福島第一原発元所長吉田昌郎さんを偲ぶ会      ご 案 内
 日時:7月9日(土)14:00 (開場13:30)~16:30
 Tel:03-5676-2211
 場所:タワーホール船堀 福寿の間(2階)
       江戸川区船堀4-1-1 都営新宿線船堀駅前徒歩1分
新宿駅より「都営新宿線」にて本八幡方面へ約30分。船堀駅下車、徒歩約1分。
東京駅よりJR総武快速線馬喰町駅乗換。馬喰横山駅から都営新宿線船堀駅下車
 追悼メッセージ  武蔵学園長・公立大学法人静岡文化芸術大学理事長 有馬 朗人

 追悼メッセージ  日本システム安全研究所・代表 失敗学会理事 吉岡 律夫

第1回追悼メッセージ(玄侑・吉岡ほか)
* 第2回追悼会
第3回追悼会ビラ

記念講演1「法華経の行者としての吉田昌郎元所長」
                パワーポイント原稿
     社団法人「吉田昌郎元所長と福島フィ フティーを顕彰する会」代表
    インターネットビジネス研究所理事長  杉山 勝行    

記念講演「吉田昌郎元所長の死から我々は何を学ぶか?」
                 原 稿
        NPO 未来構想戦略フォーラム代表、創生ワールド(株)取締役顧問
        エネルギー政策フォーラム事務局長
  大脇 準一郎

主催:吉田昌郎を偲ぶ会実行委員会
    代表 杉山勝行  070-5554-1140  sugiyama777@mbe.nifty.com

*原発賛成・反対、イデオロギー、党派を超えて、吉田元所長の3回忌の命日、
フィフティーズの勇気ある行動の意味を考え、希望あふれる日本の未来に
心を寄せようではありませんか! 皆様のご参加をお待ちしています。

         
 当日の写真


質疑応答Memo  パネルディスカッション吉田昌郎元所長の遺言」

 パネリスト:エネルギー政策フォーラム 大脇準一郎 事務局長

  原発推進国民会議 古山隆夫代表 作家 杉山勝行

モデレーター:国家ビジョン研究会 濱川一郎

【濱川】 本日は吉田昌郎所長の命日です。この日に福島第一原発の事故に際して現場で指揮を執った吉田所長とそのメンバーの懸命の対処を振り返って将来への教訓を得たいと思います。私、濱川はエネルギー政策としては脱原発を主張する者です。日本は「和して同ぜず」という諺がありますように、意見の違いは違いとして残しても、日本の将来を憂えるという同じ目的を持った同胞として同じテーブルについて論議したいと思います。古山さんは原発推進国民会議の代表でして、私の脱原発とは違い、原発推進を主張しています。吉田所長の三回忌を偲ぶこの日のタイトルは「吉田昌郎元所長の遺言」です、これは杉山さんがつけてくれました。推進派の古山さん、脱原発の私、それにエネルギー政策として総合的に判断して頂ける大脇さんに参加して頂いております。

では、吉田所長の遺書から受けた私の思いをお話しいたします。アメリカの原発では「想定外」ということをなくするという方向にあります。また「安全神話」にどっぷりと浸っていたことへの反省があります。しかし現実には次の条件が横たわっています。まず再生可能エネルギーの利用として太陽光発電が挙げられています。が、実現するには送電システムを新たに構築する必要があります。次の代替エネルギーが実用化されるまでは原発も維持しなければならないのが現状でしょうか。食料だけでなく自給率の問題はエネルギーにも重要です。元東大総長有馬先生も日本のエネルギーは6%の自給率だと警鐘を鳴らしています。

目先の辻褄合わせではなくメルトダウンの現場で命をかけて対処した吉田所長以下勇敢な50人の人々の思いを改めて再認識して今後をどうするかについて議論を進めたいと思います。

 【古山】「吉田所長の遺書」には、我々へ残してくれた教訓がいくつも含まれていますね、「全電源喪失というショッキングな状態が地震と津波という二重の災害の、その上にのしかかってきた事実を直視せよ」、と吉田所長は言い残してくれたと思います。米国では原発の近くに50基の発電所を準備して「全電源喪失」という事態が発生しないように対処しています。吉田所長の遺言の最重要項目といいましょうか、彼の思いの根底には「安全神話を叩き壊せ」があったと私は考えています。「想定外」とされる事態をシラミツブシに潰してしまい、安全性を確保せよ、これが「安全神話を叩き壊せ!」の具体的なものです。この前提を踏まえて第四世代の原発の開発競争に日本は世界をリードする態勢を整えるべきです。

日本はエネルギーの自給率がなんと6%という御寒い現状です。これでは国家の安全保障の点から見ても危機と言うべきでしょう。原発は安全保障の点から見ても必要です。原発は廃止ではなく技術的な点を克服して、代替エネルギーが実用化されるまでは、継続して稼働させなければなりません。現実感を持って対処していきたいものです。

【大脇】エネルギーと原子力の未来について、入口を間違えたのではないかと思っています。アイゼンハワー大統領の時代に東西冷戦を前提にして、原子爆弾という悪いイメージに染まった連合国側の、特にアメリカは世界の多数派に米国の平和への熱意を示してソ連に打ち勝つ思想作戦の一つとして原子力の平和利用を打ち出しました。その具体的なものとして原子力発電を実現させようとして技術的に安易な道、つまり軽水炉による原子力発電が誕生しました。

歴史は想定外ともいえる数々の事件、カタストロフィーの連続です。南北格差の拡大、環境悪化などはその良き例です。ここに核兵器による戦争が加われば人類の破滅です。科学技術と強大化した資本は非人間化を進めています。愛の世界は失われていくでしょう。

さて、国会での調査の委員長、黒川清さんは本来は医者です。福島第一の事故についての調査結果を英語、フランス語で世界にも同時発信しました。我々はこの原発の深刻な事故から何を学ぶのか? 聖教新聞にも書いてありましたが、日本人は報道されたものに弱い、昔は大本営発表にその悪例があります。つまり都合の悪いことは知らせない、そういう統治体制が日本の姿です、この悪例は原発事故に際しても見事に再現されました。知らせるのは良いことだけで、真相は知らせない。福島第一は明らかにメルトダウンであるにも関わらず、その真相は幾重にもつくられたベールに覆い隠されました。これは原子力発電所というハードウエアの是非ではなく、その「原子力発電所」を運営し操作するソフトウエアに問題があったと見て良いでしょう。組織は自己目的化し短絡的発想に堕し、その組織の構成もエリートに固定化して同質化されたものだけを評価し、異端を拒絶することになっていたようです。意思決定パターンがグループシンキングでなされて日本的な組織の論理がむき出しになりました。「日本的な組織の論理」とは①誰も責任をとらないこと ②決断・決定を先送りすること の二つに要約されると思います。平常時ならいざ知らず、危機に際して決断・決定を先送りすれば、それは自殺行為と言っても言い過ぎではないでしょう。これに加えて、危機管理の原点は、現場の事実を正直に伝えることにあります。原発には推進派と反対派がありますが、その主張は正確な事実の把握から始めることでしょう。トップよりも現場の判断を優先とするべきです。吉田所長の行動も、事故が現在進行中での決断であった点を加味して判断したいものです。事故が発生したことを契機として、はじめて分かったことも多々ありました。こういうことから事故そのものと事故に際しての処理を検討することで、危機管理への教訓を得たいものです。吉田所長の判断・決断から有益な教訓を得ることができれば、吉田所長を偲ぶに相応しいことではないでしょうか。

【濱川】ここで会場の皆さんの御意見を承りたいと思います。

 【一色】日本には54基の原発があります。その日本は地震列島です。この二つの事実は、安全とは矛盾した状態があると、我々に一つの決断を迫っています。
   「吉田所長の遺書」というタイトル、思たい決断が必要であると我々に残してくれていると思います。

【濱川】もう一方、どうぞ

【渡辺】渡辺と申します。現在の報道から原子力という表現が定着していますが、これは見直しが必要と思います。 日本では原子力発電、原子爆弾と、「原子何々・・」となっています。米国はマンハッタン計画で大成功をおさめ、その報告を議会でするに当たり、原稿ではnuclear weapon となっていたが、事務局あたりでしょうか、実際の報告はatomic bombとなってしましました。科学者一同はnuclear weaponとするべきだと主張しています。村上春樹も原子力ではなく核だと主張し、菅直人もこれを了解している。数年たつと科学者から原子力潜水艦とか原子力空母といいますが、アトムでは教科書も書けないではないか、と言われています。

 【渡邊】大脇先生の発言にはっとさせられたことがありました。原発とエネルギーについて入口を間違えたのではないかとおっしゃいました。原発が平和利用であるというには、考えておくべき前提があります。原発には副産物としてプルトニュウムが発生します。そのプルトニュウムは原子爆弾の材料です。原発による電力が日本経済に必要だというのは、口実で、実際は原爆製造が隠された目的ではないかと思うのですが・・

【古山】ニホンを取り巻く現在の情勢をみたら、我々は国土防衛に必要な態勢をとらなければならないと思います。日本海の竹島、日本海対岸の北朝鮮、中国が  尖閣諸島周辺に対してどのように行動しているか、・・考えたら、防衛に必要なものは、何であろうとも、必要なのです・・。 

 【大脇】御発言されたかたは どういう御立場の方ですか

【渡邊幸生】神社の神職です。 
         
  追記:会合終了後、渡邊さんより、和紙に筆書きの真心籠る御手紙をいただきました。ご本人のご了解を得て、お手紙をアップさせていただきます。
  小生、講演の翌日の7月10日、長年住みなれた東京から伊豆へ引っ越しでしたが、吉田さん追悼記念講演にまごころを捧げる�ための引っ越しの準備がほとんどできず、
 会合終了後徹夜で荷物をまとめざるを得ませんでした。どんなに苦労しても渡邊さんのようななお手紙を頂くことは、ボタンティア冥利につきます。メッセージを寄せてくださった玄侑、有馬朗人、吉岡律夫等にいまだ十分なお礼の言葉も述べていませんが、心からのご支援を頂いたことを感謝いたしております。
  渡部幸生さんからのお手紙はこちら⇒


 参加者の感想ほか

この集いの最初の案内には雑誌「世界」の記事に反論するとあったように思い、多少、違和感を持って参加した。反論する吉岡律夫氏(福島第一の3号機設計者)は、感情を差し挟まなく、客観的に事情の解説をしていた。これには敬服します。

原発という巨大科学には価値中立という、前世紀的原則はない。したがって福島第一事故についてもあらゆる角度から事実の隠蔽工作が続いている。これをジャーナリストが突くということがあれば、まだ救われるが、正力=読売 産経=右派という二本のラインは冷厳なる事実に蓋をしている。

雑誌「世界」の原発事故検証の記事は続行中であり、断定的な表現は少ない。吉川氏は技術者として発言されていた。利害を離れての発言であった。

福島第一の問題を考える場合に技術者倫理という視点が欠けていたと思う。事故解明のための報告書も確か三つの委員会からそれぞれ出されていた。精読はできなかったが一応、目を通した。

【想定外】【不可避の事故】【ヒューマンエラー】の三点が奇妙に絡み合っていた。畑中洋太郎氏が責任者となっていたものに期待したが、それも同様であった。 アメリカ、スペースシャトル チャレンジャー号事故は以下の状況で発生し大きな教訓を残している。1986128日、アメリカ合衆国のスペース・シャトルチャレンジャー号が射ち上げから73秒後に分解し、7名の乗組員が死亡した。同オービタは北米東部標準時午前1139分(16:39UTC1291:39JST)にアメリカ合衆国フロリダ州中部沖の大西洋上で空中分解した。

 この事故の原因については、単なる計画の不備ではなく、巨大科学による圭角遂行に必要な大組織を構成するメンバーがどのように行動するか、についての考察を抜きにしては解明できないということが明確になった。

計画の下請け企業としてのモートンサイオコール社に籍をおく技術者は三段ロケットの接合部の燃料を密閉するОリングが低温では弾力性を失い、密閉機能が機能しないと判断した。もともと122日発射の予定が延期され28日発射とされた。Оリングの機能が失われると言う理由でさらに延期を、計画本部へ要望していいのか、がモートンサイオコール社で検討された。結果として、要望しないとの結論となった。結果は、発射後73秒で爆発した。

この事故は「ヒューマンエラー」と言うべきではない。技術者としては組織の一員として、組織の運営が滞ることには、控えるべきなのか、とくに、この場合には数回の延期という前提があり、その上に延期しなければならなくなる情報を組織に報告すべきなのか、という問題を抱えている。

委員会のメンバーの中で最も著名な人物の一人に、理論物理学者のリチャード・ファインマンはテレビ放送された聴聞会の席上、氷のように冷たい温度下でOリングが如何に弾力性を失い密閉性を損なわれるかということを、コップの氷水に試料を浸すことで見事に実証してみせた。

彼はNASAの「安全文化」の欠点に対して極めて批判的だった。ファインマンは、「NASAの首脳部から提
出された安全性評価ははなはだしく非現実的であり、現場の技術者による評価とは時に
1000倍もかけ離れている」と論じた。ファインマンは次の文を残している。

「技術が成功するためには、体面よりも現実が優先されなければならない、何故なら自然は騙しおおせないからだ」  

チャレンジャー号事故は重要な教訓を残した。福島第一事故についてはチャレンジャー号事故と合わせ見て再検討する必要があるのではあるまいか。 

渡邊一男氏の意見:

  1)「原核反転」問題の認識と対応のあり方―アンケート調査

  2) A Survey on the Behavior of Isolation Condenser Unit 1 Reactor at Fukushima