【メモ】
日時:2018年6月14日(木曜)2~5:00 PM、
場所:衆議院第一議員会館・B1F大会議室
講演者:David Holcomb博士(米国オークリッジ国立研究所)
徐洪傑博士(上海応用物理研究所熔融塩炉開発総リーダー)
山脇道夫(東京大学名誉教授)
山本 拓 |
【山本拓】 本日は国会が紛糾しておりまして、とりあえず中座してまいりました。 政府は、現在、第五次エネルギー基本計画を進めています。政府としてとるべき技術的課題として基本的計画としては溶融塩炉を含めていくという立場を明記することといたしました。明日の自民党会議て取りまとめまして, 遅くとも7月中に閣議決定することになる予定です。 私は1983年福井県で県会議員をしているとき、かの「もんじゅ」開発が進められました。今回の決定で溶融塩炉が、35年の歳月を経て、ようやく同じテーブルに乗ったという思いで感慨深いものがあります。 高速炉では廃棄物処理という超難問に直面してきた私達ですが、皆さん方のお知恵を頂きまして、今日は新局面に前向きに対処するための勉強をさせて頂きたいと思います。皆さん、多数御参加頂きまして有難うございます。 |
【司会】新型エネルギー検討委員会の新型エネ原田会長にお願いいたします。
左から2人目:原田 義昭 | 【原田】山本会長のお話の通りでして、エネルギー計画は重要な問題でしっかりと進めたいものです。 山本会長は自民党の資源エネルギー戦略調査会の会長で私は副会長として溶融塩炉の将来について検討を進めています。有馬朗人先生から溶融塩炉の有望性について教えて頂いておりました。その後、諸般の情勢により溶融塩炉は議論の対象にもならないまま、今日まで来ました。昨年6月に第一回の会合を開催、自民党の正式な機関に組み入れることになりました。 原発は使用済核燃料の処理という難問を抱え、わが国も対処する方法も未解決のままです。非核というトレンドの現在、溶融塩炉に向けて検討が始まったのはタイミングとしては最適でした。本日は関係省庁の担当の方々にも御出席頂いております。時代は変わりつつあります。 |
【司会】では、資源エネルギー戦略調査会の副会長の片山さつき氏にお願いいたします。
【片山】御紹介に与かりました片山さつきです。私は党本部では政務調査会会長代理として、エネルギー
基本計画、特に再生エネルギーを主力とすることに決定しました。オールジャパンとして電力会社とも連携、
今後も安定供給を継続、バックアップ電源として将来にコスト削減も視野に入れて溶融塩炉に期待しています。
特に中国では太陽光発電も進み全土に送電線、さらに小型の原発の開発も我が国を凌いで進めております。
こういう状況を前提として、日本が世界で最先端の技術にあるという分野を強く意識して進めて頂きたいと
期待しております。
【司会・大見】国会審議の為、中座致します。本来は私たちが一番勉強する必要があるのですが、申し訳
ありません。このあとの進行を含めまして、主催者であります金子和夫氏に、有馬先生の御紹介を兼ねて
お願いいたします。
金子 和夫 | 【金子】お忙しいところ溶融塩炉の会合に御参集頂きまして有難うございます。 この会は多数の皆様のお力でここまで来ました。原田先生のトリウム・フォーラムを知り、そこへ有馬先生がメッセージを寄せられました。そのメッセージで軽水炉よりも安全なトリウム溶融塩炉があることを知りました。「これからの原子力の主力になるよ!原子力を専攻する学生も増える!」と。これを読み、早速、古川さんと一緒に有馬先生のところに行きました。 福島第一の事故以来 脱原発の一色に染まってしまいましたが、「トリウム溶融塩炉ならそんなことはない。」と思い、『脱原発で本当に良いのですか?』という本を執筆し、福島第一の一年後に出版しました。それ以来私は、有馬先生とトリウム溶融塩炉を世の中に出したいという思いでしたが、高まり、その後五年が経過しましたが、脱原発へのトレンドはますます強くなるばかりでした。 使用済み核燃料はどうするかというと地下に埋めるだけだと、そんなレベルの話だけです。 |
実はトリウム溶融塩炉で問題化している使用済み核燃料も処理できるのだと言うことを説明したら、
「そうだったのか」というところで第一回の勉強会を6月21日に開き、それから自民党の政調会
中心で進み、今年3月6日には有馬先生に、4月25日には山脇先生にお話を頂きました。
こういう過程で今回は六回目です。丁度一年でここまできました。
私が気にしているのは脱原発での影響が大きいのは大学なのです。核物理学学科も将来は無くなって
しまう、そんなことになると20~30年もしたら日本の将来はどうなるでしょうか。日本の現状とは比較に
ならない長いタイムスパンの上に国家戦略としてのエネルギー政策を、中国もアメリカも立案し
実行に移しています。「明るい原子力」もあるのだというご認識をお持ちいただけるようにと、
本日の勉強会の収穫として頂けますように。それでは有馬先生、どうぞ。
有馬 朗人 | 【有馬】やっとトリウム溶融塩炉がスタート時点にたどり着きました。 喜ばしいことです。私も核物理学を専攻する学生がいなくなると心配しています。世界での大学ランキングで日本の大學はダウンしています。 論文数もアメリカについでの二位でしたが今は二位は中国で日本は第五位です。大學の学生の元気はなくなっています。それは大学の元気⇒日本の元気がなくなることです。私にも責任の一端があるのです。大学の法人化を実現しました。そのときに、付け加えた条件があります。「絶対にやってはいけないこと。運営費・交付金の減額は絶対にしてはいけない」これを条件に大学法人化をしたのですが、なんと、この条件が守られなかった。毎年1%ずつ運営費・交付金が減らされてきました。法人化は10年前でしたから、もう10%も減額されています。大学院に行き博士号取得しても大学に助教授で残るポストもない。大学への運営費を減らしてはいけない。高等教育には費用を賭けて頂きたい。この点を政治の皆さんにお願いしたい。 |
GDP比で教育費は、OECDは平均で1%前後。日本はその半分の0.5%でずーっと来ています。
日本も1%を目指して頂きたい。0.5%では世界に負けます。日本の科学技術を高度のレベルに
進めなければ日本の将来は危ない。中國では現在の知識と技術を生かして将来に備えようとしています。
原発に加えて、再生エネルギー私がやれと言ってもできていないことを中国はやつている。加速器を並べて
そこから出てくる中性子で使用済み核燃料を燃やしてしまう。使用済み核燃料を処理するだけではなく、
同時にそれで発電をする。これを科学院を中心に進めています。政府としては現在の科学技術を活用し、
未来に対しては溶融塩炉にしても加速器にしても使用済み核燃料の処理にしても、新しい計画を科学者が
叡智を結集して進めています。中國のやり方も、学んで頂きたい。
2000年までは日本のレベルは上昇してきたが,その後は低落に向っています。若者人口が減少している
のは危機だと言う論者がいます。若者人口が半減するのなら、平成元年若者人口200万人は今年は119万
人。若者の実力を2.5倍にしたら良いのです。教育に費用=資源をつぎ込み、大学生の実力を2倍にしましょう!
中國の科学院のような組織も作り、文科省には大学を中心として新しい科学技術を進める努力をして頂きたい。
トリウム溶融塩炉だけではなく新技術の開発を進めましょう!
日本の産業界は不正が発覚して評判が落ちている。なんとかして日本を救ってください。経済産業省エネルギ
ー庁の努力もさることながら,文科省の基礎科学へのレベルアップを推進して頂くことをお願いして私のご御挨
拶と致します。最後に私の遺言として申し上げたい。「日本の科学技術が、いつの時代にも前進し、レベル
アップの方向をとるように!」
【司会】各行政庁の方もいらっしゃっています。一言お願いします。
【松野】資源エネルギー庁原子力政策課長をしています,松野です。エネルギー基本計画を進めています。
現在8基の原発が稼働していますが、道半ばです。2050年、先を見据えますと温暖化という議論が当然出て
きます。脱炭素化 低炭素化を進めなければならない。安全性も勿論ですが原子力の役割、時代の要請に
対応できる原子力を切り開くことの重要性を改めて認識しております。国際的な動きを見極めながら我々も
考えて参りたいと思います。
【松浦 重和】文部科学省の原子力課長をしております。
2050年に向けての動きですが基本計画にも原子力にもイノベーションが強調されています。国際的にも
安全性からもイノベーションが必要とされています。有馬先生からハッパを賭けて頂きました。原発事故
以来厳しい立場でありますが、国際的にも安全性が注目されていますことを認識して計画の推進を
してまいる所存です。
【林】内閣府現職担当参事官の林です。内閣府としては原子力委員会が引っ張っていくということから
役割が変わりました。中立的、俯瞰的な視点から原子力がどのように社会に有意義に評価されるか
という方向で諸計画を検討している次第です。
木下 幹康 | 【木下】司会を交代しました。私はトリウム溶融塩国際フォーラムで理事長をしています。 中國とアメリカについての現状ですが、中国は、応用物理研究所があり基礎研究をはじめとして先端技術の拠点です。加速器については日本から有馬先生のご指導で技術的にハイレベルとなっています。 そういうことから日本には一日の長があるという感覚をお持ちです。そのため中国での溶融塩炉の現状を紹介して参考にしてもらいたいという趣旨で中国科学院上海応用物理研究所の徐洪傑先生、通訳を兼ね夏チャオ彬先生が来日されました。 徐先生にお願いします。 徐テキスト⇒ |
徐 洪傑 |
【徐】中国では1970年にトリウム溶融塩炉に着手したが中断。2011年再開・国家プロジェクト。 ◆現在の開発計画は700人研究体制で2018年Simulator(模擬実験炉)、2020年実験炉完成、 2030年予備運転を経て営業運転を予定。TMSR program ◆トリウム溶融塩炉が必要とされる要因:中國でのエネルギーは石炭が主要な エネルギー源となっている。トリウム溶融塩炉は熱と電力減源となり、化石燃料 による二酸化炭素の減少が期待できる。 ◆中国では風力発電には期待していない。 ◆トリウム溶融塩炉の進化 黒鉛の精製による高純度黒鉛を利用できる。 千里之行 始于足下 A thousand journey is started by taking the first step ! |
【司会】では、ThorCon社CMOのRobert Hargravesさんに米国の事情をお願いします.。
R.Hargravesテキスト⇒
【R..H】各国のGDPと電力消費量には強いプラスの相関関係がある。ThorCon社は石炭の火力発電に変えて
1400ギガワットの発電所を建設し,CO2 削減に寄与しています。ThorCon社は原発を低価格で進めています。
ThorCon社の環境への取り組みは下記の通りです。
・石炭の発掘、燃焼をしないで済むようにします。 ・石炭からの二酸化炭素の放出を止めます。
・大気中の粉塵からの害を防止します。 ・樹木を燃焼して森林の破壊を止めます。
・水力発電のダムによる洪水を防止。 ・トリウムとウラニウムによる無尽蔵のエネルギーを準備
・石炭よりも低コストのものを準備。 ・ThorCon社の原子炉は三重の放射線防止を装備。
中国科学院上海応用物理研究所:安全性を基盤に経済性を完備。
・燃料は液体、操作が簡単かつ低価格。 ・新しい技術は不要
・既存の造船技術を活用。 ・規模の巨大さを追求しない
・トリウムがウラニウムの消費を抑える。
【司会】ではElysium Industriesの社長, Dr. Youssef A. Balloutにお願いします。
Y.Balloutテキスト⇒
【Y.B】アメリカが乗り出したのは,中国が2005年に溶融塩炉に乗り出したからです。
我が社は2014年にスタートしました。私の母は,『政府が何を考えているかは言葉は不要で、どこに政府の
おカネが流れているかを見ればわかる』と教えてくれました。政府は新しいプロジェクトについて民間にも
政府のおカネが流れる仕組みができたのです。Elysiumにも3億円以上の資金がきました。Elysiumは、
その資金で使用済み核燃料を溶融塩炉で変換するという研究を始めました。
さて、リアクターは使用済み核燃料を処理するクリーンアップシステムとしていくつかのオプションがあります。
基本的には外に出さないで処理します。シカゴ、アイダホで80年代から開発が続けられてきたのですが、
考え方は違います。使用済み核燃料を溶融塩炉で一気に燃やしてしまうシステムです。Elysiumのものは、
日本の技術が根本にあります。
【司会】では, 山脇先生 お願いします。山脇テキスト⇒
山脇 道夫 |
【山脇】日本の将来の戦略としてのエネルギー計画を提案したい。前提としますのは 基本的認識としては原子力が今後も長期にわたって重要なものとなると言うことです。 もちろん再生可能エネルギーも必用ですが、その開発には時間が必要であるし、 バックアップ電源も準備しなければならないので、そのための原子力ということです。 もちろん原子力には欠点があります。事故のない安全性、それと放射性廃棄物の 問題です。この廃棄物もせいぜい数百年程度で解決させる必要があるでしょう。 溶融塩炉は、上記の原子力の欠点を補う改良型としてのポテンシャルが高いのです。 原子力イノベーションの旗手として期待されるものです。原子力学会の原子力委員会 で調査しました。また50数人が数年かけて研究もしてきました。 |
放射線はどの程度出るのか、セシウム、沃素、など。事故があっても、従来の原子炉の百分の一程度と推測できます。
三谷先生の研究ですが、プルトニウムは二段階の溶融塩炉で処理すれば96%は消せるし、残ったものも400年程度で
解消できるとのことです。フッ化物を塩化物に変えて連続再処理すればさらに効率よく安全化できます。提案したもの
は連続再処理の統合型溶融塩炉です。炉心には燃料が閉じ込められていますが、炉の内部には燃料を含まない
溶融塩冷却材です。ここから取り出し物を燃料処理系へつなぐ、再処理と一体化した溶融塩高速炉です。安全
原子炉に乾式処理をつなぎ、液体を連続処理可能となり、分離した廃棄物も400年管理で自然状態に戻せます。
このために実験炉が必要です。使用済み燃料をホットセルで再処理します。
IMSFRのメリット
・高度の安全性 過酷事故フリーを目指す
・バックエンド処理の柔軟性
・多目的利用 発電炉、核変換路、再エネバックアップ電源、熱供給路、水素製造炉、淡水化炉
・経済性向上への期待 燃料製造、再処理、廃棄物処分コストの低減
・国家プロジェクトとして統合型溶融塩炉(MSFR)を提案 安全性と経済性実験炉の建設区の研究者,
学生に夢を持って取り組んでもらいたい。多くの若者に学生に夢が必用です。溶融塩炉が契機となり各大学から
原子力に関係してない人にも参加して頂いています。きょうは学生たちも参加しています。
【学生代表】「私たちは大学も専攻もことなる一同ですが、共通点は原子力技術を残していきたい。原子力には欠点
があるが次世代原子力には可能性があります。そのために私たちも活動したいが、活動の場が限られています。
活躍の場はナトリウム炉か溶融塩炉か高速増殖炉かわかりませんが活動する場を私達学生に与えて下さい」
【司会】日本の将来に溶融塩炉計画も進むと同時に若い世代の活躍にも期待したいと思います。
以 上 文責:M.T
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