謙虚に学び、さらに一大跳躍を図ろうとする神戸市の意気込みを
感じた。 情報化、国際化の進む世紀末にあって、取り残されないように鳥取の
行政と教育界に一大奮起を促したい。
(鳥取市片原町、国際企業文化研究所所長、大脇準一郎)
               1993年(平成5年))8月、日本海新聞 『視点』
参考資料:「鳥取を拓く」http://www.owaki.info/teigen/tottori/kasseika.html